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SF作家のアキバ事件簿216 元カノは大統領

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第216話「元カノは大統領」。さて、今回は秋葉原特別区の大統領専用車にテレクラ嬢の死体が発見されます。


捜査の結果、将来有望な大学教授の転落劇の末の惨劇と判明、捜査線上には政治の闇と野望の世界に生きる男と女、そして大統領のスキャンダルが浮上して…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 真夜中のドライブ

真夜中のドライブだ。革グローブをしてハンドルを握る男。助手席の女が寄りかかってくる。

男は女の肩を抱くようにして車を路地に寄せる。ライトを消して車を降りる。助手席の女は…


死んでいる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


今宵の"潜り酒場(スピークイージー)"。闇を照らすサーチライトに向かって、半狂乱の女が叫ぶ。


「風よ吹け!汝の頬を切り裂け!怒れ!吹き荒れろ!滝のような雨よ!竜巻よ!ヒルズをズブ濡れにし、風見鶏を溺れさせよ!」


両手を挙げ叫ぶ女は…ミユリさんだ。巨大扇風機が御屋敷(メイドバー)の中に、文字通り、嵐を巻き起こしている。


スピアが耳を抑えて僕に叫ぶ。


「テリィたん、お願い!」

「答えはYESだ。今度のメイドミュージカル"リア王@秋葉原"は公演中止に追い込もう」

「頭がおかしくなるわ!」


心の底から同情だ。


「わかるよ」

「違うの。退屈なの!」

「この嵐の中でか?」


僕は呆れる。


「海外留学に行ったシュリと別れて、今の私はやるコトがナイの」

「シン彼は?」

「今、募集中」


あれ?確か昨日、誰かと…


「むしろ良いチャンスだ。スナフキンみたいに自分探しの旅に出たら?冒険して新たな人生経験を積むんだ」

「…ソレ、良いアイデア。少し背伸びしてみよっかな。ビジネスの現場を見ておくの」

「え。いや、僕が考えてたのは…」


首っ玉に飛びついて来てキス連発w


「ありがとう、テリィたん!」

「風も雷も太陽も、私の娘に非ず!」

「ミユリさん…娘か。リア王も娘でイカレたンだ」


嵐の中で僕のスマホが鳴る。


「もしもし?ラギィ、スーパーヒロイン殺しか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下アイドル通りの裏。朝焼けの現場にパトカーの回転灯が明滅し、黄色い規制線テープが張られる。


御屋敷(メイドバー)でミユリさんが"リア王"のリハをやってる。現場に呼んでくれて助かったよ」

「あら?スタジオを借りてたんじゃナイの?」

「嵐のシーンで水没させて出禁になった」


思い出してスマホにボイスメモを残す。


「後で保険のチェック…ありがと」


馴染みの警官が規制線テープを引き上げてくれてプロレスのリングインみたいに現場入りスル。既に死体はストレッチャーに載せられている。


僕のタブレットが"リモート鑑識"を始める。


「ロラル・ブリジ、27才。"blood type BLUE"。発見された時は車の助手席にいたわ」

「死因は?」

「昨夜20時から22時の間に絞殺されてる。首に痣がアルわ。男は舌骨が折れるまで絞めた」


超天才ルイナが自分のラボから僕のタブレットをハッキングして"リモート鑑識"で手伝ってくれる。


「男?犯人を見た人がいるの?」

「いないわ。でも、被害者は大柄でなきゃこんな風には殺せない…性的暴行の痕はナシ」

「じゃドライブ中に絞殺して死体ごと乗り捨て?」


ラギィは鋭い。彼女は万世橋警察署の敏腕警部だ。


「車内に争った痕跡はナシ。死後遺棄されたンじゃないかな」

「車の持ち主は?」

「彼女の車ではないようょ。今、マリレがナンバーを調べてるわ」


傍らの車は乗り捨てられたママらしい。黒のSUV。エアリが証拠品袋に入ったカバンを持っている。


「そのカバンは?」

「捨てられてた。中に現金も入ってるわ」

「スマホは?」


首を振るマリレ。


「ソレが見当たらないのょ」

「20代の女性がスマホを持ってないハズが…」

「アーミッシュかも」


アキバで逝うアーミッシュとは、一切の電波文化を拒絶して暮らす人々のコトを指す。スマホ非所持w


「ねぇねぇタイヘン!車のナンバーを調べたら…」

「どーしたの?マリレ」

「大統領の専用車だった」


アキバは、特別区として独立性の高い自治体となり独自の大統領制を敷いている。もはや独立国家だ。


「大統領の専用車…予約名は?」

「ヒカリ・ライト秋葉原特別区(D.A.)大統領」

「なるほど」


その名に、僕は頭を抱える。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


元地下アイドルのヒカリ大統領は…美人だw


「テリィたん。大統領専用車が犯罪に使われたそうじゃない」

「心配ない。南秋葉原条約機構(SATO)が必ず解決するよ」

「警察も全力を挙げます」


写真を示すラギィ。


「被害者?」

「YES。ロラル・ブリジ、27才。"blood type BLUE"です。彼女を御存知ですか?」

「スタッフに聞いてみないとワカラナイけど、私達とのつながりはないと思う」


慎重に答えるヒカリ。


「失礼ですが、大統領。昨夜8時から10時の間、どちらにおられましたか?」

「貴女が万世橋の敏腕刑事さんね?貴女もテリィたんの元カノなんだって?…私もよ」

「ヤメとけ、ヒカリ。今、ラギィは殺人の容疑者に事情聴取をしてルンだぞ」


全く意に介さないヒカリ。


「テリィたんに聞いてた通りの人ね…昨夜はね、50人程度の資金集めのパーティーに出てたわ。出席者リストをお渡しスルわ」

「助かります。車については何か?」

「そのパーティーのために何台か使い、その後1台の盗難が発覚したと報告を受けてる」


ココでグッと声を落とすヒカリ。


「オフレコだけど、今度、東日本は道州制に移行スル。昨夜のメンバーは、私が道州制知事の選挙に出馬するための検討委員達なの。でもね、そのコトは未だ公表したくない」

「大統領、最大限配慮します」

「悪いわね…テリィたん。昨夜はなぜ欠席を?」


アレ?昨日だったっけ?昨夜はミユリさんと…


「小切手は送ったから」

「ありがたいわ。じゃ残りの質問は補佐官のブライ・ジェイに何でも聞いてね」


微笑みながら執務室から僕達を追い出す。隣の部屋では、室内の全員がスマホしてる。


「も1度よく聞いて。迷うのはワカルわ。でも、あと3票集めてくれたらヘリコプターを送るから」


ヤリ手のキャリアパースンだw


「貴女が秋葉原P.D.の刑事さんね?」

「警部ょ」

「OK。ジョダ、席を外して」


金髪の秘書を追い払うジェイ。


「刑事さん。調べておきました。車を借り出したのは広報のザベス・ワトソ。このオフィスの広報を担当している女性ょ。昨夜12時頃パーティから帰ろうとしたら車がなかった。はい、コレが彼女の供述書」


ペーパーを差し出すジェイ。ラギィは御機嫌斜めw


「秘書官。失礼ですが、捜査は警察の仕事です。ソレから私は警部」

「刑事さん。残念ながらネットニュースの配信は貴女達の捜査スピードより、ずっと早い。このコトが報道される前に手を打つのが私の仕事なの。で、私は補佐官」

「秘書官。私の仕事は殺人犯の捜査です」


大人気ない会話だ。顔から火が出るw


「だ・か・ら。貴女からどう思われようと、ザベス・ワトソさんからの供述は私が貰いますし、こちらのスタッフ全員からも供述をいただきます」

「どうぞご自由に。だが、どうせ時間の無駄ょ」

「私の時間です」


やっとデスクから立ち上がるジェイ。


「じゃ私もハッキリ言っておきましょう。私には大統領が何より大事ょ。私のヒカリ大統領です。ココまで築き上げたモノを決して台無しにはさせナイ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「それはそうと、大統領府が騒動にならないようにと身構えるのは当然だ」

「でもね、テリィたん。どうせトップニュースになるの。私に黙って委ねるのが大統領にとってもベストなのょ」

「黙って?何にでも難癖をつけたがる政治家が人に何も任せたりスルもんか。牛丼屋の注文だって議論してから決める連中だぜ?」


突然、本部のモニターにSATOのゲイツ司令官が映る。スーパーヒロイン絡みの捜査は警察と合同になるが指揮権はSATOにアル。


「ラギィ警部。大統領府で何かわかったコトは?」

「公用車を盗まれたスタッフには、夜通しアリバイがありました。また、被害者を知る人はいませんでした」

「公用車が偶然使われたと言うの?」


うなずくラギィ。


「…大統領は、確かテリィたんの元カノょね?ラギィ警部、となると、この事件は爆弾と同じよ。1つ間違えば貴女も吹っ飛ぶわ」

「私のコトならご心配なく」

「結構ね。でも、貴女達に注目しているのは私だけじゃないの」


ココで割って入る。


「ヒカリは事件とは関係ないょ」

「どーして?テリィたんって先入観の塊なのね」

「先入観は誰だってあるさ…ゲイツは多分ヒカリに投票しないな」


最後のは小声。ラギィにつぶやく。


「エアリ!公用車のコトは何かわかった?」

「5時に貸し出され0時過ぎに盗難が発覚」

「路上で盗難に?」


うなずくエアリ。


「多分ね」

「つまり大統領の専用車だったのは偶然ってコトか」

「ねぇ!被害者は大統領府に電話をしてた?」


ラギィが尋ねるとマリレは首を横に振る。


「ううん。多分、彼女はスマホを持ってナイわ。クレジットカードも半年使ってナイ」

「スマホもカードも使わないなんて紀元前のヲタクみたいだ」

「やっぱりマジでアーミッシュ?」


マリレがまぜっ返すが誰も笑わない。


「何か裏がありそうね。彼女は、半年前までハドソ大学の文学教授で、将来がとても有望だったそうょ」

「その彼女に何があった?」

「退職した。理由も言わずにヤメたわ。元同僚によれば、大学との連絡を断ち、スマホやカードの契約も解除してる」


火星にでも住むつもりか?


「なぜ?」

「理由は誰も知らないわ。その後ファストフード店やランドリーサービス、清掃会社と職を転々としてるわ」

「教授だった人がトイレの清掃員に?"グッドウィルハンティング"の逆バージョンだ」


ラギィと顔を見合わす。


「家族に聞けば何かわかるかもしれないわ」

「お姉さんが間もなく神田リバー水上空港に到着の予定です」

「ヲタッキーズの2人はお姉さんを連行、じゃなかった、お連れして話を聞いて。私とテリィたんは、彼女が住んでたアパートを探してみるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田花籠町の古びたモーテルのようなアパート。バッジを見せたら興味津々の管理人がマスターキーと一緒について来る。


「彼女はあまりしゃべらない人だった。家賃の払いは良かったよ。壁の向こうの2人とは大違いさ」


壁の向こうからは男同士が喧嘩スル声w


「ちょっと失礼、刑事さん。悪いね…おい!静かにしろ!警察の旦那が来てるぞ!」


ピタっと止む喧嘩の声。


「"刑事さんと旦那"か。ブログのタイトルにちょうど良いな」

「え。テリィたん、未だブログなんてやってるの?警察の報告書は手伝わないくせにブログは描くのね…室内で争った形跡とかはなさそう」

「TVやPCもナイな…何か変じゃないか?」


ラギィはうなずき、ビニ手をスル。


「大家さん。昨日、ロラル・ブリジを最後に見たのはいつですか?」

「昼間に見たな。彼女は夜の仕事をしてて、5時頃出勤したょ」

「どんな仕事でしょう?」


まさか水商売?


「いいや。稼ぎがあったとしか聞いてないな」

「友達や恋人を見ましたか?」

「いいや…おっと待った。そーいえば昨夜、男が出て行ったな」


男?


「何時頃でしょう?」

「21時半頃だな」

殺害予想時刻(キルゾーン)だわ。どんな男でしたか?」


必死に思い出す大家。


「背は身長180cm位の中近東系アジアン。黒っぽい髪」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のギャレー。


「そんな人、聞いたコトありません。確か妹は恋人もいなかったハズです」


キレイなお姉さんだ。紙コップのコーヒーには手もつけない。青い服に真珠のネックレス。


「誰か紹介しようとしたけど、興味がないと言われたわ」

「大統領府とか政治活動とか何かと関係は?」

「いいえ。ないと思います」


ウソでは無さそうだ。


「失礼ですが、姉妹の仲は?」

「良かったです。昔は仲良しで私に何でも話してくれました。でも、半年前から連絡が途絶えて…妹は今までの人生を捨て去った。急に文学部教授の仕事を辞め、東秋葉原のアッパーウェストから花籠町の安アパートに移った」

「ソレはナゼだと思いますか?」


フランス人みたいに肩をスボめるお姉さん。


「わかりません」

「最後に妹さんと話したのは?」

「3日前です。私の誕生日に電話をもらいました」


不審な顔をするヲタッキーズ。


「電話はどこから?彼女はスマホは持っていないんですよ?」

「わかりませんけど…かなり動揺してました。仕事で何かトラブルに巻き込まれて大変だとか言っていました」

「どんなトラブルですか?」

「それを知ると身に危険が及ぶと言ってたわ」


顔を見合わせるメイド達。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。ホワイトボードに被害者の顔写真、遺体の写真、絞殺の現場写真を順番に張り出して逝く。


「ロラルは、一流大学で終身在職権も狙えたのに、ソレをなぜか捨てて、生活を180度変えたら殺されてしまった。何があったんだ?」

「犯人がアパートで彼女を探していたのなら、次はオフィスに向かうハズね」

「仕事帰りに殺されたのかもしれないな」


生産性の低い会話だ。そこへマリレがペーパーを振りかざして飛び込んで来る。


「わかった。勤務先がわかったわ!」

「どーやってわかったの?」

「彼女の銀行口座に、最近DAWコープと言う会社から振り込みがあった。会社はバワリー地区の2丁目と3丁目の間にアルわ」


デスクから立ち上がるラギィ。


「行きましょう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


廊下の照明は緑。UFOふれあい館的チープさが漂う。


「ココょ205号室」

「どんな商売なのかな?怪しげな密貿易?マネーロンダリング?搾取工場?」

「静かにして」


耳をすます。ドアの向こうから声が聞こえる。


「お願い!ヤメてぇ!」

「聞こえる?」

「うん。ラギィ、突入だ!」


空耳で女子の悲鳴を聞くのは、令状ナシで踏み込む時のお約束だが…マジで誰かが困っている気配だw


「痛いわ!ダメょヤメて!」

「ねぇお願いって言ってるでしょ」

「アキバP.D.!アキバP.D.!」


扉を蹴破って音波銃を構えたラギィが突入…華やかなネオンがキラめく中、透明な壁で仕切られたブースの中で思い思いの格好の女子が…喘ぎ悶えてるw


「女子ばっかりだ」


全員すっぴん。老婆もいればセーラー服もいる。裸足もいれば厚底もいる。全員、髪に生活の匂いw


「何なのココは?」


シャンデリアが下がる十字路に置かれたデスクから太めの女性が立ち上がり、僕達を見て驚いてる。ブースの中の女子達も徐々に僕達の方を振り返る。


「多分1分1000円の高い通話料を取るトコロだ。ココはテレクラ風俗店だ」


DAW"dial a wotaku"のネオンが明滅w


「あぁモリィとても良いわ」


白髪の老婆がヘッドセットのマイクにうめく。


「いやん。貴方ったら、もう最高」


第2章 テレクラヲペレーターズ

「ピンヒールょ私のピンヒールの音が聞こえる?」

「私、飢えてるの。だから、お願い!そばにいさせて」

「私は淫乱なセーラー戦士。貴方に敗北して触手で凌辱されるの!もっとイジめて!」


素敵なセリフが飛び交ってて集中出来ない。


「…ロラル?素直で、賢くて面白い子よ。ココに入って数ヶ月なのに、超売れっ子の"女神"になったわ。その彼女が死んだなんて」

「ロラルは、昨夜もここでお仕事を?」

「いいえ、昨日は用があるからと言って休んでた」


マネージャーのマンリは語る。彼女の肩書きはCSO?"チーフ・セクゼクティブ・オフィサー"だ。


「ロラルは、お姉さんに職場で何か問題があったと言っていたそうですが」

「私は何も聞いてないわ。でも、ここ数日、彼女は上の空だった」

「ロラルは、同僚、えっと女神だっけ、女神同士で何か喧嘩をしていたとか揉めてたコトは?」


CSOは即答。さすがは経営者。


「人付き合いは良くなかったけど、みんなとは仲良くやってたわ。他の女神からの苦情もなかった」

「彼女はなぜ女神に?」

「どういうこと?」


質問の意味を確認スルCSO。


「ロラルは、文学部の教授として前途有望だったのに、それが突然テレクラ嬢に変身スルなんて」

「おまわりさん。ココには色んな人がいるわ。学生さんに女優さんにシングルマザー。みんな、この仕事が大好きなの。ある会計士は、この仕事は人生で最大の挑戦だと言ってたわ。女にとって、男を欲情させるのはたまらない快感ょ。顧客を夢中にさせる快感は、女にとっちゃ麻薬なの」

「…ロラルに執着しちゃった客はいなかった?」


マンリは、太めボディを揺らして苦笑い。


「男に執着させてナンボの仕事よ」

「テレクラ嬢が誰かと言うコトがお客に漏れるようなコトはありませんでしたか?」

「絶対にナイ。従業員の情報は厳重に管理してる。

そもそも、客が電話して来る番号は1つ切りなの。ソコから、このサラルが女神達に着信を回すシステムよ」


マンリは、傍らでCRTを睨んでる、ヘッドセットをつけた金髪のオペレーターを紹介して歩き去る。


「はい。お客様の名前とクレジットカード情報を聞いて着信をデリバリーするのが私の仕事です」

「昼間から大繁盛だね」

「ええ。朝、張り切りたい人もいれば、昼に元気付けが必要な人もいますから」


半ば呆れてるラギィ。


「コーヒーで元気を出した方が安上がりね」

「おまわりさん。誤解されがちだけど、私達の仕事の目的はセクシャルなモノだけじゃないの。なかなかご理解はいただけませんが。現代社会では、男女問わずストレスのはけ口を求めてる。時にソレが性的なモノに走る時もあるけれど」

「つまり癒しだね」


我ながらナイスな合いの手だと思ったが、ラギィからは、心の底から哀れむような視線が飛んで来るw


「ロラルは、セクシートークだけじゃなく、とても聞き上手だったンです」

「彼女が着信を拒否したいと言っていたゲストはいますか?」

「いいえ、いないわ」


サラルは即答。


「上司に言えないようなトラブルは?」

「ソレは…」

「何?」


突然!泣き出すサラル。


「いいえ、ないわ」

「ちょっと。何なの?」

「ごめんなさい!ホントにごめんなさい!」


ヘッドセットを投げ捨てヘナヘナ座り込むサラル。


「実は…全部私のせいなんです。ロラルは、私のせいで死んだの!」

「なぜそう思うの?」

「彼女が何者か、顧客にバレたのか?」


ナイスな突っ込みだと思ったが、またもラギィの視線が痛い。しゃがんでサラルと視線を合わすラギィ。


「違うの。その反対なの。ロラルが1週間ぐらい前に私のトコロに来て、ゲストの連絡先を知りたがった。DAWのハウスルールに反すると言ったけど、彼女はどうしても教えて、人の生死に関わる問題なの、ってヤタラ真剣に言うから…」

「まさか教えたの?」

「そのゲストの名前は?!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「エドガ・ナバロ?」


後ろ手にドアを閉めながら取調室に入る。


「僕は何もしてない!この連行は不当だ!」

「昨夜8時から10時の間、貴方はどこにいたの?」

「何のコトだ?コレは取調べなのか?」


ラギィは、タブレットでロラルの画像を示す。


「この女性を知ってる?」

「彼女が何か言ったのか?彼女とは話しただけだ。何も悪いコトはしていない!」

「じゃ彼女はナンで死んだの?」


エドガ・ナバロは絶句スル。


「な、なんだって?死んだ?」

「トボけないで。ロラルから連絡が来て、貴方は会ったンでしょ?そして、殺した」

「待ってくれ。俺は協力を頼まれただけだ」


殺人容疑と気づいて顔面蒼白のナバロ。


「頼み事ってどんなコト?」

「俺は、蔵前橋(けいむしょ)の服役中にパソコンの修理を学んだ。その腕を見込まれ、オフィスのハードドライブから録音データをコピーする闇バイトを持ちかけられた。で、拡張子を尋ねたら、調べて後で連絡スルと言っていた」

「ウソね。彼女はスマホを持ってないわ」


あっさりウソを見破った…つもりが猛反論w


「持ってた!現に俺のスマホに登録してアル。コレが彼女の番号だ。見ろょ」

「わかったわかった。彼女がデータをコピーしたがった理由は聞いたの?」

「何でも思いがけないコトを聞いてしまったらしい。その証拠に、どーしてもコピーが必要ナンだと言ってたぜ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再びDAW。マンリCSOを挟んで女達が詰まってるブースの間を歩く。


「セクゼクティブ。ロラルから不審な通話の話は聞いてるの?」

「何も聞いてナイけど」

「データコピーの依頼の件は?」


首を傾げるセクゼクティブ。


「ソレもなかったわ。そして、コンピュータ室の鍵を持っているのは私だけ」


鍵を開けようとして振り向くセクゼクティブ。


「鍵が壊れてるわ」


瞬時に音波銃を抜き、ドアに耳を傾けるラギィ。何も聞こえない。ゆっくりドアを開けて照明をオン。


「クリア…大丈夫みたい」

「ハードドライブがナイわ!ココ2ヶ月分の通話を記録した記憶装置があるハズなのに!」

「ハードドライブを最後に見たのはいつ?」


すっかり取り乱してるマンリCSO。


「今朝よ!その時は異常がなかった。今日、盗まれたンだわ」

「落ち着いて。今日の訪問者は?」

「ガス会社の人がガス漏れがあると言って来た」


ガス会社?文字通り臭いな。


「どんな男?」

「身長180cm。中近東系のアジアン。黒っぽい髪」

「ロラルのアパートに来た男と同じだわ。そのデータには、何が録音されていたの?」


僕が答える。


「誰かに殺人を犯させるほどのモノさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地が良くて常連が沈殿、経営を圧迫中だw


今宵は今宵で(ヲーナーです)がメイド長に粘着中←


「ソレでテリィ様、知り過ぎたテレクラ嬢の事件はどーなりましたか?」

「ミユリさん。まるでサスペンス映画だょ"ミッドナイトクロス"の世界さ。登場人物が全員で秘密が録音されてるデータを狙ってる」

「ソレはミステリアスなコト」


勝手に自分用にワインを注ぐミユリさん。


「謎は他にもアル。なぜロラルみたいな高学歴の大学教授が突然仕事を辞めて、それまでの人生を捨て去って、テレフォンセックスの世界に身を投じたのかな」

「ゲストはどなた?誰が電話をしてきたか位は調べられるんでしょ?」

「ロラルに電話してきたゲストのリストは万世橋(アキバポリス)が入手した。でも、たくさんの通話の中で、どれが問題の通話なのかはわからない」


その時、珍しく僕のスマホが鳴る。


「もしもし?」

「テリィたん。私を覚えてる?以前にもラギィ警部の安全保障で電話をした者だけど…」

「覚えているとも」


"黒メイド"だ。


「テリィたん。私達、も1度話す必要がアルようね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ホントに前と同じ"黒メイド"でしたか?」

「ミユリさん、間違いない」

「この事件はラギィと何か関係が?」


僕は小さく溜め息だ。


「関係スルから電話して来たのさ」

「ラギィは何て?」

「話してない。ロラルの事件には、何か大きな力が働いてる。テレフォンセックスじゃすまない。思ってるより、はるかに危険な事件だ」


ミユリさんがカウンターに頬杖をつく。可愛い。


「で、テリィ様はどうなさるおつもり?」

「"黒メイド"の電話番号だ。通話のタイミングはおのずとワカルと逝われてる」

「いつラギィに話しますか?」


僕は首を振る。


「ラギィ、例の"黒メイド"から電話で、お母さんの事件から手を引けと言ってるぞって話すのか?さもないと…君も死ぬぞって?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィはデスクでチョコを摘みながらスマホ中。


「えぇそうょ…ごめん。ちょっと待って…も1度お願い。え?何も食べてないわよ…ありがとう」


スマホを切ったトコロにスタボのグランデカップ2つ持参で登場だ。笑顔でカップを受け取るラギィ。


「あら。テリィたん、ナイスタイミング…何かあったの?」

「いいや、別に。何か進展か?」

「今、超天才のルイナ様から電話でロラルの口の中と食道から薄茶のカシミヤの繊維が出たって」


そう言いながら、ホワイトボードに描き込む。


「恐らく犯人のコートの袖に違いナイって」

「茶色のカシミヤか。犯人は、リッチな上にセンスの良い奴ってコトか」

「テリィたんとか?」


まさか。


「僕にはアリバイがあるぞ。スピアといた。ガス会社の男については何かわかったか?」

「ガス会社だなんて大ウソだった。鑑識によれば、DAWのオフィスには彼の手がかりはゼロ。指紋1つも残さズに消えたわ。プロね」

「ラギィ!DAWの通話記録をゲットした。ざっと200ページ位アルわ」


マリレが飛び込んで来る。


「DAWの女神達も大忙しょね。ロラルが受けた通話に絞るだけでも大仕事ょ」

「大統領府からの通話はあるか?」

「あら、テリィたん。大統領は無関係ナンでしょ?」


突っかかって来るラギィ。何で?


「そんなコトは言ってないさ。何ゴトも先入観は良くないからね」

「大統領府からはナイわ。でも、メトロポリターナ美術館やイチゴ銀行、外資系証券会社の番号とかもアルわ」

「世界経済の破綻も当然だな…あ、今行くわ」


制服警官がラギィを連れ去る。彼女は人気者だ。


「ヲタッキーズ。もし捜査の過程でラギィのお母さんの事件に関する事実が出たら、直ぐに教えてくれ」

「待って。テリィたんは、この事件が…」

「先走るな。ラギィは何も知らないコトだ」


メイド達が騒ぐのを制する。エアリは小声で…


「何かあったの?」

「いや。僕は、あらゆる可能性を考えてるだけだ」

「…わかったわ」


ホワイトボード前に戻って来るラギィ。


「ウチの制服組がロラルを乗せたタクシーを見たって目撃証言をゲットしたわ。2日前にダウンタウンのテレビ局で落としたそうよ」

「ダウンタウンのテレビ局?"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"ね?」

「何で"ワラッタ"なの?彼女の行動は、いちいち意味不明ね」


一同うなずく。


「答えはナイけど、先ずロラルの電話番号をエドガに聞くべきだと思うの」

「プリペイドのスマホを6日前から使用してる。エドガに1回かけて、事件当日、今度はエージェントに電話をかけている」

「エージェント?」


やっぱりスパイ説?


「いいえ。出版エージェントのトレバ・ヘイズょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ローラは才能があったのに非常に残念だ」


書斎を彷彿させるワンマンオフィスだ。神田末広町の雑居ビル2F。狭い階段を登った奥の部屋。


「貴方がロラルのエージェント?」

「YES。半年前に企画書の持ち込みがあり、面白そうだったので出版までのマネジメント契約を結んだ。面白い企画だったょ」

「彼女は、どんな企画を持ち込んだのですか?」

「格差社会についてだ。ワーキングプアの視点から現代社会での不公平を糾弾スル内容だった。裕福なセレブ階層の女性が貧困ライン以下の生活を体験するコトにより格差を実感スル」


ラギィと顔を見合わす。ロラルの転職は、執筆のためのリサーチだったのだ。実体験は何者にも勝る。


「殺人事件との関連を調べるので、原稿を見せてください」

「未だ原稿はナイ。仮に描き始めていたとしても、私は見たコトがナイ」

「ソレに、ロラルは資本主義に反対したから殺されたワケじゃないだろう。彼女の本は事件とは無関係だと思うよ」


ラギィは首を傾げる。


「どういうこと?」

「実は、数日前に彼女から特ダネを手にしたと連絡してきたんだ。何でも"リアルの裂け目"のアッチとコッチに影響力がある大物のスキャンダルだと。このスキャンダルが世に出れば、秋葉原特別区(D.A.)の根幹を揺るがす大騒ぎの事件になるとね」

「大物って誰?」


単刀直入な質問。


「言わなかった。"裂け目の支配者"とか呼ばれてるらしい。次の本の企画として今週話す予定だったが、その矢先に彼女は…」

「あ、失礼。急ぎの電話だわ…エアリ?」

「ラギィ?今"ワラッタ・ワールドワイド・ワイド"の東秋葉原オフィスにいるわ。直ぐ来て」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"は、アキバ発の巨大メディアだ。

ワラッタとは、彼等がサエないミニコミ誌を出してた頃からのつきあいだ。


「ラギィ。彼はパトマ・コール。ロラルの友達よ」


ワラッタの東秋葉原スタジオ。大きな機械卓に張り付いていた男が、振り向いて陽気に手を上げる。


「パトマ、さっきの話をして」

「OK、メイドさん。数日前だけどロラルから久々に連絡が来たンだ。リサーチのためにウチの局の映像アーカイブを見たいと言って来た。で、ココを貸した。そうだな、8時間以上だね。途中で様子を見に行ったら、彼女は居眠りしてた」

「何の映像を見てたの?」


パトマは近くの画面に絵を流す。


「ヒカリ・ライト大統領関連の映像だ。議会の審議や式典、記者会見の舞台裏とかね」

「秋葉原の大物のスキャンダルってコレなの?」

「ロラルが最後に見てた画像はコレだ」


パトマは何かの慈善団体の集まりの画像を流す。


「コレ、去年僕も出させられたな」

「ソンなコトより、画面の端の女性を見てくれ」

「ロラルだわ!」


忙しなくコートを着込むヒカリ大統領の目の前だ。ロラルは、支持者に囲まれて何ゴトか対応してる。


「ヒカリはロラルのコトを知らないと言ってたな」

「ねぇ大統領の服を見て」

「薄茶色のカシミヤのコート?犯人が着ていたのと同じコートだぞ」


唇をギュッと結ぶラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ラギィ、信じてくれ。僕は、ヒカリとは12年の付き合いだ。彼女は決して殺人犯じゃない」

「ソレはわからないでしょ」

「ラギィ!」


ギャレーに移動。


「大統領は、被害者のコトを知らないと言った。警察にウソをついたのよ」

「おいおい。彼女は大統領だぞ。犯人が隣にいても気づかないコトはアル。毎日大勢と会うから、全員を覚えられるワケがナイ。僕だって、サイン会に押し掛けて来た女子の胸にサインはスルけど、その全員を覚えてるワケじゃナイ」

「テリィたんは大統領を弁護してるわ。先入観でモノを言うのはヤメて」


ココでヤメたらお終いだ。


「おっしゃる通り!正しく問題は潜入観さ。ソレに彼女は善良なる選良だから」

「善良なる選良だって過ちは犯すわ。側近によれば彼女の帰宅時刻は殺害時刻とも符号スルの」

「待て。なら、動機は何だ?」


食い下がる僕。


「ソレは…未だワカラナイわ」

「じゃチャンスをやれよ。君が動けば、ヒカリの政治生命は終わる」

「何かわかったの?」


振り向けばモニターにゲイツ司令官が映ってるw


「有力な手がかりが得られました。そろそろ核心に迫ります」

「被害者と大統領府がつながったの?」

「いいえ、ソレは未だ…」

「そう。何かわかったら教えて」


言い捨てて消えるゲイツの画像。


「…最悪だわ。ウソついちゃった」

「思うんだけどさ。ゲイツはヲタッキーズをSATOから追い出すためにヒカリを犯人に仕立て上げたいンじゃないかな。そうすれば僕も葬れる」

「テリィたん。そういう私情を挟まないで!」


ギャレーからスタスタ出て逝くラギィw


「ま、待てょ何処へ逝くんだ?」

「動機が不明だと、大統領のカシミヤのコートを押収スル令状が取れないでしょ?元カノ大統領サマの動機を探しに行くの!」

「未だソンなコトを逝ってるのか!」


ヒートアップ。


「テリィたん、どうしろって言うの?例えテリィたんの元カノだろうと、大統領が犯人なら…」

「彼女は殺してナイ!」

「じゃソレを証明スルわ。OK?」


あの日、同棲してた百軒店のアパートを飛び出して逝ったラギィ。まるで昨日のようにflashbackスル。


「マリレ。映像から何かわかった?」

「ロラルの胸に慈善団体のボランティアバッチを確認した。彼女は、大統領支援のボランティアスタッフだったのね」

「でも、何百人もいるボランティアの全員をヒカリが知っていたとは限らないだろ」


すると、ラギィは僕を振り向いて吠えるw


「マリレ、一緒に来て!テリィたんは、客観性を失ってるから、ココからは私についてこないで」

「そうょそうょ」

「行くわょマリレ。let's go ヲタッキーズ」


2人でスタスタと出て逝く。何なんだ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


大統領サポートNGO。パーク事務局長が応対。


「いいえ。大統領とロラルが知り合いかは分かりません。ロラルは入って間も無く辞めてしまったので」

「何でヤメたんですか?」

「1週間前にボランティアで雇いましたが、数日でクビにしました」


you're fired!


「なぜですか?」

「ウチの会計報告書のファイルを勝手にコピーしていたのです」

「会計報告書のファイル?コピーしていた理由に心当たりは?」


しまったと口をつぐむ事務局長。だが、もう遅い。


「このコトは未だ口外すべきでは…」

「パークさん。我々は、スーパーヒロインが殺されて、その犯人を追っているのです。ココで話すか、万世橋(アキバポリス)で話すかです。ただし、万世橋にはパトカーの後部座席に座って来ていただきます。手錠はしませんが」

「え。パトカー?」


顔面蒼白のパーク。


「最近、実は使途不明金があるコトがわかりまして…」

「いくらです?」

「2億3000万円。今、内務調査が行われています」


顔を見合わせるラギィとマリレ。


「その調査対象には大統領が入っていますか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。スマホを切るマリレ。


「そう。わかったわ、thank you…ラギィ。最高検察庁も大統領府に嫌疑がかかってるコトを認めたわ」

「2億3000万円は十分に殺人の動機になるわ」

「大統領が自分の慈善NGOから横領か…NGOスタッフがそのコトをロルラに話して、彼女は独自に調査を始めた。そして、暴露できる証拠を集めた彼女を大統領府が殺した。SATOに報告スルの?ラギィ」


エアリに逝われ、ゲイツの映るモニターに目をやるラギィ。しばらく考え、やがて長い溜め息をつく。


「しなきゃね」

「コレでヒカリ大統領は破滅?」

「そうなるわね」


エアリは念を推す。


「ヒカリ大統領が失脚したら、SATOはヲタッキーズとの契約を切るわ。つまり…この場からテリィたんも、私達も消えるけど」

「わかってる」

「そう。なら良いわ」


デスクから立ち上がりモニターの方を向くラギィ。


「わかってるわょ。ソンなコト」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


モニター越しにポイントをつくゲイツ。


「ラギィ警部。ソレは確実な話なの?」

「YES。大統領のカシミアコートの令状を申請すれば、その時点で全ての嫌疑が公になり、大統領がスーパーヒロイン殺しの容疑者だと言うコトが世界中に知れ渡ります」

「でも、ソレは事実ナンでしょ?」


微かに言い淀むラギィ。


「そうですけど、もし間違っていたら、大統領の政治生命を、その前途を閉ざし、彼女のキャリアを潰すコトになります」

「あのね。貴女達警察は、秋葉原のヲタクの命と財産を守るコトが仕事なの。その任務は、時に血の代償を求めるコトもアル…ねぇ私のアダナは知ってるわょね?"鉄の女"。どうせ貴女達も隠れて言ってルンでしょ。長く桜田門(けいしちょう)の内務調査部にいたから、警官嫌いだと思われてる。実を言うとね、警官は大好き。父も叔父も警官だった。でも、巡査時代に私の相棒が上司に暴行されたの。彼を逮捕するのは誰?内務調査部ょ。さぁ大統領府に行って、自主的にカシミヤコートを渡すよう大統領に働きかけて。マスコミに騒がれない唯一の方法だと言ってね…ソレでも大統領が拒んだら、直ちに令状を取り職務を執行しなさい。血の代償を恐れてはダメ」


うなずくラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


大統領府に出撃するラギィを捕まえる。


「ヒカリのトコロに逝くつもりか?」

「YES」

「一緒に逝くょ。力になるから」


寂しげに首を振るラギィ。


「ありがとう、テリィたん。でも、もうテリィたんは私の力にはならない」

「ラギィの指摘は受け止めた。ソレでも、僕は君の役に立てる。彼女とは20代の頃、渋谷の百軒店で同棲した仲だ。下手なウソなら見破れる」

「(今度百軒店の同窓会でも作ろうかしらw)無理強いが必要な時でも?」


僕の方を向いたラギィに僕はうなずく。


「万が一、ヒカリが犯人なら、ソレを誰よりも知りたいのは、この僕さ…そして、そのコトによって、僕自身が客観的になるコトが出来る」


うなずくラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原特別区(D.A.)大統領府。


「大統領が直接お話になる必要はありません。対応は私にお任せください」

「良いのょブライ。かばってくれなくて良いの。だって、私は無実なんだから。秘書官を連れて部屋から出て頂戴」

「アンタ。もしヒカリ・ライトの名に傷をつけたら、一生所轄暮らしにしてやる!」


僕達を指差し退出するブライ補佐官。


「直接ご対応いただいて恐縮です、ヒカリ大統領」

「他に選択肢はなかったのでしょ?しかし…私の元カレを連れて来るのはやり過ぎ?」

「…大統領は、ロラル・ブリジのコトは知らないとおっしゃってましたょね?」


すると、ヒカリは不思議な微笑を浮かべる。


「ロラルさんのコトはホントに知らない。でも、貴女のコトは知ってるわ。元カノ同士だモノね」

「大統領…この画像は、閣下のお隣にロラルが写っています」

「あぁこの時ね。思い出したわ。このイベントは、数日前ょ。彼女は、しきりに私と話そうとしていたわ」


ラギィは身を乗り出す。


「彼女と何か話しましたか?」

「いいえ。大口スポンサーへの対応が忙しくて話す機会はなかった」

「ヒカリ。大事なコトなんだ。彼女とキチンと話したコトは無いんだな?」


首を振るヒカリ。


「スマホで話したとか?」

「いいえ。アレっきり忘れてたわ」

「大統領。閣下は、この写真では薄茶のカシミヤのコートを着ていますね。鑑識に回したいので、検査のためにご提供ください」


一気にまくしたてるラギィ。ヒカリは、直ぐには答えず、伺うように僕を見る。僕は、うなずく。

ヒカリは、一旦はクロークの方に歩み寄るが、透明な壁にぶつかったように立ち止まり振り向く。


「残念だけど警部。ソレは拒否させてもらうわ」

「大統領。ソレはナゼですか?」

「おい、ヒカル。コートを渡すんだ。ソレが最善の方法だぞ」


微笑むヒカル。


「出来ないわ、ラッツ」


僕を渋谷時代の名前で呼ぶ。


「大統領。出来ない理由をお聞かせください」

「ラギィ警部。私は、ココ数日で殺人や横領といった身に覚えのない疑いを、次々と(とが)められて来た。今日は元カレまで現れて圧力をかけてる。ねぇコレが偶然重なって起きたコトだと思う?」

「ヒカル…」


あの日、僕にだけ見せたヒカルの悲しげな表情w


「私が話してるのょラッツ。コートを貴方に渡したら、私を陥れたいと思う連中の思うツボなの。ねぇコレは誰かが仕組んだコト。ラッツ、貴方はその駒に使われている。陰謀ょ。でも、私は特別区の大統領。そんな陰謀に屈したりはしない」

「ヒカリ。陰謀って何だ?」

「ラッツ、もう話したでしょ?東日本は来年、道州制に移行スル。私が東日本の盟主となるコトを考え始めたら、途端にこのザマょ。しかも、今回は組織で潰しにかかってきてる。だから、今は誰も信用出来ないの。警察も、元カレの、貴方も」


僕達に背を向けるヒカリ。まるで聞いてたかのようにブライ・ジェイ補佐官がドアを開け退室を促す。


「ヒカリ…」


君は変わらないな。まるで2人で百軒店で暮らしていた頃みたいさ。僕はソンな君が大好きだったょ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


大統領府の階段を降りながらラギィと話す。


「ヒカルが慎重になるのは当然だ」

「だって、テリィたんの元カノ大統領は犯罪者だものね。あ、私は同じ元カノでも違うから」

「ラギィ。コレは陰謀だょ。あり得るコトだ。ロラルは大統領に警告しようとして殺されたンだ」


首を振るラギィ。


「いいえ。ロラルに悪事を知られ、秘密を握られた大統領が彼女を殺したのカモ」

「いや。やはりコレは陰謀だろう。僕は、彼女を良く知ってる」

「そりゃ元カノだもの。彼女とも渋谷で同棲してたンでしょ?大統領もテリィたんのケツの穴まで御存知だわ。だから、テリィたんが飛びつくとわかって陰謀とか言ってンのょ。陰謀にUFO。テリィたんはソレだけで人生を生きてる」


良く知ってるなw


「僕がヒカリにハメられてるってか?この僕が、元カノに操られているとでも?」

「その可能性があると言っただけ。あらゆる可能性を考えるように言ったのはテリィたんょ?とにかく!こうなったら仕方ナイわ。カシミヤコートの提供を拒まれたから令状を取るコトにスル」

「ちょっち待ってくれ。スーパーヒロイン殺しの容疑をかけられてるコトが公になったら、彼女の政治生命は終わるぞ」


ラギィは怯まない。


「承知の上よ。関係ないわ」

「何を言ってるんだ。政治の世界はイメージこそが真実になる。事実は関係ない」

「彼女のイメージのために捜査をヤメるワケにはいかない。私は、死んだスーパーヒロインの無念を晴らすために犯人を追ってる。この職務を放棄するコトは出来ないわ」


ヒートアップする僕達。


「違う違う違う。頼むから待ってくれ。別の手係りが出て来るまで」

「その間に、カシミヤのコートが闇に消えるわ。私だって出来るならやりたくないけど…」

「じゃヤラなければ良い」


睨むラギィ。彼女はスタスタ歩き去る。振り向く。


「テリィたん。他に選択肢はナイの」


第4章 黒メイド vs ムーンライトセレナーダー


記者会見で、胸を張るヒカリは雄弁だ。


「私達は、万世橋警察署ラギィ警部の捜査には全面的に協力します。私は、100%の自信を持って申し上げます。捜査によって、必ずや私の身の潔白は証明されるでありましょう」


御屋敷(メイドバー)のカウンターの中と外に分かれ、モニターを見上げる僕と御屋敷のメイド長のミユリさん。


「テリィ様は、ヒカリ・ライトのコトを信じますか?」

「信じるよ」

「(まぁ即答だわ何なの?)前にも似たコトがありましたね?テリィ様は、ダミアを信じたけど彼女はスーパーヒロイン殺人罪で今、蔵前橋(けいむしょ)です」


YES。終身刑だw


「ダミアは…当時は僕も感情的だった。でも、今回は冷静になっても、何か状況がおかしいと感じる。僕達の想像を超えた巨大な力が作用してる」

「であれば、例の"黒メイド"に電話してみたら如何ですか?」

「ミユリさん。良いのか?」


微笑みを浮かべ、僕のスマホを指差す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昭和通りを跨ぐ古い歩道橋だ。眼下はヘッドライトの光の河。頭上に覆い被さるような首都高上野線。


「ソコで止まって」


メイド服のシルエットが階段を登って来る。


「全ては陰謀だと言ってくれ。ヒカリは無実だ。助けてくれるだろう?」

「まぁそのつもりだけど」

「どうすればヒカリを救える?」


カチューシャをつけた黒い人影は語る。


「ロラルのように証拠を聞きなさい」

「ロラルとヒカリの映像なら何度も見た。でも何も映ってなかった」

「私はソンなコトは言ってナイわ」


その時、鋭く急カーブを切る音がして、黒い軍用ハマーが昭和通りへ飛び出す。

メイド姿の人影が駆け込むや、ライトをビームにして急発進スル軍用のハマー。


その後に"黒メイド"の姿は無い。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ヒカリとは何度も会ったわ。大統領になる前も。なった後も。良い人ょね」

「大統領、記者会見でかなりヤバかったね。でも、ラギィが火付け役とは違うから」

「ありがとう、マリレ。ただ火に油を注いだだけだモノね」


寂しそうに笑うラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。DAWのオフィス。


「テリィ様。何か御用ですか?テレフォンなら私がして差し上げますが」

「ミユリさん、1つヒラメいた。僕は、ずっと証拠を探してきた。でも、映像ではなくて、音を聞くべきだったんだょ」

「音を聞くべき?」


投げ槍な女達のテレフォンセックスのブースが並ぶ通路を歩く。目指すはシャンデリアの下だ。


「ロラルは、エドガ・ナバロに思わぬコトを聞いたと話してた。ミユリさん、コレを僕達作家は"誘因"と呼ぶんだ。ロラルがテレフォン嬢として聞いた何かが殺人を招いてるのさ」

「なるほど。でも、録音データは盗まれて、彼女が何を聞いたのかは闇の中です」

「YES。でも、彼女が"誰から"聞いたかはワカルぞ。ロラルは、ワラッタのTV局で居眠りしてたそうだ。でも、ソレは居眠りじゃなくて、目を瞑って音に集中してたンだょ」


僕は、シャンデリアの下で立ち止まる。セクゼクティブのマンリと通話デリバリーのサラルがいる。


「映像を見るんじゃナイ。聞くんだょ」

「つまり、誰の声かを調べるのですね?」

「YES。そして、ココには客からの通話を女神達に配信するサラルがいる。彼女に問題の音声を聞いてもらったのさ」


サラルは、ヘッドセットを外して僕を見上げる。モニターには、例の慈善NGOの画像が流れてる。


「彼です。間違いナイわ」

「誰か画像を指差してくれ、サラル」

「この人ょ!」


モニターに流れる画像には何か話したそうなロラルを尻目に大統領と話す長身で金髪の男が映ってる。


「ノリス。この現場にあと何分いれる?」

「D.A.経済会議まで残り20分です、大統領」

「OK…やぁみなさん!」


ソコで画像ストップ。サラルが指差したのは大統領府のオフィスにもいた秘書官のジョダ・ノリスだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


早速ラギィ警部に通報してジョダ・ノリス秘書官を万世橋(アキバP.D.)の捜査本部に召喚スル。


「ノリスさん。貴方はロラルのコトを知らないと言ってたわね」

「YES」

「で、貴方の代わりに貴方の89才になるおばあさんの電話番号からロラルご指名の電話が何度もかかってルンだけど?」


ラギィに続き僕も畳み掛ける。


「最初は盛りのついてるおばあちゃんかと思ったよ。何しろ89才だからね。そこで気づいたワケだ。君はよくおばあちゃんの家を訪ねてるそうだね」

「待ってくれ。確かに祖母の家から何度か電話をかけた。でも、相手が誰かは知らなかった。何しろ匿名が売りだから」

「貴方の通話記録も調べたわ」


キャリアが"捜査協力"で提出した書類を示す。


「貴方は、1ヵ月前にプリペイドのスマホにコレを送ってるわ」

「タダの数字の羅列に見えるけど、何を意味するかを調べてみたら、番号は大統領と彼女の慈善団体の銀行口座とわかった」

「その番号があれば、大統領が自分の選挙支援団体が集めた金を私的に横領してるように見せかけるコトが出来るわ」


僕は、既に顔面蒼白のノリスを真正面から見据える。コッチも元カノが失脚するか否かの瀬戸際だw


「君は、君を信じた大統領を売るのか?見返りは何だ?何を約束された?」

「ま、待ってくれ。狙いは金かと思ってた。まさか現職大統領を破滅させる気だとは知らなかったんだ!」

「そっか。で、気づいた時には、君はもう大統領を裏切っていたワケだ。自分がしたコトの意味に気づき、苦しんだ君は、テキーラに酔った勢いでDAWに電話した。そして、酔った勢いで全てをブチまけてしまったンだ。そうさ。最初はそんなつもりじゃなかった。だが、ロラルは聞き上手で、君はお喋りだ」


頭を抱えるノリス。


「だって…最近の風俗は安全だと思ったンだ。匿名性が俺を守ってくれるハズだった」

「バカだな。彼女はベストセラーを夢見る物描きだ。一生に一度の特ダネに命懸けで飛びついた。君の正体をタチマチ突き止めて、全てを暴露しようとしてたンだ」

「だから、貴方は彼女を止めるしかなかった。事件当日、彼女は貴方を訪ねてるわね?」


観念するノリス。首を垂れる。


「ソンなコトまで…確かに彼女は来た。しかし、20分後には帰った。その時には彼女は未だ生きていたんだ!俺は殺してはいません」

「YES。貴方は殺してない。ソンなコトはわかってる。その代わりに、口座番号を送ったプリペイドスマホの持ち主に電話したのでしょ?貴方は、いつもそう。面倒が起こると、自分ではどーしよーもなくて、貴方はプリペイドのスマホに電話スル。すると、何者かがロラルの首を絞めて命を奪い、その後ロラルの部屋やオフィスに侵入して、あらゆる証拠を消し去った(クレンジングした)。ねぇ貴方がスマホした相手は誰?」


頭をかきむしり叫ぶノリス。


「アンタ達は何もわかってない。奴等は、アンタ達が思ってるよりも、ずっと危険な連中なんだ!」

「あのね。このママだと貴方は蔵前橋(けいむしょ)で20年の実刑になるわ。執行猶予はつかない。服役スルしかないの。ソレが嫌なら今すぐ答えてちょうだい。電話の相手は?名前を言って。言いなさい」

「…わ、わかった。俺が電話した相手は…」


その瞬間、取調室のドアが乱暴に開けられる。


「また、このパターンか。これ以上、私のクライアントには質問しないでもらおう」


やたらサッパリした高級スーツの男が入って来る。

いわゆるヤリ手弁護士って奴だ。臭いでワカルょ。


「貴方は誰?」

「ノリスさん、私はビルボ・スーツです。貴方の代理人として雇われました。以後、私がいないトコロでの発言は控えてください。では、帰りましょう」

「え。俺の代理人?誰がアンタを雇ったンだ?」


当のノリスが慌ててる。もちろんビルボは応えない。


「以上で終了だ。では、失礼」


ノリスを無理矢理立たせ取調室から連れ出す。その間も僕とラギィに睨みを利かせる。後ろ手にドアを閉める。派手な音。


唇を噛むラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


曖昧に事件は解決し、解散が決まった捜査本部。ホワイトボードから写真を1枚1枚外すラギィ。


「どーやら、誰かさんの元カノ大統領は、命拾いをしたようね。先ずは正義の勝利だわ」

「でも、ロラルにとっては違います」

「共謀罪でノリスを告訴出来た。貴重な成果ょ」


モニターからラギィに声をかけるのはゲイツSATO司令官だ。


「ノリスは、タダのコマです。黒幕は尻尾切りに成功しました」

「わかってる。コレは長い戦いになるわ。1歩ずつ前に進むしかナイ」

「私こそ…わかっています」


ホワイトボードに描かれた文字を消して逝くラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


大統領府の執務室。


「ヒカリ。ヒカリの容疑は晴れたのに、なぜ立候補を諦めるんだ?」

「ラッツ。自分のSFでは、何度も人類を死滅させてる割に、貴方は相変わらず能天気な楽観主義者なのね。私は、コレで東日本知事は2年。D.A.の大統領選は6年は出られない。私の夢は潰えたわ」

「ヒカリ。どうにか出来るハズだ。身は潔白なのに」


ウィスキーグラス片手に笑うヒカリ。


「潔白過ぎた。今になってわかったの。この世界を影から牛耳ってる奴等がいる。ソイツらと手を組まなければゲームセット。コレが限界なの。奴等が決めた。私はココまでだと」

「コレからどうする?」

「昨日までと同じ。素晴らしい大統領であり続けるわ。世界一の秋葉原でね」


僕達はグラスを挙げる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。暗闇の中で2人のメイドが対峙している。


「私を呼び出せるのは、貴女のTO(トップヲタク)だけ。余計なマネはしないで」

「その私のTOの元カノは、特別区(D.A.)の大統領。その彼女を誰かが潰そうとしてる。だから、彼は危険を顧みず巨大な闇に挑みかかろうとしている。黙ってはいられないわ」

「貴女のTOはSF作家でしょ?お得意の妄想で全てを察するように言いなさい。ソレから…貴女はもう連絡して来ないで」


無言で必殺技"雷キネシス"のポーズをとるムーンライトセレナーダー。たちまち、殺気が満ちる。


「テリィ様は、メイド相手に戦うコトは出来ないわ。私が相手ょ」

「ムリょミユリ。貴女は私に勝てないわ」

「え?」


テレポート!


突如、目の前に現れた"黒メイド"は、無言でムーンライトセレナーダーに腹パンチを撃ち込む。

目を見開き反吐を吐いて地下アイドル通りの冷たい歩道に崩れ落ちるムーンライトセレナーダー。  


「今宵はトドメは刺さないわ。でも、次は…」


ムーンライトセレナーダーの薄れ逝く意識の中で、ピンヒールの足音が遠去かって逝く。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"大統領"をテーマに、主人公の学生時代の同棲相手が、今では秋葉原特別区の大統領との設定で、個人的には未知の領域である政治の世界に生きる男女の群像劇に挑戦してみました。


さらに、ヒロインにライバルが登場、先ずはヒロインに敗北していただきました。今後、好敵手として登場させていこうと思います。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり非ヲタクなインバウンドの家族旅行先として定着した感のある秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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