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異世界で治療師  作者: にくきゅう
プロローグ
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異変は突然に

「流石に疲れてきたな」


 異世界の森(俺はそう思っている)に飛ばされてから、2時間程歩き続けていた。

目的地もなくただひたすら前に歩き続けているだけなので、そろそろ精神的な疲労も感じ始めてくるところである。しかし、オレは構わず進み続ける。無暗に動きまわること。これは遭難者であったら間違いなく、禁止事項にあてはまるであろう。しかし、自分は遭難したわけではないので問題ない。遭難とはあらかじめどこかに行こうとして二次的に発生するものだ。しかし、オレは道に迷ったわけではないし、どこか目的地があったわけでもない。強いて言えば二次的ではなく、一時的に発生したというところか。そもそも定義が違うというものだ。



 しかしそんな屁理屈をこねくり回したところで、変わり映えのない景色である木、木、木。流石に飽きが来る。体力的にもそう普段から運動をしていたわけではないので、足も重たくなってきた。まさか運動していなかったつけがこんな形で現れるとは……。

俺はもう少し普段から身体を動かしておけばよかったなと、少々後悔していた。非現実的なシチュエーションに憧れていたとはいえ、これはまさに完全な想定外であった。予測すら不可能。もちろん当然のことだが。


 そして現在、夜の森の中。食べ物はなし。身につけているものは、バイト帰りに来ていたジャージと腕時計。ポケットに入っていた携帯電話。携帯は確認してみたが動いていなかった。電源も入らない。おそらくこちらの世界では使えないということなのだろう。金は多少持っているがそんなものは全く意味が無い。まさか日本円が使えるとは思っていなかった。持っているものと言えば、それくらいだろうか。


 こんな予想外の展開に陥って持ち物もなし。さしもの普通の人なら、発狂してしまってもおかしくないような場面であるだろう。だが、オレはそんなことはない。なぜならば、異世界に飛ばされた人には必ずチートな運命が待っているからだ。動いていれば必ず、何かに遭遇する。そう、必ず。


 お前はアホか。

 友人に言ったら、絶対即座に否定されること間違いなし。中には白い目で見てくる奴もいるかもしれない。でも俺はそんな人を唖然とさせるような暴君的理論を振りかざし、前に進み続ける。何を隠そう。昔から、その手の小説やアニメは大好きだったのだ。



 しばらく歩き続けると、休むのにちょうどよさそうな木を発見した。うまい具合に、腰の高さで幹が折れ曲がり、人一人分ほど座れるような形をしていた。


 ここらで、少し休もうかな。

 俺は偶然見つけた、座るのにちょうどよさそうな木にどかっと腰を下ろす。


 ふ~、しかし、まさか異世界に飛ばされるとは…。ありえない展開すぎて、逆に頭がすっきりしてしまうくらいだね。いうなれば、お皿を割ったり、大けがをしてしまったその瞬間ってなんか、『あ~、やっちゃった…』みたいな冷静な瞬間がおとずれるみたいに。みんな、そういう経験あるよね。きっと……。


 もうそろそろ行こうかな。俺はまた歩き始めようと立ち上がった。


 ガサゴソ

 不意に後ろから何かが動いた物音がする。

 ふざけた思考は一瞬で吹っ飛び、俺は本能的に後ろを向き身構えた。


 何かいる。


 オレの呼吸の音だけが、シーンとした空間に響き渡る。

 一瞬が何秒にも何十秒にも感じる。オレは指一本動かさず、目の前に集中する。もちろん何が出てきても即座に逃げられるように。そう言えば言い忘れていたが、一時間ほど前から、急に視界がクリアになったような気がした。暗闇の中だと言うのに、しっかりと物が見える。色もわかる。明らかに今までの常識では考えられないようなおかしなことである。まあ、困ることはないので(むしろ助かる)これが異世界チートか、などと勝手に納得しているが。


 そして、それは草木をかき分けるとともに現れた。


 え?! まじで……?


 俺は若干そいつを見上げる格好となった。体長は目測で二メートルほど。実際はもっとでかいのかもしれない。姿形は人間のそれと似ているが、肌の色は緑色、そして顔の中央には大きな目玉と思われるものが一つ。手には棍棒を持ち、良く見ると、足の指が四本だ。醜く歪んだ口と思われるものからは、だら~っと涎が地面に垂れ落ちる。


怪物は俺の前10メートル程の所に立っていた。


うん、これは本格的にやばそうだ。

目の前の怪物は今にもこちらに襲いかかってきそうな気配である。


 ザッザッ!

 地面を激しく蹴った。頭で考えるよりも先に身体が勝手に反応した。オレの中の生物的な本能がいち早く生命の危険を感じ取ったのだろうか。身体はすぐさま走り出し、一気にトップスピードに乗ると、一目散で逃走した。


 密集した木々をなんとか交わし、草木をかき分け、俺は今まで走ったことのないような速度で、ただひたすらに逃げる。まるで周囲の景色がかすんで見えるほどだ。後ろを確認している暇などない。いや、むしろ恐くて確認など出来ない。


「グガー!!」


 魔物? の叫び声らしきものが後ろから聞こえる。だがそんなの当然無視。


 勘弁してくれよ!

 俺は心の中で叫びつつ、ひたすら走り続けたのだった。


 ディズニーキャラクタの中で一番かわいいと思うのは、誰が何と言おうとリトルグリーンメンだと思うんですよ。ほんとに思っているんですよ。ギャグじゃなくて。

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