仲間
『まずい。このままじゃ、本当にこの街が終わってしまう』そう呟いた時、この時代にはそぐわない、パパパと乾いた小気味の良い音が響いた。キースは、その音のする方を向いた。俺も木剣を中段に構えたまま視線をよこす。
迷彩服に身を包み、銃を構えた男が、控え室から出てきた。ゴーグルを上げてその男は言う。
「やぁ、君が小次郎君か! 思ってたより良い男じゃないか、はははっ」
その男は俺のハンドルネームを言いながら近づいてくる。
「ひょっとして……光さん?」
「おうよ。チャットにあんな熱い言葉を残して、手助けしたくなるじゃんか。それより状況的にヤバそうなんだけど、剣を持って暴れている連中を取り押さえれば良いんだろ。そいつはどうする?」
「こいつは俺が何とかします!」俺は意識をキースに向けたまま答えた。
「分かった」サムズアップした光さんは、トランシーバーらしきものに「よーし、チームブラボー! 盗賊退治だ!!」と言って踵を返し、街中へと小走りで走って行った。
『助っ人が来ても、あんな武器じゃ俺たちには敵わないぞ』再びキースは剣先を殺意と共に向けてきた。
キースは剣を上段に構え、今まさに振りかぶろうとしていた。俺は何とかキースの振り落としを、かろうじて木剣でいなした。それだけで木剣は壊れた。たとえ背中に背負っている竹刀でも、同じ結果になるだろう。俺はキースに背を向け城下町まで走った。
街に散らばった他の盗賊らは、大会のため鎧を脱いだのがアダになったようで、光さん率いるサバゲー部隊のガスガンの餌食になっていた。そして行動不能になった盗賊を後ろ手に取り押さえて、手際よくビニールバンドで拘束していた。
キースが追い付く前に、盗賊が落とした剣を拾い上げ構えた。手に取った西洋の剣は想像以上に重い。『日本刀は腰で斬る』と父から教わっていたが、この鞘のない剣の使い方が分からなかった。追い付いたキースに対し、テコの原理や遠心力、体重を利用して振るも弾かれる。キースの嗜虐的な笑みが彼我の二つの剣を通して見える。
『どうやら真剣の方は素人のようだな』徐々に鎮圧されていく盗賊たちよりも、キースの意識は俺だけに向けられているようだ。持ってきた竹刀は役に立ちそうもない。金属の棒なら何でもいい。もうちょっと軽い得物が欲しい。かろうじて防御しながらも、かすり傷程度だが攻撃を受け始めた。そのままじりじりと下がっていくと、壁が背中に着く。
追い込まれた。
キースは更に嗜虐の色をその眸に表し、大きく剣を振りかぶった。
左右どちらかに逃げようと一瞬迷った瞬間、正面の建物の上から聞いたことも無い女性の声で「籐四郎!」と声がした。その声と共に一本の刀が俺の近くに投げ込まれた。俺はキースの一太刀を反射的に横に飛びながら避け、転がるようにその刀を手に取る。前転しながらちらっと見たのだが、誰が投げたのは逆光で見えなかった。何とか体勢を整え次のキースの一撃を寸でのところで避けた。




