爆誕! デコメイド!
本日も短い更新ですが、明日は通常更新を目標としています。
俺は有りだと思った。
「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び。押さば押せ、引かば押せ。それ即ち、死中に活を見出だす極意に御座る」
「プルプル震えていなければ、可愛らしいんですけどねぇ〜〜……」
「震えが止まっててもあの娘、顔が怖いよマミ?」
「どーすんだよデコ、マミ姉の妖精が怯えてるぞ?」
「私は可愛いと思うなぁ。予想以上に似合ってるよ? ……私の想定が低すぎたのかも知れないけど……」
まあ、みんな言いたい放題。なにしろメイド・ザ・デコの御披露目だからだ。
エプロンドレスは、マスターきららのものを借りた。パンプスや黒革靴はなかったので、編み上げの猟師靴のまま。頭の上のヒラヒラ、カチューシャというかベッドセットというか、アレも無かったからバンダナを三角にして縛っている。
もう一度言おう。俺は有りだと思った。しかし全体的に華やかさが欠落している。やはり頭のヒラヒラを、バンダナで代用したのが痛かったか? どことなくメイドというより、ただのお手伝いさん。もっとはっきり言うならば、どことなくババ臭い。
「なぁデコ……」
「なによ!」
トゲのある返事だ。せっかく人がアドバイスしてやろうというのに。……まあそれでも、アドバイスはしてやるんだけどな。
「そのポニーテール、ほどいてみないか? お前、髪は綺麗だろ」
「え、髪? 綺麗だなんて、そんな……」
いや、誉めたのは髪だ。お前じゃない。だからモジモジするな、スカートを握りしめるな。上目遣いでこっちを見るな。
「まあ、お前さんがポニーテールにこだわりがあるとか言うなら、無理にとは言わんが……」
「ほどくわよ! そのかわり、きらめき☆ビューティーなフランカさまに、ときめくんじゃないわよ、独身!」
お前本当に一言多いのな。それさえなけりゃ、見てくれはいいのにな。
髪を縛った糸をペーパーナイフで切って、デコは細くて柔らかそうな髪を、フワサとなびかせた。まさしく、「どうよ?」という顔だ。しかもその顔を、俺に向けている。
つまりこれは……俺に感想を言えってことだよな?
「どうよ?」
このデコ、本当に言いやがった。しかも俺を見ながら。俺一人を見ながら。
マミを見た。
感想を言ってあげてください、親分。という顔をしている。
サンペイを見た。
素直な感想をのべるべきですな、隊長。という顔だ。
そしてデコは、存在感の乏しい胸を張って、「どーだ参ったか」という顔をしている。髪に関しては、相当に自信を持っている証拠だ。
ならばそのプライドを傷つける訳にはいかない。デコはサンペイと並ぶ、チームしおからのスナイパー。マミの超人的なスナイプ能力をのぞけば、よそのチームから引っ張りだこになる存在だ。
だから成績はマミの陰に隠れて目立たないものの、デコの気分を害するようなことは言えないのだ。
そのことを踏まえて慎重に、言葉を選んだ。
「……うん、やはり思った通りだ。その髪は男の目をひくぞ、デコ」
「デコは余計よ、もっと素直になりなさいな」
このガキ、ちょっとホメたら調子に乗りやがって……。つーかコイツ、本当に髪は自慢だったんだな。それならもうひとホメしておくか。
「元がいいから髪が綺麗に見えるのか、髪が綺麗だから元が良く見えるのか。……髪が綺麗で元がいいってのが、正解なんだろうな」
……って、反応が薄いな。ドヤ顔で俺を見たままで……ポン! おぉ、顔が赤くなったぞ? ってか反応遅すぎだろ、お前。
「……知ってるわよ、そんなこと……バカ」
バカとか言ってくれてる割りに、なよなよとシナなんか作って。本当にデコの生態は理解できない。
「さあさあ、可愛らしいメイドさんが登場してくれたんだから、まずはコーヒーでも煎れてもらいましょうか! ってな訳でカムイさん?」
「なにかな、マスターきらら?」
「フランカちゃんを手伝ってあげて?」
「なんで俺が?」
「なにか言ったかな、ミスター・ブービー?」
お? そこを突いて来ますか? 確かに俺はブービー賞ですよ? だけどドベ決定戦で勝利したでしょうに。ブービーは言いっこ無しでしょ、ブービーは。
「手伝ってあげるの? あげないの?」
「慎んで手伝わせていただきます」
「素直でよろしい」
事態を見守っていたデコだが、俺が立ち上がるとスカートの端をつまみ、うやうやしく頭をさげた。
「も、もったいなくございます、ごごご御主人さま」
台詞の方は、かなりぎこちないけどな。
「じゃあ厨房へ行くか。火は俺がおこす。お前はコーヒーを煎れてくれ」
「わ、わかったわました、御主人さま」
こちらが笑ってしまうほど、板についてないメイドさん。
まあ、たまにはこんなのも悪くない。




