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81 竜神王ドラドムート

 真っ青に広がる空のど真ん中に突如姿を現した漆黒のドラゴン――。


 その異質な存在感に圧倒された俺達は完全に言葉を失ってしまった。


「元気そうで良かった、ドラドムート」

「ヒッヒッヒッ。手間を掛けさせる奴だねぇ」


 ハクとイヴは空に浮かぶ黒龍と当たり前の様に言葉を交わす。


 コレが黒龍……そしてこの黒龍こそが3神柱最後の神である『竜神王ドラドムート』なのか。


 頭では理解出来ているけど言葉が出なくて体も動かない。ただ目の前の圧倒的な存在に度肝を抜かれていた。


「主達のお陰でようやく目覚める事が出来た。まさかここまで我らの力が弱体してしまうとはな」

「そうね。深淵神アビスの力がここにきて想像以上に強まっている。それに比べて私達はまんまと彼女の思惑通り力が弱められてしまったわ」

「今更そんな事をブツブツ言っていてもしょうがないだろう。全ては分かっていた事。その為にこっちだって種を撒いておいたんだからねぇ」


 イヴは俺達に視線を移しながらそう言った。すると、黒龍を見て固まっている俺達にドラドムートが声を掛けてきたのだった。


「ようやく会えたな。世界を救う選ばれし者達よ――」


 まだ実感が湧かない。まさかあのドラゴンに話し掛けられているなんて。


「何時までボケっと口を開いているんだいアンタ達は」

「いや……だってドラゴンなんて初めて見たし……」


 戸惑いを見せる俺達を他所に、ドラドムートは流暢に会話を続けていった。


「シシガミの力を与えらしフーリン・イデント。そしてイヴの力を与えられしエミリア・シールベス。主達は見事自分の真の力を手に入れられた様だな。ここまでの道のりは極めて困難であっただろうが、それを乗り越えて来た主達は間違いなく他の者達より強い。

我ら3神柱の力となり共に戦ってくれている事を誠に感謝する――」


 竜神王ドラドムートの言葉に、エミリアとフーリンは感銘を受けた様子で静かに頷いていた。


「そして我の力を与えたグリム・レオハートよ。主とはずっと共に暮らしていたが、こうして直接会うのは初めてであるな」

「あ、ああ……」


 俺はドラドムートが世界樹エデンなんて全く知る由もなかった。毎日毎日当たり前の様に住み暮らしていた樹が神だったなんて、それも今こうして面と向かって話しているのが何とも言えない不思議な感覚だ。


「この世界の数百年後の未来を知った時、我は世界を救うグリム・レオハートという人間がとても気になっていた。どのような存在であるのかとな。

それから月日が流れ、主はこの辺境の森にやってきた。我は主が森で過ごした過酷な歳月を1番近くで見る事が出来たと同時に、この子ならば必ず世界を救えると確信が持てた。

だが我の力を与えた事によって主にはかなり酷な人生を歩ませてしまったな。本当にすまない。直ぐに許せるものではないが、改めてこの場で詫びをさせてもらうぞグリム」


 そう言うと、下に降り立ったドラドムートはその大きな体を限りなく屈めて頭を低くした。


 確かに、俺は何も知らずにこの力を与えられた。特殊な力のせいで周りの人達から馬鹿にされ嘲笑われ虐げられ、家族にも王国にも見放されたんだ。そしてそんな俺に手を差し伸べてくれる人もまた誰1人としていなかった。


 将来は父親の様な最強の剣聖になる事を信じて疑わなかった俺にとって、自分が歩んできた人生は想像だにしなかった絶望の連続だ。何故こうなってしまったんだと本当に自分の人生を恨んだ。


 今目の前にはその答えがある。

 眼前で突如俺に詫びを告げてきたこの黒龍が全ての始まりだ。彼が俺に勝手に力を与えたからこうなった。全てを失い、死をも受け入れるまでに。


「そっか、そうだよな……。何となく忘れてたけど、元はと言えば“全部”お前のせいなんだよな」


 俺は無意識にそう言葉を漏らしていた。

 まさか俺の口からそんな言葉が出るとは思っていなかったのか、皆が不意に俺の方を向いた同時に妙な緊張感みたいなものが生じていた。


「ああ。力を与えた事によって、主の先の人生がどうなるかまでは我でも知り得なかった。だがそんな事は言い訳に過ぎぬ。結果が全てであるからな」

「成程な。分かった。なんかさ、今改めてお前の口から聞かされたら今までの事一気に全部思い出して嫌になってきたな俺」

「え、グリム……?」

「主がそう思うならそれが正しい答えだ。我らが力を与えた事は我らの勝手。それを拒否するのもまたグリムの勝手であるからな」


 そこまで言葉を交えた瞬間、俺はある1つの答えに辿り着いた。


「そっか、じゃあ嫌になったからここで辞めるって事でも文句は言わないよな?」

「ああ」

「ちょ、ちょっとグリム! 何言い出してるのよ!」

「良いのだ。主が出した答えならばそれが正しい。何人も否定する権利はない」


 ドラドムートはエミリアをなだめ、偽りない言葉で俺にそう告げて来た。


 だが、何だか思った以上に空気が緊迫してしまった。


「ハハハハ、冗談だよ!」


 俺の笑い声を聞いた瞬間、エミリアはきょとんした表情を浮かべた。


「俺は別にお前に恨みなんてないよドラドムート。何を言い出すかと思ったら急に謝ってくるんだもん。驚いたぜ」

「グリム……」

「謝ってもらう必要なんてない。寧ろ俺は感謝してる。言っただろ? 全部お前のせいだって。お前の力のお陰で俺は確かに思い描いていた人生とは全く違う道を歩んだけど、そのお陰で俺はハクと出会ってまた外の世界に出る事が出来た。


俺は色んな人と出会って触れ合えて、今こうして仲間と一緒に家に帰って来ている。それもこれも全てはお前のお陰なんだよドラドムート。ありがとう! お前が力を与える先を俺に選んでくれて――」


 俺は心の底からドラドムートに感謝した。


 辛い事も確かにあったけど、それ以上に多くのものを俺は得た。


「一緒に深淵神アビスを倒して、世界を終焉の手から守ろうぜドラドムート!」

「やはり主で間違いなかった様だ。我も心から感謝するぞ、グリムよ――」


 改めて互いの存在を認め合った俺とドラドムート。これで俺達と3神柱が全員揃った。深淵神アビスの復活も近くなり、俺達には自然と結託感が強く生まれていた。皆世界を救いたいという気持ちは同じ。後は全ての元凶である深淵神アビスを倒すのみだ。


 そう俺達皆が思っていた時、そこに突如、1つの声が響き渡った。







「ハハハハ! やっと見つけた。また会えて嬉しいよ“兄さん”――」


 突如響き渡ったこの主。


 それは恐らく現時点でリューティス王国最強であろう『神剣ジークフリード』に選ばれし七聖天が1人、ヴィル・レオハートであった――。

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