第15話「リベンジ」
鳥羽くんの話を聞いて舞桜さんは、大きく頷いてからこう言う。
「そりゃそうだろうね。アイドルは何かと忙しいし、付き合ってるのが周りに分かるととんでもないことになったりするからね。」
鳥羽くんはさみしい気持ちが抑えきれず小さな声でこう言ってしまう。
「大変なのは理解できるけど、やっぱりさみしいものはさみしい。最近、ピッチングもコントロールが定まらなくてコーチからはプライベートが原因かなって言ってたし。」
ここで舞桜さんは、やや強気な感じで鳥羽くんにこう言う。
「それは大変だね。なかなか深刻じゃん。うーん、舞桜とお試しに付き合ってみない?別にこっちは彼氏がいることがバレたら大問題になるけど、自己申告したら毎月の給料から1割カットで済むし。」
鳥羽くんは、少し慌てた感じで舞桜さんに返事をする。
「お試しなんてしないよ。そんなの浮気じゃないか。それに給料カットも問題じゃん。」
しかし舞桜さんは、全く引き下がろうとはせずなぜか軽く舌を出してからこう言う。
「別に給料カット平気だよ。だってそれで堂々と付き合えて、もしお客さんが減ってもお店が責任を取ってくれるから。舞桜は給料カットを堂々と付き合えるためのお店に対する手数料だと考えるから。それにお試しは浮気にならないよ。ただのお試しだから。女性が気になった化粧品をちょっと試すようなものよ。」
この時、鳥羽くんの中で気持ちが揺れており、この寂しさが増していくのを恐れていたからである。
『お試しは浮気にならないって言われても、自分には麻友ちゃんがいるのに他の人と少しだけでも付き合うのは申し訳なく思うな。だけどこの寂しさが増していって自体が悪化するのも怖いから難しいところだ。』
舞桜さんは、鳥羽くんがものすごく悩んでいる様子を見ながらこう思っていた。
『何としてでもチャンスを掴むんだ私。学生時代私はあの人(望月麻友さんのこと)に負けた。だけど今、鳥羽くんが困ってる。今こそあの時のリベンジをするチャンスの切符をこの手で掴むんだ。』
そして舞桜さんは鳥羽くんが返事をする前にさらに話しかける。
「このままだと鳥羽くん、つらい思いをし続けることになるんだよ。ちょっとリフレッシュするためにもお試しに付き合おう?私なら鳥羽くんと一緒にいられる時間が長いよ。どれだけ舞桜が鳥羽くんのことが好きなのか証明してみせる。」
さらに鳥羽くんの気持ちは激しく揺れてしまい、顔を赤くしながら小さな声で舞桜さんにこう言う。




