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森で

翌日。

朝食を終えて、私はこっそり部屋を出た。

お散歩に行こうと思ったの。なんでこっそり部屋を出るのかというと、ひとりで行きたかったからよ。

ちょっとお散歩するのに騎士の護衛をつけるなんて大袈裟だと思うもの。

それに、イケメンについて来られたら、のんびり出来ないでしょう。


お城の裏手に回ってみると、裏庭っていうのかしら、そこは綺麗に除雪されていた。

奥の方は森になっているみたい。森、か。

庭を抜けて森に入ると、雪がたくさん残っていたけど、歩けないほどではなかった。

木々の間をゆっくり進むと少し開けた場所にでた。


この辺でいいかな。


何をするのかって? もちろん、練習よ!

開けたスペースの、ちょうど中央に立って。祈る…、そうね、手を組んだらいいかもしれないわ。

「イマイチね」

少しやってみて、すぐにやめた。

なんかこう、違う気がする。りんごの木のときみたいな、植木鉢で試したときみたいな、あの感じがしない。

その植物の、それ自体の、生きる力。その力を増幅させる、そうね、そんなイメージだわ。

私はそこにしゃがんで、積もった雪に両手を乗せた。


大地よ。雪は冷たいね。だけど溶ければ、生きるために必要な水になる。あなたの糧になる。

さあ!

ふわりと暖かな風が吹いて、私を中心に雪が溶けていく。木の根元まで雪が溶けたところで、私は大きく息をついた。

はー。これはちょっと疲れるわね。

現れた大地に手をついて、もう一度祈る。

大地には野草が芽を出していた。咲いてほしい。咲いて見せて。

私は祈った。


次の日もそこへ行った。

昨日咲いた花は、今日も可憐に咲いていた。今日は木にチャレンジしたいけど、立ち並ぶ木は実がなりそうな木じゃないのよね。

もう少し先に進んでみようかな。

そう思ったとき、木と木の間からにょろりとそれが現れた。

「わ。ヘビ」

冬眠してたヘビが起きたのかしら。昨日、大地の力を借りて雪を溶かしたから、地熱で春だと思ったのかもしれないわ。

あ、でも、冬眠って15年もできるのかしら。

不思議、と思いながらチロチロと舌をのぞかせるヘビを眺めていたら、

「危ない!」

鋭い声がして、クワッと開いたヘビの口を炎の矢が貫通した。

ギョッとする私の前で、ヘビはクルクルとのたうち回った後、ぼっと音を上げて燃えてしまった。


「大丈夫ですか?」


振り返ると、そこにいたのはロゼさんだったわ。

まあ、声で分かっていたけどね。

見つかっちゃったわ。

バツの悪い思いはあったけど、敢えてなんでもない感じにニコっと笑う。

「こんにちは、ロゼさん」

するとロゼさんは一瞬口を噤んだ。


「……外出する際には、お声がけくださいと、お願いしたはずですが?」

あらら。少し怒ってるわね?

眉根が寄ってるし、声のトーンが低いもの。

不機嫌そうなイケメンって、へんな迫力があるわよね。立場が違ったら、相当びびったと思うわ。

「少しお庭に出るくらいで、護衛は必要無いと思って」

「表ならともかく、裏庭にはさっきのような魔物が出ます。毒を持っているものもいますので、危険です」

「魔物?」

さっきのヘビが?

…普通のヘビに見えたけど。

「気をつけます」

へらっと笑うと、ロゼさんはムッとしたように右の眉を上げたわ。

「そうではなく。外出時には必ず同行を」

「ええ、そうね。では、お願いします。実のなる木を探したいんです」

感じ悪いと思われてもいい。むしろそう思って放っておいてほしい。

私はわざとロゼさんの言葉を軽く聞き流すようにして彼に背を向けた。

だって、イケメンが側にいると落ち着かないんだもの!


私はなんとなくのカンで、あっち、と思う方に歩き出した。

さく、さく、と雪を踏む。もう、かなり溶けていて、踏んだ足跡の形に雪が溶けるほどになっていた。

山葡萄やアケビ、ザクロを見つけて実らせることができたわ。うん、今日はもういいかな。

うーん、と伸びをすると、ロゼさんと目があった。

そうだ、ロゼさんがいたんだ。ずっと黙ってついて来るだけだったから忘れていたわ。

なんだろう。なんか、不思議な物でも見るように私を見ているわね。


「そろそろ帰ろうと思います」

一応声をかけてみる。すると、ロゼさんは、ふと我に返ったように目を瞬かせた。

「…ああ、そうだな。もう日が短い。暗くなる前に戻った方がいいでしょう」

「…? 今、何時です?」

「3時過ぎです」

これには驚いたわ。

「もう、そんな時間?」

それは、流石に出かけたのがバレてるわね。エマさんたちが心配してるのではないかしら。

「俺が同行していることは連絡済みですので、その心配はないでしょう」

そう? 良かった。

「連絡っていうのは?」

スマホでメール、のわけ無いわよね。

魔法で出来るのかしら? テレパシー的な?

歩きながら訊ねると、ロゼさんは、

「メッセンジャー」

と唱えて、一度握った手を開いて見せた。そこにはスズメのような小鳥がいたの!

わあ、可愛い! 何これ、マジック?(違う)

ロゼさんの合図で小鳥はお城に向かって飛んでいったわ。

「今のは?」

「今から戻る、とフェニ連絡しました」

ほー。小鳥が伝えてくれるってこと?

面白い連絡方法だわね。


「そう言えば、今って本来の季節はなんですか?」

さっき、もう日が短いって言っていたけど、日が短くなるような季節なの?

「秋ですよ。季節としては秋の終わりです。間もなく、冬になります」

え。そうなの?

せっかく降り続いた雪が止んだのに、これから冬になるのね。

なんだかちょっぴり残念ね。

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