表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラベラー  作者: 北丘淳士
4/28

チャットルーム


『小次郎さんが入室されました』

 

 以前、可南子が教えてくれたチャットルームだ。

 他のサイトを循環しながらそのサイトを訪れる仲間を待った。以前は盛況だったらしいが、今は随分と過疎化が進んだチャットルームだ。だが夜の八時に入ってくるメンバーが気に入っていて、だんだんルーティンになってきている。

 ちなみに可南子はサイトを教えるだけ教えて、自身は参加していない。相変わらず気ままなやつだ。


『光さんが入室されました』


小――今晩は、光さん

光――やあ、小次郎さん今日はまだ一人?

小――このサイト、すっかり過疎化しちゃいましたね

光――それか、違う時間に盛り上がってるのかもね~

小――光さん、何か良いことあったんですか

光――えっ! なんで?

小――いや、なんだか文字から嬉しさが滲んでいるんですが

光――文字から感情が読めるなんて、さてはプロだな

小――プロって、何の

光――バイト代はたいて、新しいモデルガンを買ったのさ

小――またですか! いくらしたんですか?

光――二万五千円! M93Rっていうガスガンさ。かわいいなぁ、こいつ~~

小――銃を片手にチャットしているんですか? 器用ですね……

 銃を抱きしめながらチャットしている十九歳が俺の頭に浮かんだ。

 

『猫五郎さんが入室されました』


光――おっつー、猫さん

小――お疲れ様です、猫さん

猫――どうも~

小――最近面白いサイト見つけましたか?

 猫さんはネットのヘビーユーザーらしく、時折面白いサイトのURLを落としていってくれる。光さんと同じ歳らしい。

猫――丁度不思議なサイトを発見したよ。でもウィルスに感染しても知らないよー

小――不思議なサイトですか、ちょっと怖いですね……

光――俺は新しい銃の試し打ちに励みますので、この辺で落ちま~す

小――お疲れさまでした

猫――乙~


『光さんが退室されました』


小――僕も猫さんのサイトを見てきますんで

猫――乙~


『小次郎さんが退室されました』


 俺は、先程『猫五郎』さんから教えてもらったサイトに飛んでみた。プロバイダーの資料には一応堅牢なウィルス対策はしているつもりらしいので、大丈夫だろう。ネット初心者の俺は、ハイパーリンクが貼ってあるそのURLを、何気なくクリックした。そのサイトは、ある画像の下に入力フォーム、エンターキーとキャンセルキーが置かれたシンプルなものだった。その画像はある二つの旗がせめぎあっている様に見えた。

 そして入力フォームは半角英数で12文字の制限。当然何を入力したら良いのか分からない。色々と数字や文字を打ち込んで見たものの、全く解錠しない。

 当たり前だ。そんな簡単に開錠できたらパスワードの意味がない。3回連続でパスワードを間違えると、その日は入力出来なくなった。結局その日はそのサイトをブックマークして、後はガーラ戦記の続きを読みながら寝落ちしてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ