始まり3
買い物をパパッと済ませて駅前のいちご大福を購入する。
これでデザートも確保出来たので後は秋ちゃん家でカニを食べればもう今日はいうことがない。
「さぁ秋ちゃん早く帰ってカニ食べよう!」
「さっき昼飯食ったばっかりだからもうちょっと後になるからな?」
「…カニに夢中でご飯食べた事忘れてたわ」
「さすがよう子だよな」
フッと呆れたような溜息をつかれる
「それだけ楽しみって事なのよ!」
誤魔化すように言い訳をするよう子を尻目に秋斗は歩き出した。
「あ、あれ南先生じゃね?」
「もう帰るのかな?」
「やっぱり隣の人彼女なのかな?」
「どうだろうなー」
「彼女いるって知ったらクラスの女子煩そうだな笑」
「あーぜってーうるせぇ」
やいのやいのと先程の生徒たちが2人を見ながら勝手な憶測をしてる中ずっと黙り込んだまま後姿を見送る眼差しがあった。
「琉弥どうした?」
「何?なんか気になるとか?」
声を掛けられてハッとなるが何もなかったかのような態度で
「いや、別に何でもない…ボーッとしてただけ」
「そっか、なら良いけど」
「なぁこれからどうするー?」
口々にこの後の予定をどうするか相談していく中で琉弥はもう姿の無い場所へ視線を向け短い溜息を吐いてから会話に参加した。
「お邪魔します!」
「はいどうぞ」
秋斗の部屋に着き家の中へ招き入れられる
「秋ちゃんは相変わらず綺麗好きだねぇムダなもの一切ないもんね」
1LDKの秋斗の部屋はベッドとテーブル、テレビの他は参考書などの本が収納してある棚しかない。
「ほとんど実家に置いてあるからこっちにないだけだよ」
キッチンでカセットコンロの準備をしながら話す。
「よう子ごめん、これ持って行って」
「はいはーい」
コンロを渡されそれをテーブルに置いておく。
「ねぇ秋ちゃん、もう先に野菜とか切っておく?それとも後にする?」
「まだ時間あるから切るのはもうちょっとゆっくりしてからにしようか」
微笑みながら秋斗が答える
「そうだね!じゃぁいちご大福食べてのんびりしようず!」
「え?いま食うの?」少し呆れながらも何だかんだとお茶の用意をする秋斗を見てよう子はテーブルの上にいちご大福を準備する。
テレビつけるよーいいよと我が物顔で過ごすよう子に何を思うでもなく甲斐甲斐しく世話をする秋斗はまるで親鳥のようである
幼い頃からの習慣って恐ろしい…
お茶を淹れよう子の隣に腰掛けて2人でいちご大福を頬張る
「秋ちゃんやっぱりここのいちご大福は美味しいね」
口いっぱいに頬張りながらよう子が笑顔で言う
「そうだな、やっぱりこのいちご大福だな」
同じく秋斗も笑顔で同意する
笑顔の秋斗を見てよう子は買って良かったなと思う。
秋ちゃんこのところ疲れてる顔してたからなぁとよう子なりに心配していたからだ
ニコニコしてるよう子を見て秋斗はフッと微笑む
「よう子、口の周り真っ白だぞ」
なぁっ!?慌てて辺りをキョロキョロするよう子にそっとティッシュの箱を渡す秋ちゃん
勢いよく取り出して口の周りを拭うよう子を秋斗は微笑ましく見ていた。
野菜を切り鍋に火をかけ蟹を投入しグツグツと煮込む
テーブルにあるカセットコンロに鍋を置いたらもういただきますの状態である。
「秋ちゃん!カニ鍋だよ!早く食べたい!」
「知ってるから落ち着け」
クンクンと匂いを嗅ぎながら蓋を開けるのを待つよう子
用意をしたのは全部秋斗である。
よう子が準備を手伝おうとすると秋斗は要らない座って大人しくしててと笑顔で言うのだから大人しく座って待つしかないよう子であった。
ワクワクしながら今かと待つよう子を見て秋斗はフフっと笑いながら蓋を開けた
開けた瞬間からカニの良い匂いが漂い食欲をそそる
「あぁ〜幸せの匂いだわぁ〜」
よう子がうっとりとしながら鍋を見ている
「それは良かった」
作った甲斐があるなと言いながらお皿によそってよう子と自分の前に置く
2人してビールを開けながら乾杯をして早速食べ始める。
「秋ちゃんめっちゃ美味しい!カニ美味しいよ!!」
テンション高くなるよう子はビールとカニを交互に口に放り込んでいく
「そんなに慌てて食べなくてもカニはまだあるからゆっくり食べろよ」
呆れるように笑いながらも秋斗も食べ進めていく
最初こそ会話をしていた2人だがだんだんと無言で身を出しては食べの繰り返しでテレビの音だけが響く部屋になっていた。
何度もお代わりをし残り数本になったところでようやく口を開く
「秋ちゃんおじやするよね?」
「するよ」
「じゃぁ残りのカニは剥いて一緒に混ぜよう」
「そうだな」
じゃぁ白飯用意してくるわと秋斗が台所に向かう
その間によう子はカニの身を取り出しておく
息のあった連携であっという間におじやを作り食べ満足する2人
「はぁ〜もうお腹いっぱい」
「満足したか?」
「大満足!!ありがと秋ちゃん!」
「それなら良かった」
ふっと微笑んで酒の入ったコップを傾ける秋斗
「あーお酒も飲んで蟹も食べて明日もお休みとか最高だね」
へらりと笑いながらコップの酒を飲み干すよう子
そうだなと相槌を打ちながら秋斗は酒を注いでくれる
お礼をいいつつ注がれたお酒を飲んでいく
「最近そっちは忙しいのか?」
「ぼちぼちって感じかなぁ、忙しくても9時までには帰れてるからまだマシって感じ。あと何ヶ月かしたら終電ギリギリになりそうな予感しかしないけどね」
ハハと乾いた笑いをする
「秋ちゃん先生も忙しそうだよねぇー」
「まぁ毎年の事だけどな」
「時期的な事だしねー、でも秋ちゃん人気ありそうだったね」
「ん?何が?」
「 先生が」
ベットの端に寄りかかりながらニヤつくするよう子
「今日も生徒から囲まれて内容的に女子からも好かれてる感じだもんね!さすが秋ちゃんだなと思ったよ」
「ははは、今の子は皆あんなもんだよ」
微笑しながらコップを煽る秋斗
「いや、嫌いな先生だったら近寄らないし話しかけないもん」
「まぁそうだな。さすがは俺ってやつだな」
「うわードヤ顔ウザー」
「何か言いましたか?よう子さん…」
満面の微笑みでよう子を見る秋斗
「なんも言ってないですぅ!秋ちゃんの笑顔に騙されてる女子可哀想なんて何にも思ってないですぅー!」
「おい俺が騙してるみたいに言うな」
「てへぺろ」
笑顔で首を傾げ肩を竦める
「可愛く誤魔化そうとすんな」
苦笑しながらよう子のほっぺを摘む
「あーごめんなさいぃ」
痛くはないがすぐに謝っておく
少し長めにムニムニされた後解放されるほっぺ
両手で頰をさすりながら
「秋ちゃん疲れてるんだねぇ」
いつも秋ちゃんがほっぺをムニムニする時は何かしら疲れたり思い悩んだりしてる時に昔からやられる癖のようなものらしく何故だか安心するらしい
最初幼稚園の時に無表情でやられた時には嫌がらせかと思ったけど怒ってる時の様に痛くないし、やり終わった後に笑顔でなんかスッキリした表情になってありがとうと言われたら「う、うん」としか返せなかったけどその後お菓子とかいっぱいくれたからなんか役に立ったんだろうなって幼心にも思った覚えがある。
「まぁなんつっても人間関係だからな」
といいつつさっきよりスッキリした感がある
「お年頃の子は大変だからねぇ」
などと会社や学校の事をグチグチしてたら結構いい時間になっていた
「じゃぁあたしそろそろ帰るね」
「うん、じゃぁ送ってく」
「ありがとう」
秋ちゃん家から家まで10分位なのだがいつも送ってくれる。
昔近いから大丈夫と断ろうとした事があるが切々と夜間の一人歩きの怖さと自分のポンコツっぷりを語られたあげく何言ってるの?という顔をされた事があるので素直に受け取ることにしてる。
正直親よりも過保護だなと思ってるがこれを言ったら後が怖いので言わないでおいてる
「送ってくれてありがとう秋ちゃん」
「うん、ゆっくり休めよ」
「はーいお休み」
「お休み」
手を振って見送って家の中に入る
お風呂やら色々あれこれとしてようやく布団に入り今日は充実したお休みだったなと人心地ついたら睡魔がすぐに襲ってきたのですんなりと受け入れる
…
……
………
あの夢だ
いつものように座って微笑み手を差し伸べられた
その手を掴み幸せそうに歩き出した
(よし!歩いた!!この間の続き見れるかも)
全然進展しなかった夢がこの間ようやく進んだのだ。これが興奮せずにいられるかと意気込むよう子
彼が誰かに呼ばれ返事をしてこちらを振り向く
そして口を開けて話しかけようとする
(この間はここで目が覚めちゃったんだよね。今日は起きるなよ!私!!)
うおおおっと必死に夢の中で祈ってるよう子
「____もう少し待っていて下さい私の愛しい人」
そう言って彼が私の額にキスを落とす
私は笑顔で待っていると伝えると彼は呼ばれた方へ行ってしまった。
(続きキター!!!ってかキス!!キスされたよ!!マジ顔近かったしドキドキしたんですけどっ!)
大興奮である
彼が行ってしまったので周りに咲いてる花をゆっくりと見て歩く
(めっちゃ綺麗な庭園だなここ)
とよう子が感心していると誰かに声を掛けられた
その声の方に振り返ると知らない男性が立ってる
(うお!イケメンだなこの人)
爽やかそうに笑う男性に話しかけられそれに応える
その男性が話し掛けながら素早く近付き腰に手を回され戸惑いつつも歩き出す
(いや、こいつ近くないか?馴れ馴れしいな)
夢の中なのに怪訝な顔になる
私は何とかさりげなく離れようとはしているが相手が中々離してくれないのでかなり困ってる
(マジ鬱陶しいなこいつ…ドーン!ってしたいしして!私!!ドーンってして!!許すよ!)
夢の中で許可出しまくりだが夢なので反応はない
男が腰に回した手に力が入り少し引き寄せられ手を握られ逃げられない状態になってしまった
(うわー!やめてぇ!!離せ変態!!)
夢の中で暴れるよう子
男の顔が近付いてくる
(ちょっマジやめろし!)
私は身体を引きたくても引けない状態になって顔を背けようと必死になる
どんどん男の顔が近付いてくる
(本当にやめて!!)
よう子が必死に声を荒げて止めようとしたところでハッと目が覚める
汗びっしょりで少し息が荒くなっていた
上半身を起こし息を整える
夢の続きが見られたのは良いけどこんな事になるなんて…良いところで目が覚めたけど……いや本当に良いところで覚めたのか?続きから見たと言うことは今度見る時はあそこから見るんじゃないのか?
と寝起きの頭でグルグル考えて何とも言えない気持ちになる
うーんと唸りながらとりあえず汗を拭いてパジャマを着替える
モヤモヤする気持ちが強いがまぁいい方に考えようと思い彼の事を思い出す。
ようやく話してくれた!嬉しく思ってしまうのだが顔も声も思い出せない
あれ?話し掛けてくれたしちゃんと声も聞いたのだが、いくら思い出そうとしても全然思い出せない
何故だ!と布団に突っ伏す
きっとあの馴れ馴れしい変態野郎が出て来たから忘れてしまったんだなと結論を出し悔しく思いながらまた布団に入った
随分と以前の書き込みが時間が経ってしまいました。。
ちゃんと完結させるつもりではあるのですが中々進まない状態で本当に申し訳ないです!
きっとこれからも更新が死ぬ程遅れますが生暖かく見守って下さるとありがたいです。