発覚
少しずつ強くなる太陽の光が、部屋に差し込む頃、底冷えで目が覚めた。床といえど石の上なので、体温を奪われ身体の芯まで冷えている。家に帰って熱いシャワーが浴びたくなり、まだ寝ているアリシアを起こさないように、俺は荷物を持って、ゆっくり扉を開けて廊下に出た。
まだこの城の構造は把握して無いため、うろうろしていると、『どうされましたか、トウシロウ殿』と、背後から声をかけられた。ビックリして振り向くと、髪の色と同じ、くすんだ金色の甲冑を身に包んだローランドが歩いてきた。
『あー、ちょっと迷いまして……』
ローランドはアルカイックスマイルで言う。『御嬢様は、どうなされましたか?』
『それが……、昨日は一緒に飲んだのですが、まだベッドに寝ていると思います。あっ! 別に手は出していませんよ』慌てる俺の言葉に、ローランドは口角を上げた。
『それでは、私が一階の城門まで案内いたします。そこからは、御一人でも大丈夫でしょう』
頷いた俺はローランドの後をついていった。ローランドはチラチラと俺を振り返りながら先を行く。そして途中、踊り場で足を止め、俺の目を見ながら聞いてきた。
『トウシロウ殿、剣術はどちらで習われたんですか?』
『剣術……何のことですか?』
俺はとっさに嘯いた。なぜ分かったんだろう。答えない俺に、ローランドはもう一度問う。
『その御手の剣ダコは、相当打ち込まないと出来ない厚みですね』
俺は自分の掌を見た。これを見られたらしょうがない。俺はばつの悪い気持ちになって彼に話した。
『……物心がついた頃から刀は振っています。もっぱら今は使う機会がないですけどね』
『カタナ……ですか? そうですね。この地が平和になってから、剣を揮う機会はめっきり減りましたからね。私達近衛兵も戦が無くなって、今は三十名ほどしかいません。その部下に時折、稽古をつけているのですが、なんともセンスや根性が無い』少し残念そうに呟きながら、ローランドは再び鎧の擦れる音を立てながら階段を降りていく。彼は前を向いたまま言った。『トウシロウ殿、失礼ですが私と一手願えませんか?』
『いえ、とんでもない! 俺は旅人です。剣技は護身用のためですので、人に見せられる物ではありません』
立ち止まって振り返り、整った顎にしばらく手を置いていたローランドだったが、やがて微かに笑みを浮かべながら言った。
『そうですね。姫様の御客人になにかあると、私の馘が吹っ飛びます。失礼しました。私が話したことは御嬢様には御内密にお願いします』
爽やかな笑顔で一礼した以降、ローランドは無口になり、俺を一階の見知った場所まで案内してくれた。
『あ、ここで大丈夫です』
『いえいえ、門までお送りしますよ』
俺はしばらく逡巡したが、『……あ、じゃあお願いします』と好意に甘えることにした。動いたせいか、少しずつ体温も元に戻ってきた。ローランドと門兵に手を振って俺は城を後にした。




