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44 俺の家

 ユリマがハクに視線を移しながらそう言った次の瞬間、突如ハクの体が淡く輝き出した。


 光に包まれたハクは徐々にその姿が変わっていき、体を纏っていた淡い光が消えると同時にそこに1人の女の子が姿を現した。


 目の前の光景に呆気に取られた俺は言葉が全く出てこない。確認していないがエミリアとフーリンも同じだろう。ユリマのこれまでの話が全部飛びそうな程に俺は驚いている。


 透き通るような白い肌に整った端麗な顔。女の子はその大きな瞳でこちらを見つめ、綺麗な白銀の髪が靡いていた。


「君は……」


 無意識でそう声を漏らしたのが精一杯だった。何が起こっているのか分からない。ユリマの言った事もハクが突如として姿を変えた事も勿論驚いているが、何よりも俺が驚いたのは彼女のその姿。


 見間違える筈はない。

 だって、君は何度も俺の夢に出てきたあの女の子じゃないか――。


「グリム」


 優しく俺の名を呼ぶ声。やはり姿も声も夢の中のあの女の子と全く同じだ。


「君は一体……。ハクなのか?」

「そうよグリム。辺境の森でボロボロになっていた私を助けてくれた。そして貴方が私にハクという素敵な名前を授けてくれたの。ありがとうグリム」


 直接言葉を交わしているのにまだ信じられない。だが目の前は彼女は確かにハクだ。


「え、ちょっと待って、本当にこの子がハクちゃんなの⁉ 獣天シシガミって……!」

「ほお。これまたな中々の強者とみた」


 エミリアとフーリンもやはり驚いていた。2人もここまで話を聞かされていなかったらしい。


「貴方達が驚くのも無理はありません。大丈夫ですよ、ゆっくりと気持ちを落ち着かせて下さい。話はここからが更に重要ですから」


 全てを知っているユリマはまるで他人行儀かの如くそう言ったが、こんなの直ぐに受け入れる方が難しいだろうと俺は思うぞ。この短時間で告げられた情報が多過ぎる上に衝撃度がどれも高いんだよ。


 ゆっくりと落ち着かせてと言われてもそれも無理だ。興奮が収まらないしもう話が気になってしょうがない。


「大丈夫、気持ちの整理は後でつける。だから最後まで話を続けてくれ」

「そうですか。ではハク、ここからは貴方も自分で彼らに話を告げてはどうでしょうか」

「そうね。改めてグリム、エミリア、フーリン、初めまして。私の名前はハク。そして3神柱の神である、獣天シシガミと申します――」


 優しく包み込む様に響いたハクの声。いや、獣天シシガミと言った方が正しいのか?


 そんな素朴な疑問を抱いていたのを他所に、彼女は更に話を続けた。


「今ユリマから世界の未来について全て知ったと思うけど、この未来は本当に起こる事。

私達3神柱がアビスを封印した時、初めてこの世界が辿り着く終焉の未来を視たの。そしてその時が今来ているのよグリム。


私達はずっと世界の平和とアビス封印を見守っていたけど、時代が流れるにつれどんどん私達の力は弱まってしまい、遂にアビスの力がノーバディやラグナレクといった姿となって出現するようになってしまった。


いち早くアビスの力を察知出来た私は急いで国王と話し合いの場を設け、3神柱として、獣天シシガミとして事の全てを国王に告げ共に力を合わせようと申し出た。

だけど、私は国王にその申し出を断られてしまった……。


理由はユリマが話した通り。

リューティス王国やスキルやアビスの力の歴史、そしてこれから訪れる世界の終焉をしっかりと国王に伝えたけど、彼は力を失ってリューティス王国が衰退してしまう事を恐れた。

私も何とか説得を試みたけど国王の考えは断じて変わらず、それどころか彼は私を王国の“反逆者”として騎士魔法団に殺しを命じたわ。


イヴとドラドムートにも伝えなくちゃと私は必死で王都から逃げたけど、既に私に残されていた魔力は僅か。人の姿に変えていた魔力すら尽きてしまい、辺境の森で元の姿に戻ってしまった私はオークすら倒せない程に弱っていた。

そんな時に私を助けてくれたのがグリム、貴方だったのよ――」


 ハクの言葉によって、俺は初めてハクと出会った時の事を思い出していた。


「彼女達3神柱はアビスを見張る為にこの世界に留まりました。それは神としての存在は勿論の事、アビスやリューティス王国の動きをより近い環境で察知出来る様その姿を変えていたのです。


精霊王イヴは民が生きる為の大地へと、竜神王ドラドムートは民を見渡す世界樹へと、そして獣天シシガミは民と共に生きるべく人の姿へと」


 成程、俺とハクが出会うまでにそんな物語が存在していたのか。未だに何で俺達なんかが選ばれたのか分からないが、全ては運命であり必然だったという事だろう。


 それよりも俺は今の話でまた気になる事が生まれている。


「ちょっと待った。って事はハク、お前は何百年も前からその人間の姿でリューティス王国に紛れていたって事か?」

「ううん。正確には1人の獣人族としてあちこち回っていたわ。たまに祖の王国に帰っていたけどね。

私は定期的にアビスの力を確認する為にリューティス王国にも訪れていたけど、その時だけこの人間の姿をしていたの。それでも人目に付かない様に十分気を付けてはいたけど」

「そうなのか。因みに俺はもう1つ気になった事があるんだけど、もしかして竜神王ドラドムートとやらが姿を変えた世界樹って――」


 そう。俺は今の話を聞いた瞬間他でもない、辺境の森に聳え立つあの“世界樹エデン”が頭にパッと浮かんでいた。誰もがその存在を知るのは勿論の事、何より俺はその世界樹でずっと暮らしていた。


 かけがえのない“俺の家”だ。


「うん、グリムの思ってる通りだよ。あの世界樹エデンはドラドムート。私は彼を呼び起こそうとあそこに行ったんだけど、まさか助けてくれたグリムがドラドムートの樹で暮らしているなんてね。ハハハハ」


 ハクはそう言いながら思い出し笑いをしていた。


「やっぱりそうだったのか。って、ええ⁉ だとしたらヤバいだろ! だって森はもう焼かれて世界樹だって……」


 あの大火事で森はほぼ壊滅状態になってしまった。世界樹エデンだって燃えてしまっていたのを俺は見ている。その世界樹がドラドムートだと言うなら――。


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