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彼について質問したが  八日目

 親愛なる我が従弟殿。


 昨日の続きで、またオーリチについて書こうと思う。

 ……どこまで書いたかな。そう、彼の中に私への反感があるような気がした、という話だ。


 寡黙かもくで常に怒ったような顔つきの彼の心中がどうにも分からず、私はここでの暮らしについて様子を尋ねていらした猊下に、思い切って訊いてみたんだ。

 そもそも彼は何者なのか。

 どのような意図で猊下は彼を選ばれたのか。


 猊下はしばし私の顔をご覧になられてから、静かにこう仰せられた。

「……お側に置かれる相手の素性に疑問を持たれるのが、少々遅いのでは?」


 いったいいつお尋ねになられるのやらと思っておりました、とまで言われてしまった。

 大人って厭だなぁと思ったことは、ここだけの秘密にしてほしい。

 あらかじめ用意された罠に経験不足の標的(私のことだ)がかかるのを、虎視眈々と、けれど何食わぬ顔で待ち構えているのだから。


 領地にいた頃、私の側近は母上や傅役もりやくが吟味に吟味を重ねて選んでくれていたのだろうと、今となっては思う。

 けれどどちらもいない今、私は自分でやらなければならない。

 そのことを猊下はお示しくださったわけなんだ。

 とはいえ、有難く思う一方、はじめからそう言ってほしい、という気持ちが私の中で渦巻くのも止められなかった。


 私は八つ当たりと紙一重の気持ちを飲み込んで、猊下の御前で自らの改善をバルサムに誓った。それでようやく猊下から本題の問いについて伺うことができたよ。


 オーリチは名門ラングワート家の出身だった。

 ラングワートは君も知っているよね? エールコスト侯の一族で、陛下に最も忠実であるとも謳われる一門だ。


 当然、陛下に反旗をひるがえしたとされる我が父上と、その嗣子ししである私への印象は、あの一族からしたら最悪だろう。

 猊下の庇護のもと、投獄されるでもなくのうのうと過ごす私など、厭わしい存在と思われていても不思議はない。


 ところが、納得しかけた私に猊下はさらに仰ったんだ。

「貴方の中で勝手に結論づけてはなりません」


 ……それがどういうことだったのか。それから私が猊下に尋ねたもう一つの質問については、またの機会に書くことにするよ。

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