第9話「揺さぶりの電話」
その上でさらに舞桜さんは、鳥羽くんに怪しげな声でこう言ってくる。
「もしかして今更になって舞桜と付き合えばよかったとか思ったりしてる?」
鳥羽くんは、なぜか少し動揺しながらも返事を返していく。
「そ、そんなことないよ。望月さんと付き合えてよかったって思ってる。ただ中々会えない寂しさがあるだけだから。」
すると舞桜さんが追い打ちをかけるような言葉を鳥羽くんに話す。
「ふーん。それなら良いんだけど。でも栄川さんが言ってたけど、アイドルは正規メンバーに昇格するとめちゃくちゃ忙しいらしいわよ。」
この時はじめて舞桜さんが栄川さんと繋がりがあるのを知り、鳥羽くんは思わず関係性について聞いてしまう。
「え、もしかして栄川さんとつながってたりするの?」
舞桜さんは、ものすごく冷静な感じで話し始める。
「うん。栄川さんとはアイドルのオーディション会場で知り合ってね。私は不合格でアイドルにはなれなかったけど、その分こうしてメイドカフェで働くことになったんだけど。で、鳥羽くんはこれからアイドルの正規メンバーとなった彼女を支えられる自信はあるわけ?」
鳥羽くんは、自分が思っていることをそのまま話していく。
「うん。会える時間は減るけど、それでもアイドルになっても麻友ちゃんには変わりないと思うから。そんなことで気持ちが揺れる自分じゃないけど。」
しかし栄川さんは、少し深刻そうな表情をしながら鳥羽くんにやや小さな声で説明し始める。
「それはどうかな?昔みたいに会えなくなるんだよ。望月さんがいるアイドルは地下アイドルの割には人気高いだからファンも結構つくと私は予想してる。ツーショットチェキなんてきっとこれから数え切れないくらい色んな人と撮るだろうし。それでも今のままでいられるのは決して簡単じゃないし、鳥羽くんにとってつらい思いが続くと思うよ。それでも大丈夫?」
鳥羽くんの決意は固く、ハッキリと力強い声で舞桜さんにこう言った。
「大丈夫です!僕は必ずこの先も麻友ちゃんを好きでいます。舞桜さんとは友達としてよろしくおねがいします。」
その話を聞いたうえで舞桜さんは、最後に言葉を発してから通話を終了する。
「分かったわ。鳥羽くんがそう言うなら。だけど私はいつでも待ってるから!これからも頑張って!それじゃそろそろ仕事だからまたメールするね。電話ありがとう。」




