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エミリアvsデイアナ

♢♦♢


グリムとフーリンの元に七聖天のジャンヌが現れたと同時、グリムを囲う城の正面に配置された団員達とは別に、銀色の弓を携えたデイアナは実力ある団長10名と200以上の団員を率いた騎馬隊でエミリア達の元へと奇襲を仕掛けたのだった。


「狙うは邪神の首! 全員で1体ずつ確実に仕留めるわよ!」

「「おおぉぉぉッ!!」」


 既にハクやイヴの実力を知っているデイアナには僅かな慢心も無い。七聖天が2人いたとはいえ、ラドット渓谷の時よりも戦力は今のが方が圧倒的に上である。


「わッ! なんか凄い数がこっちに来てるんだけど!」

「いちいち騒ぐんじゃないよ五月蠅いねぇ。あんなの束になったところで実力が知れているよ。今のアンタなら1人で勝てるから早く片付けてきなエミリア」

「え、私1人で……? でも、うん。分かったよイヴ。私やってみるね」


 以前のエミリアからは想像だに出来ない行動。人は直ぐに成長する事なんて出来ない。だがエミリアは少しずつだが着実に実力と精神が強くなっていた。


(ハクちゃんとイヴには本当に感謝してもしきれない。こんな私を信じてここまで導いてくれた。だから今度は私の番。

イヴの事だから絶対に認めないと思うけど、出会った時より確実にイヴは魔力が“弱まってきている”――。

ハクちゃんはまだ大丈夫そうだけど、ドラドムートも最終的に残った魔力を使ってグリムの神器になった事を考えると、ここからはもう私達が頑張るしかない!)


 そう。ハク達の力が徐々に弱まってきている事にエミリアは気付いていた。無論ハクもイヴもドラドムートもその事は一切口にしていないが、それはまたグリムとフーリンも薄々感じ取っていた事実である。


「精霊魔法、“エルフズ・ウインド”!」

「「ぐあぁぁぁぁ……ッ⁉」」


 エミリアの攻撃魔法が騎馬隊の先頭集団を襲う。


 残された3神柱の力は限界が近付いてきている。それと同時に着々と復活の兆しを強める深淵神アビス。行きつく未来がどういう結果であれ、全ての決着はもう直ぐそこまで迫っていると皆が思い抱いているのであった。


「あの杖の子、前会った時よりも数段強くなってるわ……! これも邪神の力なのねきっと。でも今度こそ倒す。魔法団員はこの場で私達の援護! それ以外の騎士団員と全団長は私に続きなさい! 何が何でも邪神達を討ち取るわよ!」


 デイアナの鬼気迫る掛け声で団員達の士気が一気に高まる。後方支援の魔法隊約20人が魔力を練り上げ何時でも援護が出来る態勢を取り、残る約150人の騎士隊が武器を振り上げながら勢いよくエミリア達に向かって突撃する。


「王2級魔法、“サウザンド・ソムストーム”」


 デイアナによって放たれた王2級魔法。それは何時しかエミリア達目掛けて放たれたあの時の千本の矢であった。デイアナは騎士隊が突撃するのとほぼ同じタイミングで矢を放ち、一気にエミリア達を討ち取ろとしているのだ。


「精霊魔法、“ディフェンション・ドーム”」


 エミリアはデイアナの攻撃に対し何時もの丸い1枚の防御壁ではなく、ハクやイヴも含めた自分達を覆うようなドーム型の防御壁を展開した。


 ディフェンションの応用。

 エミリアはイヴとの特訓でディフェンションの幅を更に広げていたのだ。普段の1枚の防御壁に対して全方位に対応したこのディフェンションに防げないものはない。勢いよく向かって来る騎馬隊より僅かに先に届いたデイアナの千本の矢が次々と防御壁に撃ち込まれる。


 ――ズガガガガガガガッ!

 怒涛に降り注ぐ矢の雨。しかし、デイアナの王2級魔法であっても

矢1本としてエミリアの防御壁を貫けなかった。そして、このエミリアのディフェンションは更にここから――。


「“リバース”!」


 エミリアの力強い声に反応するかの如く、ドーム型の防御壁で受け止めた千の矢は瞬く間に神々しい光と共にエミリアの目の前まで迫っていた騎馬隊目掛けて一気に放たれた。


 エミリアはドーム型の防御壁によって上から降り注いできたデイアナの矢を全て受け切ると同時に、今度はそのまま正面から騎馬隊目掛けてリバース効果を発動させる。今のエミリアにはまさに死角がない。究極の守りが最大の攻撃と化すのだ。


 七聖天クラスともなれば、リバースで返したその魔法の威力は優に“神1級魔法”クラスといっても過言ではなかった――。


「「うぐぁぁぁぁッ……!!」」

「ば、馬鹿なッ⁉ 私の攻撃魔法をそのまま返した……⁉」

「ヒッヒッヒッ。相変わらず行儀の悪い矢だねぇ。それに正確にはそのままではなく倍さ。アンタの攻撃なんか遥かに上回っているよ」


 余裕の笑みを浮かべながらイヴは言い放つ。デイアナは初めてエミリア達と対峙したあの日と同じ様なデジャヴに襲われていた。自身の王2級魔法が全く通じなかったあの日の事を。


「くッ、嫌な事を思い出してしまったわ。でもあの時よりもこっちの戦力が上。それに確かに杖の子は強くなっているけど、肝心の邪神達は何故か前よりも魔力が弱く感じるわね。気のせいかしら……?」


 ハク達の魔力が弱まっている事にデイアナも気付き始めていた。だがいくら弱ってると言っても元の次元が違う。勿論これだけでデイアナも油断した訳では一切ないが、思いがけない僅かな綻びに勢いを増すのは簡単であった。


「邪神の魔力は凄まじい! だが理由は分からないが以前よりもその力が弱まっている! 確かに脅威な敵に変わりはないが、今の私達なら倒し切れるわよ!」


 流石七聖天の1人。実力も然ることながら、自分が率いる団員達を要所要所のところで鼓舞し士気を保っていた。数の多さが必ずしも有利とはならないが、エミリア達にとって一筋縄で片付く敵でもなかった。エミリアはカウンター攻撃で数こそ減らしたものの、実力あるデイアナや団長達はまだ無傷だった。

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