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再活用(4)




日が暮れて、月が見え始めた。涼しく感じるのは雨のおかげ。香る風は大地が喜んでいるように思えた。




「ベランダ、冷えるよ?」




「えっ?あっ、うん…」




そう言い、俺に上着をかけてくれるのは緑色の髪をした美少女。すらりとした体は体育会系でスタイル抜群、更には彼女のその豊満な胸が俺の目のやり場を困らせる。淡く赤みがさす頬は柔かそうで、優しそうな瞳は髪の色と同じく緑にきらめき、穏やかに俺を見詰めている。




「それで、娘と結婚するのか?」




「そんな事、急に言われても…」




「鬼は気が短ぇんだ!するのかしねぇのか?てか、死ね!いますぐ、地獄に落ちろ!」




「不気味な事、言わんで下さい!」




さて、どこから説明しよう。



俺の名前は、姫川勝馬ひめかわ しょうま。ごくごく平凡な高校生である。そんなごくごく平凡な俺に起きた非凡な平凡。なんと我が家に鬼がやって来たのだ。


鬼とはつまり、雨雲に乗り、雷を落とし、おへそを取ると言われる、あの赤青黄色の信号機ならぬ神号鬼である。昔話で桃太郎や土御門などに退治され、人々に忌み嫌われる架空の存在。のはず、なのだが?




「馬鹿か?神や閻魔がいるのに鬼がいない訳ないだろう?というか、桃太郎は俺たち鬼の仲間だぞ?桃太郎の嫁は鬼の姫なのだからなぁ…」




「まじすか」




「まじだ」




「もう、話が違うでしょう!お父さん、もう邪魔!用事が済んだんなら、早く帰りなよ!」




「うぉっ、ミウ、そんな!?お父さんは、お父さんは、お父さんぁぁぁあっ!!」






いきなり、やって来た、この娘に泣かされている鬼の大将は俺にこう言った。



『責任をとって娘と結婚しやがれ!』



全く身に覚えのない責任。一体、俺が何をしたというのだろうか?しかし、それを聞こうにも、鬼の大将は当然分かっているのだろうなぁ、といった感じで、こちらを睨み付けている。




(怖くて、聞けない…ぐすっ)




「ちくしょう、いいか、婿どの!?ミウはこれから貴様の家で寝食を共にする事になる。……責任を果たせ、さもなくば……いいなっ!?」




(だから、その責任が何なのかが分からないっていってんだよぉぉおっ!!)




声にならない声で、叫びをあげる俺。誰か退魔師を呼んで…。




「て、えっ?俺の家で寝食を共にって…」




「うっ、という事でヨロシクね!」




緑髪の美少女は、そう言いビシッと敬礼をする。…何が何で何なんだ?俺には全くもって状況が理解出来ない。ただ、ぼぉーと帰っていく鬼の大将の背中を眺めているだけしか出来ないでいた。




何の説明も無しに押し付けられた責任。そして、鬼と言い張る男と美少女。全くもって理解が出来ない。これは、何かのドッキリか…?




「ゴメンね。いきなりで良く分かんないよね?」




そんな間抜けた顔の俺に緑髪の美少女は笑いかける。



「もう一度、自己紹介するね?…ごほん、ボクの名前はリアモンド・イリアス=ミウナーディア=リベリオン。長いから皆、ボクの事をミウって呼ぶんだ。ミウナーディアって所がボクの名前だから…」




少女はそう言い、紅茶をすする。そんな、紅茶の花の香りとあまーい香りとがマッチして、俺の鼻をくすぶる。




「はぁ…。あの、俺どっかで君に会った事あるかな?」




この少女に見覚えなんて物は無かった。無かったが、しかし、鬼の大将いわく、俺に責任があるのだから、彼女との面識があったに違いない。それが分かれば、少なくともその責任とやらの意味が理解出来るかもしれない。



「……どうかな?さて、本題は、鬼の娘であるボクと人間の息子である君が結婚するという事!」




と、いきなり、少女は俺の疑問を吹っ飛ばす。肝心な所はそこでは無いと彼女は言うのだ。仕方がない、ここは、思い切って聞こう。



「あっ、それなんだけど。あの、何てか、聞くのは失礼に値するかもしれないとは思うんだけど…俺の責任って、何かな?」




「君の責任?…あぁ、それは別に気にしないで。あれはボクのお父さんが勝手に言っていることだから…」




「勝手って…。でも、君と俺が結婚しなきゃならないのは、その責任ってもののせいなんだろ?」




「どうだろ?そもそも、君とボクとが結婚しなければならないのは、鬼神様のお告げだから…」




「鬼神様?」




「かつて、人は1つの種族だった。天界に住まう神や天使も、魔界に住む魔王や悪魔たちも。そして、君たち現世の人間たちもだ」




緑髪の少女、ミウはゆっくりと語り始めた。




「まず言っておくのはボクが鬼だって事。そして、鬼は全ての者の始まり。人が進化した過程で未だに、その確たる証拠が掴めないのは、もとより人間とは鬼の姿から退化した者だからなんだ。猿から進化したなんて言われているけど、その真ん中の進化系が無いのはそういう理由…」




「ちょっ、ちょっと待てよ。鬼なんていきなり、言われても信じられないし。てか、もし、それが本当だとしたら…。じゃあ、何か?俺たち人間は、あんたら鬼の劣化版てことか?」




「うん。そういう事になるね…」



「ふざけるな!何が始まりの種族だ!?いきなり、やって来て何を抜かしてやがる!?そうか、分かったぞ?お前ら、たちの悪い宗教団体だな?鬼がなんたらこうたらとか言って、俺たちから金を騙し…」



いきなり、突拍子もない話をされ、混乱した俺は口から出てくる言葉を考えもせずに次々にポンポンと出していく。すると、そんな俺を見たミウは、少し困ったような顔を見せ、緑色の綺麗な髪を上とあげる。そして、そこにあった物。それは…




「つ、角?」




「そう、角だね。鬼に角があるのは知っているよね?これは、ボクたち鬼にとって心臓と同じくらい大切な物。だから、本当は自分以外の何者にも見せてはいけないんだけれど……信じて、くれた?」



なんてこった。角だよ、角つの…。俺は、その場に座り込んでしまう。つまり、彼女が鬼であるという事は、彼女が言う事は事実?俺は、あまりにも唐突な真実に、しばらく何を考えて良いか分からないでいた。もはや、反論する言葉が見つからない。




「………それで?」




「えっ?」




「鬼神様のお告げって?」




まだ、信じられない。信じられないのだが、ふと、ミウが言う鬼神様のお告げとやらが気になった。だから、俺は反論する力を蓄える時間稼ぎにそのお告げとやらについて聞く事にした。




「あぁ、うん。『いずれ真実は闇から光へと曝される。その時、全ては鬼と人の子に委ねられるだろう。全てが終わり、始まる前に鬼と人の子をこの世に誕生させよ…』これが、鬼神様のお告げ…」




「……ゴメン、意味が分かんないんだけど?」




「つまり、鬼と人の間に子どもを作れってこと…」




「……それは、つまり…」




「……うん、ボクと君とで子作りするって事……」




鬼、物語りで知っていても現実に存在するなんて思ってもみなかった、唐突な真実。そして、更に聞かされるは、突拍子もない現実。これは一体どういう事か?ただ、1つ…。ただ、1つ分かっている事といえば、ごくごく平凡で何の取り柄もないそんな俺に非凡な鬼の嫁さんが出来てしまったという、やはり唐突な出来事だった。



こんにちは。

短編なのに、いよいよストーリー染みてきました。連載にしても良かったのですが、これい以上連載物を増やす訳にもいかないので…。とりあえず、短編集ってことで(笑)




では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。



鬼嫁さん物語り。

もう少し、続きます。



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