第10話「勇気を振り絞って」
鳥羽くんは、舞桜さんとの電話をきった後、ベットの上で寝転がりながら険しい表情でこう思っていた。
『電話では意地はって大丈夫って言ってみたけど、正直不安なんだよな。このまま麻友ちゃんとの距離が遠くなってしまったらどうしよう。僕は麻友ちゃんから見捨てられるんかな?それで麻友ちゃんは他の男と付き合ったりしてしまうのかな。』
その頃、舞桜さんは仕事を再開する前に更衣室の中でこう思っていた。
『うーん。これはチャンスかもしれない。時間をかければ鳥羽くんは私の方に振り向いてくれるかも!よし、ワンチャン狙おう。』
数日後、鳥羽くんは休日に思い切って私にデートに誘う決意をし、思い切って電話をかけてみる。
『デートしてくれるって言ってくれたら大丈夫だ!』
その思いが届くことを願いながら発信すると4回くらい鳴らしてから望月さんが電話に出てくれる。
「もしもし、遥樹くん久しぶり!どうしたの?」
「麻友ちゃん、久しぶり!もし良かったら近いうちに久々にデートしない?最近出来ていなかったからたまにはどうかなって思ったりして。」
鳥羽くんは勇気を振り絞ってデートの誘いをする。
しかし望月さんの心境は複雑そうな感じで、やや暗めの声でこう言った。
「うーん。デートしたいんだけど明日から4日間連続で対バンライブに出演が決まってるの。それで休める日も少なくなりそうだから、来月で良かったら考えるけど。」
鳥羽くんは何とも言えない気持ちでやんわりと返事を返していく。
「そうか。アイドルは大変だからな。来月でも良いから前向きに考えてくれると嬉しいかな。」
すると望月さんは、少し明るそうな声で返事をする。
「分かった。来月にはどこかでデートしよう!なかなかできなくてごめんね。」
来月にデートをする約束をしてから電話は終了したのだが、鳥羽くんの中ではモヤモヤする気持ちが出てくる一方であった。
『アイドルで忙しいのは分かるけど、ちょっとくらい時間作ってくれてもいいんじゃないの?僕だって来月は二軍再昇格をかけたテストがあるのに。なんか野球もプライベートもモヤモヤだらけだな。』
その頃、私は電話を終了した後、険しい表情をしながらこう思っていた。
『私だってデートしたいけど、よく考えてからでないと周りにバレたりしたら事務所から解雇されるかもしれないし。それにファンにも裏切るようなことになりかねないから、そう簡単には行かないことを遥樹くんには分かってほしいよ。』




