表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/110

70 神の特別指導・9日目&ジニ王国

♢♦♢


~ジニ王国~


「準備はいいか? ジニ王国に入るぞ――」

「いや……少し休ませてくれ……」

「あの程度で動けなくなるとは情けないねぇホントに」

「じゃあ先に私が行って様子を見て来るわ。ジニ王国に“異変”が起きているなら尚更その方がいいわ。グリム達はその間に少しでも休んでいて」

「ありがとう……ハクちゃん」

「やれやれ。アンタは甘いねぇシシガミ」


 そんな会話が終えると、ハクは現状を確認するべくジニ王国へ偵察に入った。


「今の内にしっかり体力戻しな。恐らく平和に事は進まない。何時でもやり合える準備をしておくんだねぇ。ヒッヒッヒッ」


 こんな状況でも笑っているイヴ。


 だが俺達は到底そんな気分ではない。


 思い返せば3日前、ウェスパシア様の予知夢の話を聞いてから今に至るまで、それはもう怒涛の日々でほぼ記憶がない――。


 何してたんだっけ……?


 俺は今、搾り取られた体力を必死に回復させながらこの3日間の事を思い返していた。


 確かにウェスパシア様の予知夢の話を聞いた事は覚えている。始まりはジニ王国に現れたというラグナレクが魔人達を率いてローロマロ王国を襲った事。そして、その時まだラグナレクの存在を認知していなかったヘラクレスさん達はラグナレクを倒したと思っていたが、恐らく倒されたラグナレクは核が破壊されなかった為に復活してしまったんだ。


 それから数日経ち、ヘラクレスさん達にラグナレクが更にパワーアップして復活したという情報が入り、同時にウェスパシア様は予知夢でこのラグナレクがローロマロ王国を壊滅させてしまうという事を知った。


 予知夢で見た事は絶対に起こる――。


 だが、ウェスパシア様のその長い人生でも予知夢はこれまでに何十回と見てきたそうだが、“予知夢を変える予知夢”というものはたった2回しか見た事が無いらしい。どういう運命の巡り合わせだろうか。その1回目がイヴと出会った時であり、2回目がまさに今回との事。またしてもイヴが出てきたと嬉しそうにウェスパシア様が言っていた。


 そして結論、ジニ王国にいるラグナレクを倒さなければならないと分かった俺達は何故か不敵に笑い出すイヴと共にローロマロ王国を出発したんだ。


 しかし、ここからが壮絶だった。


 ローロマロ王国からジニ王国までの距離は徒歩で約3日。馬ならもっと早いし、イヴの転移魔法なら一瞬だった。だけどここからイヴが不敵に微笑んでいた理由が解明されていく――。


 話を振り出しに戻すと俺達はそもそもエネルギーの流れの特訓をしていた。ジニ王国のラグナレクも倒さなければいけないが、何より俺達の最終目的は深淵神アビスを倒す事。その為に今より強くなる必要があった。今回のウェスパシア様の予知夢は俺達にとって予想外の事態となったが、どの道特訓は続いていただろう。


 イヴが何処まで考えて発言したのかは定かではないが、予知夢を覆せないと分かっていたイヴはそれすらも利用したのだ。転移魔法なら一瞬で行けるにも関わらず、引き続き俺達へ特別指導を施す為にわざわざ3日も掛かる徒歩でジニ王国に向かうと言い出した。


 そしてこの3日間の道中が地獄だった。


 ジニ王国にラグナレクを倒しに行く為に最初はヘラクレスさん率いる親衛隊も同行しようと話していたのだが、どうやらラグナレクが現れた頃から魔人族の様子が可笑しいとの噂も入っていたらしく、実態を探る為にも最低限の少人数でジニ王国に向かおうとなった。メンバーは俺達に加えてヘラクレスさんのみの計6人で決定したんだ。


 ここからが地獄の始まり。

 道中はイヴが言った通り、ひたすら移動とエネルギーの特訓を朝から晩まで繰り返した。それはもう馬鹿みたいに。このエネルギーの流れと言うのはシンプルながら奥が深く、まともに使える様になったかと思えば更なる課題をイヴとハクが俺達に投げてきた。そして俺達はがむしゃらにそれをこなす。その繰り返しをずっと行っていた。


 俺はこの特別指導の最中、度々思った事がある。


 多分この特訓……俺が辺境の森で過ごした8年よりもキツイんじゃないかって――。


 でもそんな思いに浸っている暇もなかったから、俺とエミリアとフーリンはただひすらにイヴとハクの特別指導を乗り越えた。ただ、唯一大誤算だったのがヘラクレスさんの存在だった。


 彼はローロマロ王国が誇る親衛隊の隊長。ローロマロ王国は俺達が特訓しているエネルギーという力を使う言わばスペシャリスト集団でもある。戦士とも呼ばれる彼らはエネルギーの事を“気”と一般的に呼んでいるらしく、当たり前の如くこの気のコントロールに長けていた。


 親衛隊の実力はリューティス王国の騎士魔法団と同等レベルの実力を持っているそうで、親衛隊の幹部クラスは団長レベル、更に副隊長やヘラクレスさんは七聖天レベルであるとイヴとハクが口を揃えて言っていた。だから確かだろう。実際にヘラクレスさんはかなりの強かった。それが俺の大誤算でもあったけどな。


 貴方のせいで……いや、言葉を間違えた。ヘラクレスさんのお陰もあって特別指導はよりキツい……じゃなくて刺激的で価値のあるものとなったんだ。本当にそう思ってる。確かに思い出したくもない事も多いが、結果的に俺達は見違える程に強くなっている。多分な。早く実力を試したいところだ。


 ここで一旦特訓の件は置いといて、俺はこの道中で気になる出来事が1つあった――。


 それは兼ねてから小耳に挟んでいた“魔人族の異変”の事。これは俺だけでなく皆が気になっている事。ハクが今しがた偵察に行ったのもこれが理由だ。事の発端は昨日、もうジニ王国の傍まで来ていた俺達の元に3人の魔人族がやって来た事が始まり。現れたその魔人族の奴らは何を思ったか、突如俺達に襲い掛かって来た。


 今思い返しても本当に突然で驚いた。仕方なく相手したけれど、魔人族の奴らはまるで“自我を失った”様に話も聞かず暴れていた。ローロマロ王国とジニ王国は度々小競り合いをしている関係でもあったが、通常ならこんな事は有り得ないとヘラクレスさんが言っていた。明らかに彼らの様子が可笑しいと。それは俺達も一目で分かった。


 ジニ王国で何が起こっているのだろうか。


 率直に疑問に思った俺達は、遂にジニ王国へと入ろうとしていたのだが、まぁ直ぐには動けない。この有り様だからな。


 イヴの特訓は本当に容赦がない。それにハクも結構スパルタだった。それにヘラクレスさんも結構スパルタ。加えてローロマロ王国は、当時10歳だったウェスパシア様の初めての予知夢によってイヴに前回にも1度ローロマロ王国を救ってもらっていたらしい。だからこの王国はその時はからずっとイヴを崇拝しているんだとか。


 その話を聞いて俺は納得した。

 自分が崇拝している神に「協力してくれ」と頼まれれば、そりゃ嬉しくてやる気にもなるよな。ある意味洗脳……いや、また言葉を間違えるところだったが、イヴに頼まれ使命感に燃えたヘラクレスさんは鬼の様な指導を俺達に施してくれた。


 いやいや、本当に有り難いよ。


 お陰で俺達は強くなった。なっている筈。ううん、なっていなきゃ可笑しいし割に合わないだろ。


 待ってろラグナレク。今度こそ確実に仕留めてやるからな――。


「おーい、皆こっちに来て!」


 必死で呼吸を整え体力を回復していると、偵察に行っていたハクが俺達を呼んだのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ