第四話 王都のお転婆様
作者が入院中だったため一週間ほどお休みを頂いていましたが、本日より更新再開です。
ダムキング王国。
勇者を輩出した国であると同時に勇者パーティーの始まりの地、そして元ではあるが俺も含めた勇者パーティーのメンバーのほとんどの母国でもあるらしい。
俺とユウ、魔法使いであるホマ・ヴィッチルは、確かこの国――――それも王都出身であると聞いた。盗賊は王都ではないが同じくダムキング王国の出身、聖女は主に王都で活動をしているものの生まれは不明――――だが、多分ダムキング王国出身であるはずらしい。なんだか闇が深え。
こう言ってはなんだが、勇者パーティーという各方面のスペシャリストが同じ国に、同じ時代に生まれたことは奇跡的だ。まあ俺は他の奴らからすれば格落ちしているらしいし、そこまで奇跡でもねえか!
……話を戻すとしよう。
あの後エリザと別れた俺は、先程までエルフ狩りの四人を背負いつつ、森の中を爆走していた。目覚められると面倒だから、久々に本気で走ることになってしまった。厄介この上ない。
そして本気で走ること大体二時間。ようやく見えてきたダムキング王国に、どこか懐かしさを覚える。
だが、すぐに衛兵に突き出す訳ではない。と言うのも、今見えてきているのはウィダッチという街。俺らも本格的にダムキング王国から旅立つ前に、王国の最端たるあの街に寄っているが、今回の俺の目的はあの場所ではなく、王都――――文字通り、王国の中心部である。
とは言え、その目的とは俺の個人的なものであり、エルフ狩りとは一切関係がない。故に、エルフ狩りだけでも突き出してしまえと思わないでもないのだが。
そもそも人間とエルフの間には互いに不干渉であろうという協定――――なんて上等なものではないが、そういう取り決めがある。
実態は、その昔存在したクソ強いエルフが単身で王城に乗り込み、要約すると『エルフに危害を加えなければ何もしない、だから関わんなゴミが』的なことを言い捨てていったという逸話がある。無茶苦茶すぎない?
そういうわけで、エルフ狩りというのは割とガチな種族間問題だ。規模こそ極小であるものの、やってることはとんでもないことなのである。
そんな罪人は、何でもない最端の街では手に余る。王都に直接持っていってあげよう。
という理由で、今俺はウィダッチを無視して平原を突っ切り、王都を目指している。公私で言えば大体私だが、公の理由がなくもないんだし、ややこしいことに巻き込まれる前に王都に直行しようぜ!
まあ王国に入って森林地帯も抜けたことだし、10分くらいで着くだろう。そんなに変わらんて。
●
「そういう訳なんで、よろしくお願いします」
「えぇ……はい、分かりました。感謝致します」
ドン引き(主に俺がダッシュで帰国したことに対して)しながらも、全ての言いたいことを飲み込んで礼を言う衛兵にエルフ狩りの連中を突き出して、俺は王都、その中心へと足を運ぶ。
流石に王都、勇者が生まれた地という宣伝文句も相まっているのか昔よりも更に人通りが多くなっており、加えて俺は見た目幼女だ。端的に言ってしまえば目立つ。
俺のことを遠巻きに、何やら微笑ましいものを見るかのような目で眺めるのは、居心地が悪いというか、成人男性には複雑なものがある。おいそこで遠巻きに眺めてるお前、魔道具で映像記録残すのは止めろや。
しかし、俺が勇者パーティーに属していることは皆知っていると思うが、ついさっきクビになったことは知れ渡っていないのだろうか。それとも、知れ渡った上でこの状況なのだろうか。
――――そんないくつも重なる疑問を、一括で解決するために、俺は王都へと足を運んだのだ。
辿り着くは、王都の中心も中心。この国で最も高い建造物。
聳え立つ屋根にはためく国旗、堅牢な城壁は如何なる不埒者の侵入も許さないという、厳格な圧力を感じる。
まあ俺が本気で数発殴ったら壊れそうだけど、という野蛮な発想を彼方へ押しやりつつ、城門の前の兵士へと近付く。
「女王様と話がしたいんですが」
「あ、アイン様!? 少々お待ち下さい……」
我々勇者パーティーは、ダムキング王国女王が選んだ者たちの集まり。要するに、突然現れて『女王に会わせろ』と言っても、割とすんなり要求が通るような立場なのだ。
……俺の場合は、それだけではないけど。
通信用魔道具を用いて、城内の兵士と連絡を取る。そして何やら話を進め、兵士が嘆くように頭を抱え、通信を切った。
そして、魔道具をポケットにしまい、こちらに向き直る。
「申し訳ございません、アイン様。現在女王様が……その……城内におらずですね……」
「あー、また持病ですか」
「はい……置き手紙もないようでして、いつお戻りになられるのか……」
女王という人物は、俺という奇特な見た目をしている奴から見ても、変人奇人の域を出ない性格をしており、もう少し細かく言うと『え? それ女王がしちゃダメじゃね?』みたいなことをやってしまうお方なのだ。
また、じっとしているのが苦手で、しょっちゅう王城を抜け出しているのだ。日に日に強化され続ける兵士と魔道具の監視もすり抜け、簡単に抜け出してしまうらしい。まあ目的は結構しっかりした街の視察であったり、城内での執務はきちんとこなしたりしているので、王臣も強く出れないらしい。あのお転婆っぷりには困ったものだ。
因みに護衛には……どうせアイツは女王の傍にいるだろうし、大丈夫だろう。
「あー、女王様って俺の名刺って持ってましたよね? 女王の手が空いたら、連絡くれって伝えておいてください」
「……っ、畏まりました」
女王相手に、実質『お前から連絡しろや』と言い放った俺に、兵士がたじろぐ。難儀だな、彼も。
ほとんど説明回で終わってしまったこと……本当にすまないと思っている。
この作品における『名刺』とは、少し一般的な名刺と意味が違います。
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