決着
短い更新です。明日は普通の更新を目指しています。
川を渡ってライゾウの元へ。そこには四人目のボウズがいた。つまりこいつも猟果ゼロ。今日の森は嵐の前と、様子がまったく違うという証拠だ。
「やっぱり移動しちゃったのかな、ラビットたち」
「うむ、数日で戻ってくると思うがな」
ポイズンラビットもモンスターとはいえ、そこは見かけが可愛らしいけどあまりお利口さんとは呼べない、通常のウサギと変わらない。鉄砲で追われオオカミに襲われて逃げ回っても、数日経てば元の餌場に戻ってくる。
問題は我々の活動を察したはずの、カメロンである。今回の嵐をどう感じ、どう行動するか?
これを実際に体験するのは、猟師としての財産なのだが……。
林道を渡ったところで、マヌケな銃声が聞こえた。四人で顔を見合わせる。
「マミ姉?」
ライゾウの反応が早い。馬の脚をはげます。俺たちも後に続いた。
途中で妖精をひろう。妖精も興奮していて、なにを喋っているか、半分意味が通じない。だが確信できた。
カメロンを当てたな。
三日吹く風の影響は、カメロンにもあったのだろう。そして我々の銃声に追い立てられた。そこで以前から目をつけていた池。マミの待つ池のほとりに、姿を現したに違いない。
マミの馬が見えた。カンジキの跡もついている。その先は池だ。駒を進めてゆくと、掘った穴に身を隠したマミがいた。少し放心している。俺がマミの立場なら、勝利の一服で気持ちの高ぶりを静めているところだ。
「……あ、ライゾウくん、それに親分」
しかしマミは、煙草を吸わない。
「マミ姉!」
ライゾウが馬から降りた。俺は騎乗のまま。何故なら……。
「やったか、マミ?」
「胸に当たってるはずですけど……」
あっちへ逃げて行った、と指差す。
「ライゾウはここに残れ。馬に水と餌を忘れるな」
俺たち三人は、マミの指差した方角へ。
しばらく行くと、カメロンの足跡が。そして撃たれてタタラを踏んだような形跡。すぐに血の跡を見つけた。
追跡すること、しばし。
「隊長」
サンペイが指差す。
黒い羽根のモンスターが、横たわっている。近づいて確認した。
カメロン……だろう。だろうというのは、実物を見るのは初めてだから、俺が断定する訳にはいかないからだ。
「デコ、馬に餌と水をくれてやれ。一休みしたら、ギルドまでひとっ走り。カメロンらしきモンスターを倒したから、専門家に確認してもらいたい」
「わかったわ」
「それから……」
できるだけ騒ぎにならないように。受付を相手にするのではなく、室長秘書のアドリアに伝えるよう、申しつける。
「おねえさまたちにも知らせるわ、見事カメロンを仕留めたってね」
「あぁ、頼むぞ」
餌と水はマミたちのところで与えるのだろう。デコはさっさと駒を返した。
「さて、問題はこのカメロン。動かして良いものかどうか」
「動かさない方がいいだろうという判断で、デコを使いに出したのだが。判断を誤ってたかな?」
「おそらくは賢明な判断かと」
しばらくして、馬にまたがったマミとライゾウが現れた。猟具を積んだソリを引いている。
「とりあえずひと仕事だ。毒消し袋をかぶせて、毒が散らないようにしよう。それからこれも重要な仕事だが……」
「森の中のコーヒーですな? 心得て御座る」
わかっている。やはりサンペイ、出来る男だ。
「しかしデコどの……フランカどのも不憫な。森の中のコーヒーにありつけず、出て行ってしまいましたな」
「町に戻ったら、甘いものでもおごってやるか」
カメロンに手を合わせたら、まずは作業だ。毒消し袋をかぶせ、雪をのせる。それから馬を休ませて、いよいよコーヒーブレイク。鉄のポットで湯を沸かし、熱いコーヒーを煎れる。森の中に、独特の香りが満ちあふれた。
「それにしても、案外簡単に獲れたね、ダンナ」
「獲れる時なんて、こんなもんさ。それに装備が充実していた。馬無しでは、こんなに森の奥深くまで来ることはできない」
装備の充実というならば、マミと彼女の鉄砲もそうだ。いまだ主流を占めるマズルロード、あんな鉄砲ではカメロンを仕留めることなど、到底無理だ。マミの測距魔法とマスターきららの鉄砲。これが揃ってこその猟果である。
「そして何より重要なのは、森の神が仕立ててくれた獲物との出会い。やはりこれに尽きる」
達成感はある。ひとつの仕事が終わったという、達成感だ。しかしレジェンドを仕留めたという、気分の高揚は無い。胸を張って大威張り、という気にはなれなかった。
プロは仕事を達成して当たり前。普通に仕事に取り組んで、普通に仕事を終わらせる。だから気分の高揚など、ありはしない。
「と言うのも味気ないな。町に帰ったら、一発どんちゃん騒ぎでもするか!」
「マスターきららに迷惑ではありませんかな?」
「マスターきららのことですから……」
マミが口を開いた。
「すでにどんちゃん騒ぎの準備をしているのでは?」
あり得る話だ。やつはどこからかカメロン駆除成功の話を聞きつけ、俺たちにサプライズを用意している。きっとそうに違いない。
肝臓の回転数を上げる。かかって来やがれ、アルコールと、心の中で念じる。
俺の戦闘体制は、すでに万全だ。




