ファミレスで水しか飲まん奴
「あのさ、お腹空かん?」
「空いた空いた。今ちょうどお昼時やしな。お、あそこにファミレスあるやん、入ろうや。」
「ええよー。」
2人はファミレスへ移動した。
カランカラン
「いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞ。」
店員は2人をテーブル席へ案内した。
「てかファミレスとか久しぶりやわ。小学生以来ちゃうか?」
「ほんまに?俺はたまに寄るけどな。やっぱ色々なメニューあって面白いやん?」
「わかるわー。メニュー見てるだけでお腹いっぱいになりそうよな。」
「失礼いたします。お水になります。……ではご注文お決まりになられましたらこちらのボタンでお知らせ下さい。」
店員は水の入ったコップを置いた。
ゴクッゴクッゴクッ
「っはー!カラカラに渇ききった喉に水はうまいわぁ!」
「はは、そんな焦って飲まんでも逃げたりせぇへんて。んで?お前何頼むん?」
「ん?あーちょっと水無くなったから注いでくるわ。」
「お、おう。」
男は水を注ぎに行った。
「……よいしょー。おまたせ。決めた?」
「あ、ああ決めたよ。このハンバーグステーキってやつ食ってみるわ。」
「それ俺も気になってた奴。めっちゃうまそうやんな!」
「じゃあお前も同じ奴にするか?ほなボタン押す…」
「待って、俺はまだいいや。先お前のだけ頼んどいてええで。」
「え?そうか。じゃあ先頼むで。」
男はハンバーグステーキを注文した。
「……で?お前仕事どうなん?」
「え?仕事?まあぼちぼちってところやな。そっちは?」
「こっちも大したことないよ、毎日同じことの繰り返しさ。」
「まあなー。……頼む奴決めたか?」
「ん、頼む奴…?あー!今考えてたとこ。」
「あそう?悩んでんなら俺が決めてやろうか?」
「いやいいよ。自分で決めるから。」
「そうか?早く決めないと俺のハンバーグステーキ来るぞ」
「お、おう。ちょっと水無くなったから注いでくるー。」
男はまた水を注ぎに行った
「またかよ…水よう飲むなあいつ。」
しばらくして、男が頼んだハンバーグステーキが来た。
「おおー、うまそうやな。これがハンバーグステーキっちゅう奴か。」
「ええやん、肉汁たっぷりでうまそうやなー。」
「じゃあ先、食べるで?お前もはよ頼めや。」
「あー、大丈夫。もうちょっとだから。気にせず食べといて。」
「うおっ!これマジうまいわ。ほっぺ落ちる。」
「マジで?うわー、俺もそれ頼もうかなー。あ、ちょっと水無くなったから注いでくる!」
「あちょっ…あいつまた水かよ…」
男はまたまた水を注ぎに行った。
「おまたせっと、ほんまにうまそうやなそのハンバーグステーキ。水も進むわ!」
「いやお前ファミレス来てんのに水しか飲まんやん。」
「…え?」
「いや、だからファミレス来てんのに水しか飲んでへんやんって。何で何も頼まんの。」
「………」
「おかしい思ったんや。こいつ考えるフリして全然頼もうとせんやんって。」
「………実は今、お金が無くって、財布の中身も小銭しか無くて…」
「はぁ?何やねんそれ。それでようファミレス行こうとか言えたな。」
「ごめん!飯時やったから、つい…」
「…まあええわ、お前とは仲良いし…ほら、やるよ。」
「えっ!こんなに!?…いいの?」
「ええよええよ。困った時はお互い様やで。」
「ありがとう!このことは一生忘れないよ!」
「そんな一生だなんて大袈裟な。ほら、何か頼めや。奢ってやるで。」
「え!お金くれたのに奢ってもくれるの!?本当に!?ありがとう!!」
「ええって。気にすんな。」
「本当にありがとう!あ、ちょっと水無くなったから注いでくるー!」
男はまたまたまた水を注ぎに行った
「………あー、ほんま。これであいつに金やるの今月入って12回目やわ。めんどくさい奴と友達なってしもうたなー…」