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第三話

 ユニスとラヴィニアの二人は、ハンナを追って外に出る。

 すると──


「なんだなんだ、またガキの数が増えてねぇか? 借りた金も返さねぇでいい気なもんだぜ、なぁ?」


 チンピラ風のガラの悪い男たちが三人、孤児院の門の前に立っていた。

 腰にナイフを下げている者もいる。


 その男たちの前に立ちふさがるのは、怯える幼い子供たちを背中に守る少年アルだ。

 アルは震えながら、それでも男たちに向かって啖呵を切る。


「院長先生を悪く言うな! お前らみたいな悪者に、なにが分かるんだよ!」


「やめなさいアル! いいから、みんなを連れて離れていて!」


 そこにハンナが慌てて駆け寄ってアルを抱きとめ、制止していた。


 そんな二人の前に、男たちのうちの一人が立った。

 男はぽきぽきと指を鳴らし、さも憤っているという表情でアルとハンナの二人を見下ろす。


「おいおい坊主、訪問したお客様を悪者呼ばわりたぁずいぶんだな、あぁ? こりゃあ教育が必要だな。なぁ、ハンナちゃんもそう思うだろ?」


「すみません……! この子には言って聞かせますから、どうか……!」


「なんで姉ちゃんがあやまるんだよ! 悪いのはこいつらだろ!」


「いいから黙ってアル! お願いだから……!」


 アルを必死に抱きしめるハンナ。

 それでアルも、悔しそうに歯を食いしばりながらも、口を開くのをやめた。


 だが、それではもう遅い。

 男はハンナに手を伸ばす。


「ハンナちゃん、そりゃあ通らねぇだろ。おじさんはこの坊主に、悪い人呼ばわりされたんだぜ? な、おじさんがハンナちゃんの代わりに、坊主を教育してやるからよ」


 二人の前に立った男は、アルからハンナを無理やり引きはがした。


 さらに、尻餅をついたハンナが立ち上がろうとしたところを、回り込んでいた別の男がニヤニヤ笑いを浮かべながら少女を羽交い絞めにする。


「やっ……! ま、待って! お願い! 子供のやることなの! 許してください! ──アル、逃げて!」


 だがアルは、逃げようとはしなかった。

 怯えで膝を震わせ、瞳に涙を溜めながらも、必死に目の前の男を睨みつける。


 その少年の襟首を、男がつかもうとして──


 その男の手が、途中でぴたりと止まった。


「なっ……!?」


「そのぐらいになさい。いい大人が、みっともないでしょ」


 いつの間にか男の横に立っていた旅装束の少女の手が、男の手首をしっかりとつかんでいた。

 男が力を込めても、ぴくりとも動かない。


「な、なんだ、テメェ……! くそっ……なんだこの力……!」


「この孤児院に泊めてもらう宿泊客よ。事情はともかく、子供に暴力を振るおうとするなら見過ごせないわね」


「宿泊客だと……!? ちっ……分かったよ、分かったから放せ!」


「そう。分かってもらえて嬉しいわ」


 旅装束の少女──聖騎士ユニスが手を離すと、男は手をぶらぶらとさせて痛そうにしていた。

 その様子を見てぽかんとするのは、ほかの男たちやハンナ、アルたちだ。


 ユニスはハンナを羽交い絞めにしている男にも、鋭い視線を向ける。


「そっちの人も。ハンナを放してあげて。彼女は何も悪いことをしていないはずよ」


「……いいから、放してやれ」


 ユニスに腕をつかまれた男にも言われ、羽交い絞めの男は釈然としない様子ながらも、ハンナを解放した。


 ハンナは呆けたようにユニスのほうを見ていたが、やがて自分の役割を思い出して、チンピラ風の男たちに向かって言う。


「失礼をしました。院長は奥におります。どうぞ中へ」


 そう言って、男たちを建物の中へと連れていく。

 男たちは「ホント失礼だよなぁ?」などと喚きながらも、ハンナのあとについていった。


 あとに残されたのは、ユニスとラヴィニア、それにアルとほかの子供たち。

 戻ってきたユニスに、ラヴィニアが声をかける。


「お疲れ様。よくキレなかったねユニス。えらいえらい」


「私にだって分別ぐらいあるわ。のべつ幕なし暴れやしないわよ。それより──」


 そう言ってユニスは、アルのほうを見る。

 そこにはヒーローを憧憬するようにユニスを見る、ひとりの少年の姿があった。


 その少年に、ユニスはしかし、冷たい言葉を向ける。


「アル、あなたもっと大人になりなさい。今のままじゃハンナに迷惑をかけるばかりよ」


「……っ! で、でも、おれ……!」


「大丈夫よ。あなたがハンナやこの孤児院のことを大事に思っているのは、みんなに伝わっているから。だから焦らないで、ハンナの強さを見習うことね」


 ユニスはそう言ってから、ハンナたちのあとを追って孤児院の中へと入っていった。

 ラヴィニアもアルに笑顔で手を振ってから、ユニスのあとを追った。


「ハンナ姉ちゃんの強さ……」


 それはユニスの姿にこそ憧れた少年には、まだ難しいことだったが──


 それでも、アルは自分のことを心配そうに見ている子供たちに気付き、笑顔を作ってこう言った。


「──よし、お前ら、夕飯まで何して遊ぶ? 院長やハンナ姉ちゃんは中でやることがあるから、邪魔しちゃダメだ。外でできることな」


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