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予感

普通更新と短い更新が入れ替わります。今回は短い更新です。


 まずはデコのフランカが、隊列から外れる。それからサンペイが別れた。俺は一人駒を進める。ライゾウはマミを送ってから、川の手前に配置する手筈だ。

 今回はより広い範囲で鉄砲を鳴らし、より積極的にマミの元へカメロンを誘導する作戦だ。それゆえに、かなりバラバラな配置となっている。そこから今度はライゾウに向かって合流。一同揃ったところで、マミと合流する。

 もちろんハッキリとしたカメロンの痕跡は、妖精リンダが発見したものしか無い。こんな単純な罠でカメロンが獲れるなど、都合よくは考えていない。

 しかし、三日吹く風のあとだ。事態がどう転ぶかはわからない。確実に言えることは、挑まない者に勝利が訪れることは無い、ということだけだ。

 期待はある。三日吹く風の前と後では、猟果がまったく違うことがある。嵐を避けて獲物が移動することがあるのだ。

 もしかしたら、カメロンも……。

 周囲に目を配りながら、未明の森をゆく。そろそろこの辺りが、毒草の繁殖地……という所まで来たが、ポイズンラビットの姿が無い。雪を掘り返した形跡も無い。

 移動したか。

 呪いを込めて舌打ちする。

 この場所に、カメロンは来ないかもしれない。かもしれないというのは、やつには遠方からポイズンラビットの存在を、探知する能力があるかもしれないからだ。

 持ち場のエリアを巡回だ。まだ日の出には時間がある。ゆっくりと遊ばせるように、馬を歩かせた。

 段差があった。通り過ぎた跡を振り返ると、水が流れている。わずかな段差と、ささやかな流れ。

「……………………」

 駒を流れの上流に向ける。ここでもゆっくり歩かせて、雪の下の水源を推察した。

 俺の予想では、この辺りに水源がある。それもごく小さなものか、にじみ出た程度のもの。地下のどこをどう通ったか、鮮度はかなりのものだと予感していた。

 馬が歩くのを躊躇した。降りてみる。低い背中から降りたにも関わらず、スネがすべて埋まった。

「この深雪はマズイかな?」

 再びライド・オン。深い雪から脱出した。

 自分のつけた足跡を見ると、みるみる水がにじんできた。それはもう。深い水溜まりとばかりに。

 ここはもう、件の水源なのだ。馬の鼻を返し、しばし後退。適当なポジションを選んで、馬を降りた。馬上でカンジキを着けてから、ゆっくりとである。それでもスネの六割が雪に埋まる。嫌になるほどのパウダースノーだ。

 予感をさらに突き詰めるなら、ここはカメロンの水場になっている、と予感していた。根拠は長年のカン。なにしろ相手はレジェンドだ。何の情報も無い。

 本当なら俺は、自分が担当するエリアを巡回しなければならない。しかしこの水場が気になる。

 ほどよい立木にまで馬を引き、手綱を結わえた。それからゆっくり、そして静かに、ここだと思うポイントに位置を定める。

 双頭のカメロン。臆病なカメロン。それが周囲を警戒しながら、この水場で水分を摂取するなら……俺がカメロンなら、どこを通る? いや、ここはベテラン猟師のカンに従うか。

 どこを通ってカメロンが着いたら、一番絵になる?

 池の中に茂みがあって、そこにカモがいれば絵になる。

 雪の平原、背後に森を背負っているシカは、どんな絵画よりも芸術的だ。

 つまり獲物というのは、あるべき場所にあるべき姿であるのが、もっとも自然なのだ。そしてそのような場所にこそ、獲物は着くのである。

 だから子供の絵本にあるような、カメロンの姿を想像する。その姿に相応しい景色を選んで、木の幹を背に腰を降ろす。

 姿をさらすのは、いかがなものか?

 そのように思われる方も居よう。しかし動かなければ、どうにかなるものだ。むしろ物陰からチラチラ顔を出したり引っ込めたり、動く方が目立つのだ。

 冬の狩猟の極意は、忍耐と信念だ。寒さに耐える孤独に耐える。本当にこの場所に獲物は現れるのか、という不安に耐える。

 忍耐こそが、猟師の極意なのだ。


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