質疑応答
「まず一つは、単純にどうやってタイムマシンを成功することが出来たのかだ」
「文系なのに、そんなこと聞きたいの? うーん……」と唸る可南子は、しばし間を置き「籐四郎、いいや、ご先祖様には分かりやすく丁寧に言うわね」
「あ、ああ……」可南子から『ご先祖様』と呼ばれたことに、ものすごい違和感を感じる。
「まずこれからAIのシンギュラリティが加速していくの。私たち人類から科学という探求心を奪ったのはご先祖様の時代から始まるわ。そしてそのAIはホジャバ・リフシッツ理論にたどり着いた。つまりアインシュタインの理論の破棄、いやアインシュタインの理論がホジャバ・リフシッツ理論に取り込まれたわけ」
……可南子の口から、聞いたことの無い言葉が流れ始める。彼女の口調はさらに滑らかに加速していく。
「それでAIは原子番号138、リッケニウムをベースとした合金を光速運動させることでホジャバ・リフシッツ理論を基礎とした外宇宙統一理論を証明したの。すなわち、この宇宙に宇宙定数Ωの違う空間を発生させることが出来ることを発見したのよ。これが24世紀。そして宇宙定数Ωのコントロールが出来ることを私たちが産み出したAIが……」
「ああ~~っ!! もういいっ!!」
「はあっ? ここからが感動する話なのに!」
あまり未来の話をしては、いけないんじゃないのか! というツッコミも消えうせる。
「教えてくれ! 俺はこれからどうすればいいんだ?」
「ふふっ。学校の屋上で寝ていたときより、目が輝いているわ。卵が先か鶏が先かなんだけど、ご先祖様はもう何もしなくていいの。これからもアリシアさんと仲良くすればね」
それはダーウィンの進化論だけど……と、喉元まで出かかったが無理矢理押さえ込んだ。下手に指摘すると、またノートの角で叩かれる。未来人っていっても完璧ではないんだな、と思った。
「アリシアさんと会って結婚することで運命は自動的に回る。あっ、アリシアさんに言ってほしいけど、育児と生活はご先祖様……、籐四郎の時代でやってくれる?」
「俺がもしアリシアと結婚しなければ?」
「私や父さんが存在する確率が0になるわね。そうなるとタイムマシンが発明できない。すると藤四郎がアリシアさんと出会うことがなくなる」
その言葉に俺は唖然とした。
結婚しなければアリシアと出会うことがなくなる??
ふと、流れとは関係ない事が脳裏をよぎった。
「あ、明日は学校に来るのか?」
「そうねぇ、まだ分からないわ。今のところは大丈夫そうだけど、ご先祖様たちが今後うまくいくかどうか見ておきたい、ってのもあるし」
今まで他の女子を寄せ付けないように一緒に食事していたのは、その為だったのか。
おおよそを話した可南子は、ウインクをしながら皓皓とした未来の扉へ戻っていこうとしていた。
「可南子! まだ質問がある!」
「なぁに? もう何個目よ」
「三百年後の世界はどうなっているんだ?」これは好奇心から出た言葉だった。
「三百年後ねぇ」可南子は少しもったいぶった調子で話し出した。「化石燃料とレアアースの枯渇、もう止められない温暖化に人口爆発。それを考えたら、ある程度分かるんじゃないかしら。私がこんな窮屈なスーツを着て、今どれほど地球が荒涼としているかが……。じゃあね、ご先祖様! タイムマシンのことは周りの人には内緒ね!」可南子は強い光が漏れる扉に駆けて行き、彼女が入ると自動的に閉じた。
俺とアリシアはそれを呆然と見送っていた。




