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お礼の品について

「さっきの件だけど、君の意向はカウム宰相補佐に伝えて即日実施するよう指示を出したよ。すでに集められた婿候補は解散となっているし、臨時で施行されていた結婚、婚約に関する制限令も取り下げられた」


部屋に戻ると待ち構えていたバレットさんが早口に報告してくれたわ。

なぜか、拗ねたようにむすっとしてるし、君呼びになっていたけど。

うん。本当にバレットさんは仕事が早くて助かるわ。


「それから、僕が聖女付きになったのは僕が優秀だってことが理由だから! 顔が良いのは否定しないし、僕が君とどうにかなったらラッキーくらいには上も考えてたかもしれないけど、そのための要員なんかじゃないから!」

はい…?

鼻息荒く言い募るバレットさんにきょとんとしていたら、フェニさんが紅茶を出しながら言った。


「私は、アリスさまのお世話をすることが仕事ですが、秋波を送ることは私の仕事に含まれていません。ただ、私はとても魅力的ですから、アリスさまが惑わされてしまうこともあるかもしれませんけれどね」

そんなことを、とっても魅力的に微笑みながら言って、ウインクするのよ。


「騎士団は国防の要だと、以前説明したな。武力が第一だ。聖女付きとして、あまりむさ苦しくない見た目の者が選ばれているのは事実だが、顔が良いだけでは役に立たん。俺は顔で団長になったわけじゃないし、色目を使えという指示も受けていない。顔が良いのはたまたまだ」

ロゼさんまで、そんなことを言うのね。

「ぷっ。……くく、あっははは!」

堪えきれずに爆笑したら、バレットさんも、フェニさんも、ロゼさんも、笑っていたわ。

そうね。とりあえず、そういうことにしておきましょうか。


改めてみんなでお茶をすることにした。

話したいこと、というか、聞きたいことがあったからね。

「ねえ、バレットさん。パーティーで国王さまがなんでも望みのものを与える、みたいなことをおっしゃってくれたけど、あれって本当になんでも良いのかしら」

ちなみに、私も敬語をやめました。

「そうだね。割となんでも平気だと思うよ。誰かの地位や土地を奪うようなお願いじゃなければね」

いやいや、そんなのお願いするわけないわよ。

「『聖女』のことがわかる文献とか、過去の記録とか、そういうの、見せてもらうことはできると思う?」

「平気だと思うけど。過去の聖女のことを調べたいの? なんで?」

バレットさんに問われて、

「どうして聖女が必要なのか…」

と呟くように答えると、今度はロゼさんが、

「どういうことだ?」

と、言ったわ。


うーん。なんて言ったらいいんだろう。

この世界の人たちは、異世界から召喚された聖女が絶対に必要だと思っているでしょう?

でもね。

「私がいた世界は、異世界の聖女なんて必要としていなかったわ」



元の世界では、異世界の聖女なんていなくても天気はそれなりに保たれていた。時折台風や長雨で大きな被害が出ることもあったけれど、異世界から聖女を召喚して天災を鎮めてもらう、なんて聞いたことないもの。加持祈祷ってものはあったし、日照りが続いたら雨乞いする、とかも

あるけれど、おまじないの域を出ないと思うわ。

ではなぜ、この世界は異世界の聖女を必要としているのか。

その理由が分かれば、そしてもし、聖女がいなくても済む方法があれば、もう聖女を召喚しなくても良くなるわ。


もちろん、ここは私からしたら異世界で、元の世界とは根本が違う。単純に、『異世界だから』ということなのかもしれないけれど、何か理由があるかもしれないじゃない?


そしてもうひとつ。

「聖女の呪いについて知りたいの」

そうよ。なにかに、引っかかっていた。釈然としない、そんな気がしてた。でも何に引っかかっているのか自分でも分かってなかったのだけど。

さっきね、あの男の子が言ったのよ。『聖女の呪い』に負けないって。


『聖女の呪い』


初めてこの言葉聞いたのもあの男の子からだった。

あの子は「『聖女の呪い』なんかに負けない」と言っていたわ。その後、カウムさんに『聖女の呪い』について聞いたとき、それは先代の聖女によって雪が降り続いたことを指しているのだと教えられたけど、あの時、すでに雪は止んでいた。

先代の聖女の呪いは終わっていると考えられるわよね?


では、『聖女の呪い』とはなんなのか。


もしかして、調べるまでもなくみんなが知ってるかしら?あの男の子が知ってるんだものね。

フェニさんが言った。

「先代の聖女さまが亡くなられてからアリスさまが現れるまで、常に雪が降り続いた現象は、先代の聖女さまが非業の死を遂げられたことから、呪いではないかと言う者がいました。ですが、先代の聖女さまがそうなってしまったことには、私たちパンセレーノンに非があります。ですから、表立って『呪い』と言うのは憚られることでした」

「そう。どう考えても、僕たちの自業自得だからね」

「俺は、先代の雪の呪い以外に『聖女の呪い』に当てはまりそうなことは知らないな」

「僕も」

「私も、心当たりがありません」

…え⁈

知らないの?

「それってどういう…。じゃああの子が言っていた『聖女の呪い』ってなんのことなの」

3人は顔を見合わせて、首を横に振った。


「直接、聞いてみるしかないだろうな」


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