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私は小説を読まない

作者: 煌煌

 幼い頃から作文が苦手だった。読書感想文で原稿用紙三枚以上書くようになんて小学生の頃に先生に言われたときは、特にルールの説明もされなかったのを良いことに、内容と全く関係ない話で二枚分埋めるくらい。

 成長すると活字が苦手となる。中学生の時に好きだったアニメの小説版を買ったが、文は読まずに絵の載っているページだけを見て売ったほど。小難しい漢字が並べられ、意味の分からない表現が続く。情景を浮かべられないワタシには苦痛以外の何物でもない。




「小説書いたんだよね」


 大人になってからの友人にいきなりラインで言われた。書いたんだよねと言われても、私には凄いねくらいの反応しかない。いつの間にかアニメすら見なくなったというのに、また文字の羅列を見ろと言うのだろうか。


「えー。凄いじゃん。私小説とか全然分かんないから。尊敬するよぉ」


 軽く張った予防線。彼女にはただの賛辞に映った模様。私の意思とは関係なく送り付けられるサイトのアドレス。中学生の時の記憶が蘇る。何の苦もなく読める人には分かってもらえないのだろうが、家電の説明書の最初のページで挫折する人間にとっては、ただの精神修業。しかも何も身に付かないのだから滝行の方が私には数倍マシ。




「ねぇねー。どうだった?」


 一瞬目を通しはしたが、ラインやメールでオトコに送るように彩られた文章。内容を頭に入れようにも絵文字が気になって一行目でギブアップ。だから感想自体が存在しない。


「ごめんねー。やっぱり私には難しいや」


 最大限に言葉をオブラートに包む。もはや原形は留めていないハズ。ハートや星で彩り送信。本当は棒線すら付けたくないけれど。

 一分も経たずに返信が届く。恐らく当たり障りのない内容が連なっていることだろう。




「はぁ? だったらてめーが書いてみろや」


 予想の斜め上を行くとは良く聞くが、今回のは何と表したものか。少なくとも私の頭の中の辞書に載っている言葉では表現不可能。


「ほら出来ねーんだろ」


 何気ない追撃。しかし私には、最初の言葉よりも頭にキタ。お望み通りにブチのめしてやろう。ただし文章で。




 早速アカウント製作。すぐに文章を投稿。


「アタシのと比べればカス同然だわ」


 教えてもいないのに彼女からの攻撃。作者ページを見ると新着作品に全て同じ内容でのコメント。文章とは対照的に輝く絵文字。

 ちぐはぐな内容はまさに彼女自身。

 荒しに対する他の人の返信を読むうちに、少し安定した精神。なので私は小説の書き方を調べてみることにした。

 行頭の字下げ。文末の文字はなるべく重複しないようにする。漢字の開き。

 私の人生で聞いたことのない言葉が並ぶ。だけど。中学生の頃には不思議に感じただけの、小難しい漢字を使う理由や普通とは違う言葉の並べ方をする必要性など、気持ち悪さを解消するようなルールを理解した。

 あとは簡単。決められたルールの中で自分の描きたい世界を、情景を、紡ぎ出すだけ。




「普段小説とか読まないのにアナタの文章はスッと入ってくるのでずっと読んでられる」


 初めての投稿から数週間。見慣れた絵文字に彩られた読書感想文。出来立てホヤホヤのアカウントによる文字の羅列は、私に創作の意欲を与えてくれた。




 相変わらず私は小説を読まない。

 だけど。読まない私でもついつい最後まで読みたくなるような、結末を知るともう一度最初から浸りたくなるような物語を、小説を読まない私だからこそ、苦手な人も文字から情景を思い描くことができるような作品を、書けるんじゃないだろうか。




 お読みくださりありがとうございます。

 企画の応募用に、以前投稿したものを再投稿いたしました。

 少しでも反響がありましたら、相手の視点で続編を考えようかと思います。なのでよろしければ、またブックマークや評価などを頂けると励みになります。

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