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再活用(6)





今日の夜は長い。いつもなら、飯を食って風呂に入って、テレビでも見たあと、お休みなさいなんだが…。




「………夜だね」




「うっ……確かに」




「えっと、その…ボク、こういうの初めてなんで、その…優しくお願いします…」




これは、どう対処したら良い?時は夜の11時過ぎ。もうすぐ、12時を回るといった所だ。




そんな中、俺と鬼のお嫁さん・ミウは2人向き合い、硬直状態に陥っていた。理由は、お察しの通り、『夜の営み』。若い男女が家に2人。しかも、急な事とはいえ、夫婦となった間柄。…いや、まだ婚姻の届けは出していないが。




『責任を果たせ…』




嫁さんの親父様・鬼の大将のお言葉が脳裏に甦る。全く、身に覚えのない責任なのだが、これは、親公認であり、しなければならない義務との事。俺が風呂から上がったおり、先に入り終えていたミウがソファーに正座で座り、待っていた。


最初は俺も拒否の言葉を放っていたのだが、次第にうつ向いていくミウを見ている内に何だか居たたまれなくなってきて、遂には『うぅ、しょうがない…のか、これは…?』と、口からポロリと言葉が出たものだから…。




「あの、あのあの、パンツはさっきの虎の絵のヤツとかじゃないから…あの、あの、ちゃんとした、あの…エッチな…その、ヤツで…」




と、この感じ。全く、変な事になってしまった。




いや、こんな可愛い美少女に迫られて嬉しくない訳は無い。無いのだが、これは、俺のアイデンティティーの問題である。大体、昨日今日、出会った男女がそんな軽々しくそういった行為に走るのはどうなのだろうか?




いや、一目見た時から…なんて言われたら、どうも言い返せないけど、しかし、俺たちの場合はその一目見た時からでも、昔から好き合っていた訳でも無い。しかも、勝手に決められた夫婦の関係で、まだ、お互いをあまり知らない。いや、知らな過ぎる。




やはり、こういう事はじっくり時間をかけて、愛を育み…。いや、そもそも、愛があるのか?俺は男で、年頃だ。こんな美少女がやって来て、夫婦となるなんて、ラッキーとしか言いようがない。いや、多少の不都合はあるが…。しかし、少なくとも嬉しいとは感じる。



だが、しかし、彼女はどうなんだ?いきなり、神か何かのお告げだから、見知らぬ男の、しかも、俺みたいな冴えない男の嫁さんにされて。しかも、そんな冴えない男と『夜の営み』?冗談では無い。もし、俺がそちら側ならば、神とやらを蹴り飛ばし、相手である俺を殴り飛ばす。




何故、彼女は平気そうにしてられる?嫌じゃないのか?悲しくないのか?理不尽だとは思わないのか?何故、彼女は笑っていられる?



「どうしたの?」




「君は、本当にこれでいいと思っているの?」




「えっ?」




あまりにも理不尽な仕打ち。自分の出来事で無いというのに、俺は己の頭頂に血が登り上がるのを感じる。ぶちギレそうだ。彼女の純真無垢な顔を見る度に拳で壁を叩きつけそうな衝動に駆られる。




「俺の責任が何なのか良く分からない。思い出そうにも、思い出せない。だから、とりあえず、その責任とやらを君たちのいう方法で取ろうと思う。だが!…君は?君は俺の責任とは関係ないだろう?なのに何故、そんなに笑っていられる?嫌じゃないのか?俺みたいな奴のお嫁さんにされて…」




俺はミウの両肩に手を置き、真剣な眼差しで彼女を見つめる。




「えっと……あの……これって、どういうプレイ?」




「プレイじゃねぇぇえっ!!違うだろ、違うでしょ!?俺の責任のせいだろうと、鬼神様のお告げだろうと、君はこれで本当にいいの?いきなり、見知らぬ男のお嫁さんにされて、しかも、そんな見知らぬ男とセッ…むにゅむにゅ…。と、とにかく、理不尽だとは思わないの?嫌だろ?悲しいだろ?いや、絶対、ムカつくだろう!?」




言い終わって俺はハッとする。…泣いて、いる?良く分からないのだが、ミウは再び顔を下にうつ向けたまま涙を流していた。




「やっぱり…嫌だったんだな?だよな…やっぱ、いきなり、見知らぬ男の嫁さんだなんて…」



「…ちがう…」



「えっ?」



「ボクは…ボクは…」


「姫川勝馬!!貴様ぁぁあっ、ミウ様に何をしたーっ!?」




「うぉーっ!?えっ、あんた、学校帰りに会った赤髪の美女!?」



「……ミウ……泣いてる……タオル…」



「うわぉっ!?更に、雨宿りの幼気美少女!?」




一体これは?突如、出現した学校帰りに出会った赤髪の美女と紫髪の幼気美少女。そんな彼女たちは土足でいきなり、我が家のリビングルームに上がり込んで来ていた。俺はさっぱり状況が掴めず、1人おろおろとする。すると、一頻り涙を流したミウが口を開いた。



「ぐすん、大丈夫。りっちゃん、大丈夫だよ。ボク、泣いてなんかないから…」



嘘をつきなさい、嘘を…。立派に綺麗な涙を流しているじゃないですか。てか、赤髪のお姉さん、俺に刀を向けないで…。




いきなり、現れたりっちゃんと呼ばれる赤髪のお姉さんは身の丈2メートルはあろう刀の刃先を俺に向ける。ギロリと睨む瞳はひときわ赤く、燃え上がる炎のようだ。


「…タオル…」




「ぐすっ、ありがと、ふぅちゃん…」




「全く、ミウ様を泣かすとは…。大罪を犯しておいてなお、更なる罪を重ねるつもりか?」




「………いや、いまいち状況が読めないんですが…」




俺が首を傾け、クエスチョンマークを出すと、りっちゃんと呼ばれる赤髪のお姉さんはいぶかしげな表情をし、刀を鞘に収めた。彼女のそのいぶかしげな表情が気になったものの、とりあえず、刀を下ろして貰った事に俺は安堵のため息を漏らす。




「ぐすん、紹介するね。この2人はボクの身の回りのお世話をしてくれるお友達なの…」



お友達って…。いや、友達が身の回りのお世話をするか?



「ごほん、ミウ様。お友達ではなく、執事です」



「……メイド…とも言う…」




「えぇ〜、お友達だよ〜」



「あの…」



「あっ、2人とも紹介するね。こちらがボクの旦那様になる勝馬くんだよ…」



「……ふん、私の名前は、クィン・イリアス=リリア=リベリオンだ。ミウ様直属の執事である!」




「……シュバル・イリアス=フィレナ=リベリオン……ミウのメイド…」




一方はドドンと、一方はチョコンと何とも対象的な2人なのだろう。




またまた、突然現れた赤髪の美女と紫髪の幼気美少女。そして、何が不満なのか突然泣き出す緑髪の美少女嫁さん。一体、これからどうなる事やら…。気付くと時間は既に深夜の12時。どうやら俺のラッキーデーは終わりを告げていたようだった。




梅雨降らば、上がり水あと、三人の美女!?(べんべん!)



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