抜け駆けへのお仕置き 六日目
親愛なる我が従弟殿。
まずは今日、私に供された食事を書こう。
・カブの酢漬け。
・白ニンジンと豆のスープ。
以上。
……べつにここが僧院だから質素という話じゃないんだ。国中から寄進が集まるケンプフェリアは、基本的に裕福だからね。
何より、昨日あれほどたくさん煮られていた林檎が、私の前には影も形もない。
貯蔵用だと言われればそうだろうけれど、ああいうものは作った直後、一度くらいは食卓に出されるものじゃないかと思うんだ。……というか、私の席に無いだけで、広間全体には他の料理の匂いに混じって、昨日と同じ林檎の香りが漂っている。
そう、私にだけ、出されていなかったんだ。
あからさまに私の前がやけに寂しいテーブルを見渡してから、後ろに控えていた従者のオーリチに「これだけ?」と訊いてしまった。彼はじろりと私を見下ろして、「貴方は昨日召し上がったでしょう。抜け駆けして」と答えたんだ。
オーリチは寡黙で、普段から怒ったような顔つきをしているから気付かなかったけれど、昨日私が彼を捲いて脱走したことをまだ怒っていたらしい。
一生酢漬けだけ食べていろ、とでも言いたげな口調だった。
林檎に加えてしっかり肉まで抜かれているところに、彼の怒りの深さが見て取れた。
……ほとんど野菜の酢漬けしか食べてないから、もうお腹が空いてきてしまった。オーリチにそう言ったところで何も出してはくれないだろうし、観念して今日は早めに寝むことにするよ。
そうだね、明日はオーリチについて書いてみようかな。