無愛想な従者について 七日目
親愛なる我が従弟殿。
昨日書いた通り、今日は私の身の回りの世話をしてくれている、オーリチについての話をしよう。
ここに預けられる際、私の領地であるラヴィッジや、父上から引き継いだばかりのウォータークレスから、家臣や使用人を連れてくることは許されなかった。
代わりに、猊下が付けてくれたのがオーリチだ。
彼は元々猊下の近侍を務めている修道僧のひとりだったらしい。引き合わされたとき、彼はにこりともしなくて、とても厭そうに見えた。
でもまあ、それは無理もないかと思ったよ。
教会の地位争いは熾烈だ。猊下のお側を離れ、私のような咎人の世話役なんて、なんの旨味もないどころか左遷とも取れるからね。
そういう意味では気の毒かなと思って、ご自身の近侍を付けてくださったご厚意についてはそのお気持ちだけ受け取って、中枢に関わりのない修道僧に代えていただけるよう、猊下に打診することをオーリチに提案してみた。
……結果、なぜか睨まれたので、その話は無しにしたよ。
よく分からないまま、私の僧院生活は始まったんだ。
彼は表情こそどうかと思ったけれど、仕事ぶりは堅実だし丁寧だった。私が口にするものは毒見をしてくれるし、私の食が細くなったり夢見が悪そうなときには薬草茶を淹れてくれたりもした。
本当に役目が厭だったら、多分そこまではしないのでは、と思うくらい彼は気を配ってくれていて、私は従者としての彼を信頼するようになった。
けれど、やはり彼のふとした表情や目の奥のゆらぎに、どこか私に対する反感のようなものが微かに感じられて、それがなぜなのか気になった。
――さて、そのオーリチが、いつものように香草茶を淹れて運んできてくれた。
有難く頂いて、そろそろ寝むとするよ。続きはまた明日。
ああ、今日は食事も減らすことなく出してくれたよ。ただ僧院の献立にはもう、林檎がなかったけれどね。
今夜のお茶は加密列だ。なおさら林檎のことが思い出されたけれど、口に含んだら珍しく甘みがあった……蜂蜜を入れてくれたらしい。
結果的に一口しか食べられなかった、林檎煮の代わりなのだろうか。
貴重品だろうに、よく厨房が許してくれたものだと思う。