招待
誤字報告ありがとうございます。
誤字を修正しました。
「パーティー?」
目が覚めてから数日後、話があるとバレットさんが言ったから、ロゼさんフェニさんも誘って一緒に夕食を食べることにしたのだけれど、そのお話っていうのが国王様主催のパーティーへの招待だった。
「そう。今回のアリスさまの功績を称え、国王からお言葉をいただくんだ。それから、ずっと延び延びになっていた、国の重鎮や政府関係者や貴族たちに聖女さまをお披露目したいとお考えのようだよ」
国王様からお言葉? それはきっとすごいことなのよね?
この世界に来てからこっち、なにかと忙しくて(私も、周りの皆さんもね)、こちらの世界のことをちゃんと理解できてないのよね。
国の重鎮や政府関係者や貴族にお披露目、か。
よし、この機会に教えてもらおう。
私はきちんと背筋を伸ばして、バレットさんを見つめた。
「この国と世界のことを、もう少し教えてもらえませんか。王様が治めているんですよね?」
「そうだね。アリスさまの世界にも王はいたのかな?」
うーんと、そうね。
「王様がいる国も、王様が治める国もありましたけど、私がいた国は王政ではありませんでした」
って、答えたら、
「国が複数ある、のかい?」
と、驚いたように言われて逆に驚いてしまう。
え、無いの⁈
「パンセレーノンは一つの大きな国なんだよ。ここでは国と世界は同義なんだ。もちろん、大きなこの国の全て、細部までを王一人で治めることは不可能だから、土地を分けそれぞれに自治を任せる責任者を置いています。それが貴族なんだよ」
へええぇ。世界が大きな一つの国…? 天下統一がなされた世界、か。んん? 国が一つということは戦争が起こらない、ということになるのではない?
「もしも国が複数あって、お互いの利権を争うことがあれば、聖女さまの存在はとても危険なものになってしまうよね。その力は敵国から見れば脅威でしかないから。国が統一されているからこそ、聖女さまの存在は全ての民にとって利益であり恵であり希望になり得るんだ」
だから、国が一つで良かったとバレットさんは笑顔になった。
なるほど、そうね。もし、敵国だけを悪天候にし続けることができたら、すごく有利だもの。他国にとって聖女は脅威となり得るわ。命を狙われることだってあるかも。
うん。天下統一、されていて良かった。
でも、そうなるとやっぱり、疑問よね。
「国が一つということは、領土を奪い合って争う、ということはないんですよね? 以前、騎士団は国防の要と聞きましたけど…?」
騎士団は一体何からこの国を守っているのか?
気になるでしょう?
この問いには、ロゼさんが答えてくれたわ。
「騎士団の仕事は紛争の鎮圧と魔物の討伐です。地方を治める貴族同士の小競り合いはままあります。基本的には当事者同士で解決するのですが、それが難しい場合や領民に被害が及ぶような場合は王命によって騎士団が鎮圧に赴きます。そして、各地に出没する魔物の討伐も騎士団の役割です」
「魔物…」
「城の裏の森で、アリスさまも見たでしょう?」
見たっけ?
きょとん、とロゼさんを見返したら、まさか覚えていないのかと言いたげに、涼しげな目が細められたわ。やだ、怖い。微笑みながら睨まないで?
「えー…、あぁ、あのヘビ?」
そういえば、雪解けに、春と勘違いして出て来てしまったかのようなヘビに会ったわ。ロゼさんが、速攻で退治してしまったけど。
ロゼさんは小さく息を吐いた。
「そうです。あれは小さな魔物でしたが、魔物の中にはとても大きなものもいます。魔物はひとを襲うので騎士団がパトロールをして討伐しているのですよ」
普通の、ヘビだったけどね…。
もちろん、普通のヘビだって不用意に近づいては危険よ? ただ、だからといって、殺す必要は無いと思うのよ。
もしかして、害獣イコール魔物、だったりするのかしら。動物イコール魔物だったら嫌だなぁ。私、無用な殺生は好まないのよ。
「森は、より魔物の出やすい場所です。どうぞ、森での一人歩きはお控えください」
「あ、…ハイ」
イケメンの低音ボイス。迫力があるわ。
要するに、ひとりで森に行くときはこっそり行けってことよね。
了解、了解。大丈夫よ。
もぐもぐ食べつつ頷く私の横で、フェニさんがパンをちぎりながら言ったわ。
「王がいない、となるとアリスさまの国では誰が国を治めているのですか?」
フェニさんがちぎるとパンくずが全然飛び散らないのよ。すごくない?
テーブルの上、私のお皿の周りはパンくずだらけ。
パンの千切り方に何かコツがあるのかしら。
「国を治める、というか。政治は国民が選んだ政治家が行っていました」
「では、貴族は?」
柔らかな微笑みを絶やさないフェニさんは、声音も柔らかい。
私、上に兄姉はいないんだけど、お兄さんがいたらこんな感じかなって思うような、優しく見守ってくれるみたいなふんわりとした、大人で、ステキな、笑顔なのよ。
ふふ。
…えっと、なんだっけ。貴族?
「貴族っていうのは、公・侯・伯・子・男の爵位を与えられた特権階級、という認識で合ってます? 私の国では、かつては貴族と呼ばれる人たちがいましたけど、法律で廃止されました。一部、特別な階級の方がいらっしゃるだけですね」
だから、高貴な身分の方との接し方なんて分からない。マナーも分からないし、失礼があったらどうしよう?
「聖女さまは異世界からいらっしゃった方。それは全ての者が知っていることです。こちらのマナーにそぐわない振る舞いがあったとしても、聖女さまだから、で済みます。だから、それほど心配なさる必要はありませんよ」
えー…、そうお?
でも、郷に入っては郷に従えって言うしなぁ。
うーむ。
「では、少しマナーをレクチャーしましょうか。その方が、アリスさまも堂々と出席できそうですしね」
わぁ、本当、フェニさん! 嬉しい、お願いします。
「当日はロゼがエスコートするのでしょう?」
フェニさんに言われて、バレットさんが頷いた。
「そうだね。ロゼが適任だと思うよ」
「ああ、分かった」
バレットさんの視線を受けて答えたロゼさんが私に微笑みかける。
エスコート!
なるほど、そういうものが必要なのね!
「サポートのため、エマを付き人として同伴させます」
それは心強いわ!
「ところでアリスさま、ダンスはお得意ですか?」
は?




