第16話「お試し」
「それならお試しで付き合ってみようかな。このままだと寂しさが強まって自分じゃなくなっても嫌だし。」
この言葉を聞いて舞桜さんは、ものすごく嬉しそうにしながらこう言う。
「良かった。絶対このほうが良いよ。そうと決まればさっそく日曜日って空いてる?」
鳥羽くんは、少し頭の中で考えながら返事をする。
「えっと、明日は試合があるけど、日曜日はお休みだね。」
すると舞桜さんがさらに嬉しそうにしながらこう言う。
「それなら良かった。じゃさっそく日曜日デートと言うことで。今はお給仕中だから詳しいことはまたメールしてね!できるだけ早く返信するようにするから。」
こうして鳥羽くんは、舞桜さんとお試しで付き合うことになったのである。
その日の午後、鳥羽くんはグラウンドで投球練習の時にコントロールが安定しており球速もしっかりと出ていた。
望月守投手コーチは鳥羽くんの投球を見ながらこう思っていた。
『昨日までコントロールが不安定だったけど今日はすごく安定してるし、球速も155キロを超えてきてる。こりゃ明日の試合で二軍昇格の話が再浮上しそうかも。』
鳥羽くん自身も明るい表情で投球練習をしていた。
その日の夕方、鳥羽くんと舞桜さんとの関係が前進していることを全く知らない私は夜のライブ前にプロデューサーからメンバー全員を含めて控え室に呼び出されていた。
プロデューサーが少し明るそうな声でみんなに報告を始める。
「みんな集まりましたね。それでは発表します。今日みなさんに夜のライブ前にどうしても伝えたいことがあります。約3ヶ月後になりますがアイドル☆エッグのワンマンライブの開催が決定致しました!」
この時メンバー全員、大喜びし私も栄川さんとハイタッチを交わしていた。
栄川さんは私にニコニコしながらこう言ってくる。
「ワンマンライブ開催はありがたいことだね!私たちが加入してからしばらく対バンライブしかなかったから。」
早くも感激していた私は右手のこぶしを強く握りしめながら返信をする。
「昔は定期ライブやワンマンライブをよくしてたらしいけど、ホント対バン続きでついにワンマンライブ開催だからめちゃくちゃ嬉しすぎるよ!やった。」
するとプロデューサーが少し鼻で笑ってから説明を続ける。
「最近対バンライブの仕事ばかり入っててワンマンライブができる余裕が無かったんだ。あとはワンマンライブの開催場所についてだが、今まではライブハウスやホール会場などで開催してきた。しかし今回は盛大にするため、プロ野球の試合が開催されている神戸スタジアムでワンマンライブを開催する!」




