仲間と決意
『小次郎さんが入室しました』
小――こんばんは
光――こんばんは~小次郎君
小――どーでした? 光さん
光――どーもこーも、森しかないじゃん。出会いがないじゃん
小――あー、やっぱり
光――でもすぐに大自然の中に行けるから、今度サバゲー仲間呼んで行ってみようかな
小――迷って帰れなくならないよう気をつけてくださいよ~。ただでさえここのメンバー少ないんですから
光――そっちの心配!?
『猫五郎さんが入室しました』
猫――こんばんは
光――こんばんは~猫さん
小――猫さんは行ったんですか? 例のサイト
猫――行ってみたけど、森しかなかったから、すぐに引き返したよ。基本出不精だから。ところで、小次郎君は、その女の子とうまくいっているの?
小――うーん、あまりうまくいってないですね、多分
光――当たって砕けろだ。拝み倒せ! 青年!
小――光さんも青年じゃないですか
光――えへー
小――当たって砕けろか。……そうですね。俺、行ってみます!
猫――頑張れ
光――頑張ってこい!
『小次郎さんが退室されました』
俺はいつものサイトに移動した。時間を入力し、エンターキーを押す。
いつもの小道を登って、アリシアの待つ泉へと向う。
告白するんだ、事の次第によっては歴史が変わってしまうかもしれないが、自分の気持ちを伝えたい。そう自分に言い聞かせながら、歩を進める。この時の俺は感情が振り切れていたのだろう。そしてせせらぎの音が近くなるにつれ鼓動が激しくなる。ひょっとしたら現代のことも教えなくてはならなくなる時が来るかもしれない。そこの曲がり角を曲がれば、アリシアがいる。俺は一度深呼吸してその道を曲がった。
そこには、いつもいるはずのアリシアの姿は無かった。
『アリシア?』俺は何度となく呼んでみる。だが梨のつぶてだ。俺の声が空しく森に吸収される。いつもアリシアと座っていた切り株の上に、紙が置いてあった。風で飛ばないようにか、小石がのっている。羊皮紙と思われるその紙には、文字が書いてあった。
『トウシロウへ
この手紙、見つけてくれたかな? 今までありがとう。異国の話しが聞けてとても面白かった。
どこの誰とも分からない他人と、私は結婚します。
本当はあなたの様な優しい人と結婚したかったけど、貴族の娘という立場上、それも叶わない。あなたと会えた数ヶ月間、本当に刺激的で楽しかった。
好きでした。もしまた会う機会があったら、異国の話を教えてください。
アリシア』
手紙の後半のインクは滲んでいた。おそらくアリシアの涙だろう。アリシアは俺のことが好きだったのか……。好きな人と結ばれずに赤の他人と結婚させられるなんて、絶対おかしい。手紙を握り潰し、俺は走って自分の部屋へと戻った。色々と問題があるだろうが、俺の決意は止まらなかった。自分の部屋に飛び込むなり、竹刀袋に入った竹刀を袈裟懸けに背負い、そしてチャットルームに飛び、万が一帰れなくなった場合のためメッセージを残した。
『小次郎さんが入室しました』
小――彼女を、アリシアを助けに行ってきます。しばらく留守にします。 145206231130 小次郎
『小次郎さんが退室しました』




