驚嘆
『ここはどこっ!?』
抱きかかえていたアリシアを畳の上に下ろしながら、俺は答える。『ここは……、俺の、家なんだ』
『ここがトウシロウの住んでいる家……途中から何かおかしいと思っていたわ。いつも不思議な格好をしているし、野宿ばっかりしているのかと思ったら……、こんなところに住んでいたのね……』
アリシアは八畳一間の部屋を、しばらく呆然と見ながら言う。和室の清潔なベッドや、コンパクトな机、パソコン、本棚しかない、ごく普通の現代の十六歳の部屋だ。だが恐怖心が湧き上がったのか、その身を俺に寄せてくる。外だったので分からなかったが、アリシアの良い匂いがする。
『……うん、今まで言えなくて、ごめん』
靴を脱いだ俺はパソコンに向かうと、アリシアは腕を掴んできた。この部屋の存在が怖いのだろう。サイトのキャンセルボタンを一度押すと、窓の景色も元に戻った。シーリングライトが放つ光が目立ち、アリシアは呆然とそのライトを眺める。
『明るい……、まるで昼のよう……』
俺がいるからか、少しずつこの部屋に慣れてきたアリシアの興味は、窓の外に向けられた。時計を見ると、もうすぐ夜の十時を回ろうかという頃だった。
俺の腕から手を離したアリシアは、半開きのカーテンから覗く景色を見た。
『すごい……、初めて見るわ、こんな光景』
初めて見る現代の住宅街をアリシアは呆然と立ちすくみ、眺めていた。
息を整えた俺は、汗を拭いながら、もう誤魔化せない真実を話した。
『ここはアリシアの住んでいる時代から、五百年後の世界なんだ』そして俺は呆けているアリシアに最初から正直に話した。
『五百年後……、凄いわ。ホントなの? 凄いわ!』
そしてアリシアはラグから本棚にある本まで、感嘆と好奇の目で隅々を見たり触ったりしていた。瞬きを忘れるように俺の部屋を漁る彼女は、何度も何度も感嘆の言葉を口にした。相当のカルチャーショックだったのだろう。
汗を拭ったタオルを畳んでベッドに置き、ようやく落ち着いた俺は、立ったままパソコンに向かい、いつものチャットルームにログインした。
『小次郎さんが入室されました』
『何それ!? どうなっているの?』俺の腕を抱き締めるように隣に立ったアリシアは、ウィンドウが映し出されるディスプレイを凝視している。
『これはパソコンっていうんだ。後で教えるよ』アリシアに説明する時間を惜しみ、俺はマウスを動かし、猫五郎さんがすでに入室していたチャットルームに文字を入力した。
小――こんにちは、猫さん、さっき日本刀を投げてくれたのは猫さんですよね。ありがとうございました
猫――いえいえ~
小――アリシア……、助けた彼女なんですが、礼を言っています
猫――仲間を放っておくわけにはいかないですからね
小――光さんはまだですか?
猫――そうだね。まだ制圧の後始末やっているのかな
小――ところで猫さん
猫――なーに?
小――あのサイト、そしてタイムマシン。さらに刀を投げて寄越したのは、可南子だな。思わず俺の名前を言ってしまったのは、ミスだったな




