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発覚(3)

 マチルダが出て行った部屋で静かにマチルダの祖父ジェイソンと父アーサーが座る。

「どう思うかね、あれは」

「言っていることは一応、理屈は通っております。にわかには信じられませんが」

「アーサー、何故このルナマーレにおいて、民族自決がそこまで国民の中でムーブメントにならなかったと思う?」

「国民は自分たちをアルビローズ人だと思っているからです。私も、父上も、妻も、母上も、勿論あの子もアルビローズ人なのですから。アルビローズ人がアルビローズから独立するなど馬鹿げた話です」

「その通りだ。では、もし、この地にまだ旭日人がいることが世界に知れた時、世界はどう反応すると思う?」

「ルナマーレを旭日人に明け渡せ。そう言うでしょう。帝国は。先の大戦で植民地のほとんどを失いましたから。アルビローズの力を削ぐ絶好の機会だと言わんばかりに」


 帝国とは欧州のほぼ中央に位置する大国である。先の大戦では敗戦したが、今再び国力が回復しつつある。そう、ドイツにあたる国だ。

「連邦も、同じことを主張するだろう。彼らも植民地は持っていない。旭日人が連邦の手を借りて独立などしてみろ。ルナマーレは連邦の港と化すぞ。南洋でも同様な火種を抱えている今、極東における一大拠点を失ったアルビローズは極東地域での影響力をなくしてしまう。独立するにしても、穏健的で本国に忠誠心を持ったままの独立が望ましい。あれはここまで考えている目だったぞ」

 溜め息混じりに天を仰ぎ椅子にもたれ掛かる。

 アーサーはとうに冷えてしまっている紅茶に口を付けると、徐に話しかける。


「あの子は、私達の知る、純粋で、無垢で、笑顔の光るマチルダではないのですね」

「ラプラスの悪魔か。取り憑くならば、私かお前にしてくれればいいものを。これも神の思し召しか」

「ハワードにはどう伝えましょう」

「陸軍はあれの憧れだからな。ひとまずは、軍部での政府の評判を逐一報告させろ」

「理由を聞かれたら?」

「次の選挙では軍部のことも考慮するためとでも言っておけ」

 ジェイソンはそう言うと、とうに冷えてしまっている紅茶にやっと口をつけた。




 後日、私への処分が決まった。中等部に上がるまで学園への登校も含めた一切の外出の禁止。また、四六時中私をメイドが見張ることとなり、書庫、書斎へ立入ることも固く禁じられた。どうしても入りたい場合は、お爺様かお父様の同伴が必要ということとなった。

 これまで読ませてくれなかった新聞は読ませてくれるらしい。これで当面情報収集はできそう。新聞には案の定、旭日人のきの文字すら出てこない。


 おや、陸軍がパレスターの山間部のほぼ全域で大規模演習をしているらしい記事がある。パレスターはルナマーレ東北部の土地、そう、宮城のことだ。

 演習領域全域の封鎖、記者も入れない。更にはこの大規模演習には野砲のみならず戦車まで繰り出しているそう。

 軍縮が昨今のトレンドの中この規模の秘密の演習、旭日人の討伐かしら?


 旭日人はノトセレという創作の中の登場人物だし、私と直接関りが深い訳でもないから本来無関係だ。けれど、日本人がモデルだという事実が、彼らの死に悲しみや憤りを感じさせる。

 一番は私達家族の死を避けることだけれども、できることなら、極力、旭日人の命を守りたいと思う。千秋くんと深雪さんは大丈夫かしら?

 それはそうと、トイレの時も扉の前にメイドが立つから、心休まる時がないのよね。そのうち慣れると思うけど。


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