猫なのか?
どうもこんにちは。はじめまして、にくきゅうと申します。
訳あって暇な時間ができてしまったため、禁断の小説に手を出してしまいました。悲しいことに既にもう自らの文才のなさにほとほと嫌気がさしてしまいました。正直サイトに公開しようと思ったことを後悔してしまうほどに。しかし、せっかく書いたのだからと勢いでこうして前書きを書かせていただいています。このような初心者作品を読まれる方はいないとは思うのですが、もしそういう方がいらっしゃるのなら、あまり期待をせずに読み始めていただければなと思います。
「くそっ」
俺は言葉を吐き捨てると、腕に抱えた生き物をつぶさないように意識しながら必死で逃げる。木々の根に足を取られないよう最大限に気をつけながら、できるだけ不規則に動く。ここは森の中であり、おそらくここは相手のホームだ。地の利は確実に向こうにあるが、素早さだけなら見た感じ俺の方が勝ってる。ちょこまかと動き相手をかく乱する。
「グガー!!」
およそ人間の声ではないように轟く重低音。魔物のひとつ、オーガの声である。背丈は2メートル弱。大股で木々を薙ぎ払うかのように追って来る。
オレは無我夢中で、目的地に向かって走り続けた。一歩の大きさの違いから、単純な速さ比べなら簡単に追いつかれてしまう。現に少ない直線があれば、すぐに追いつかれそうになっていた。しかし、こちらとしても簡単につかまるわけにはいかない。必死に向きを変え、障害物を使い、頭をフルに使ってなんとかふりきろうとした。ついては離れ、ついては離れを繰り返す。
しかし、時間は刻々と過ぎる。時間の経過とともにやはり体力の限界が見え始めてきた。魔物との体力の差は歴然としていた。次第に距離を詰められる。オーガに変化の兆しは見られない。初めから一貫してその醜い顔を振りかざし、こちらを執拗に追ってくる。
くそっ!!
捕まるのも時間の問題に思える。いくら、巧みに逃げているといっても、純粋な早さは向こうのほうが上であり、ましてや大きなハンデ付きであった。
「何とか逃げなくちゃ」
俺は自らの腕の中に抱えた生き物を見つめる。
猫…なんだろうな……。
腕の中には白い小さな猫がいた。おそらくまだ子供だろう。その顔つきや、身体つきは標準な猫よりもふた回りほど小さい。真っ白な毛はふさふさとしていて驚くほど手触りがよい。ぴんと張った耳。まだ短めな脚。見た目は完全な猫であった。
しかし、ただ一つだけ普通の猫と違う部分が存在していた。
そう、シッポが二股に分かれているのだ。初めは見間違いかとも思ったが、アニメのごとくゴシゴシと目をこすり再び確認してみたが、やはりしっかりとシッポの先端が二つに分かれていた。シッポの先端から10センチくらいの所で二本になっている。オレとしては当然このような猫を今まで見たこともなかったし、存在するなんて話を聞いたこともない。
オレは至極不思議な気分で、子猫を見つめる。
この生き物はなんだかとても神聖なもののような気がする。軽々しく触れてはいけない存在。何故かはわからないが、純粋にそう思ってしまう。一目見ただけで、その身からあふれ出るオーラを一瞬で感じてしまった。生き物として隔絶された高位の存在であるかのように。
そしてなによりかわいい。真っ白で、ちっちゃくて、肉球がぷにぷにしてて。誰にも言ったことはないがオレはかなりの肉球フェチである。プニプニしてて、モフモフしてて、あのさわり心地といい、見た目といい最高だろう。いや~、一日中触っていてもあきないね。ほんとに一日中触っていたい。肉球フェチな自分としては、まず猫を見たら初めに肉球を確認するね。これは鉄則。テレビに出てくるような百獣の王ライオンやトラなどの猛獣であってもその肉球に強く惹かれてしまう。同じ猫科であるので、当然であろう。考えただけでも肉球を触りたくてしょうがなくなる。しかし、そんな考えも一瞬で吹き飛ぶ。けっしてオーガに追われているからではない。
子猫(仮)の右前足から横腹中央付近にかけて痛々しく、大きな傷が走っていた。さいわい内臓までは達していないようだが、その出血量がいけない。見つけた時は、大量の血を既に流していた。エノーミさんに一度見せてもらった魔法を使って、もどき治療を施してみたがはたして効果があったのかどうかはわからない。むしろ逆効果だった可能性も十分に考えられる。
くそっ!!
いったい今日何度目の捨て台詞であろうか。俺はやり切れない気持ちで、尚も子猫を離さず逃げ続ける。子猫に意識はない。ぐったりとした様子で、呼吸も弱い。おそらくかなり危険な状態だろう。助けたい。いや、助けなくてはいけない気がする。俺の中の本能が絶対死なせてはいけないと、うるさいくらいに警鐘を鳴らしていた。
言われなくてもそんなことわかってんだよ!
俺は自分自身に対して強く叫ぶ。
そして出来る限りの力を振り絞り、オーガから逃げ続けた。