第12話「我慢と自然体」
いきなり原因を当てられたため鳥羽くんは、ものすごく戸惑いながらも小さな声でこう言った。
「そうですね。よく分かりましたね。最近、彼女アイドルの仕事が忙しいみたいで電話も減ったし、デートもなかなか出来なくなったんです。」
望月守投手コーチは、軽く頷いてから冷静にこう言う。
「なるほど。地下アイドルと言っても、スケジュールがハードだとデートどころじゃないよな。おまけに恋愛してることを隠し通さなければならないから彼女さん、けっこうつらいかもな。別に別れなさいとは言わないけど、しばらく我慢の時が続くと僕は思う。」
深刻そうな表情をしながら鳥羽くんは小さな声でこう話す。
「我慢の時が続きそうなんですね。確かにアイドルしてて恋人がいることが分かると周りから叩かれますもんね。すごく今、不安なんです。プライベートも野球もつまづいてまして。」
この話を聞いて望月守投手コーチは、鳥羽くんにやんわりとアドバイスする。
「まずは頑張って野球に専念したらどうだ?と言っても簡単には気持ちの切り替えはむずかしいと思う。それなら明日は午前の練習を休んで気分転換してきたらどうだ?このまま練習したって無意味だ。もし、サボってるように思うのなら、元気を取り戻して午後の練習で一杯頑張れば良い。」
鳥羽くんは軽く深呼吸をしてからこういった。
「そうですね。このままがむしゃらに練習するよりかは気分転換も大事ですよね。分かりました。明日、半日気分転換してきます」
こうして鳥羽くんは半日、練習を休んで気分転換をすることにしたのである。
その頃、私はアイドルライブのレッスンをしたりメンバーと交流を深めるために散歩したりしていた。
そして同じくメンバーである栄川さんが私に質問をしてくる。
「そう言えば望月さん、明日はいよいよ定期公演があるけど私たち初参戦よ!何か自己紹介の時にトークのネタとかって考えてたりする?」
「うーん。特に考えられていないかなぁ。何を話せば良いのか、全く分からなくて。栄川さんは何かトークネタってあったりするの?」
私は自分が思ったことをそのまま栄川さんに苦笑いしながらも話していく。
「うーん。その時に話したいなって思うことを話すかな。やっぱり自然体のほうがトークは弾みやすいかなって思うから」
栄川さんの話を聞いて私は2度ほど頷いてからこう言った。
「確かに自然体は大事だね。ファンの人に楽しんでもらえるトークでないと意味ないよね。私もトークの時は自然体で行ってみようかな。」




