フラグとその回収
短い更新です
暖炉番をした俺やサンペイは、仮眠を取りながら。たっぷり寝たライゾウは元気だ。朝の部からカードに付き合っている。
昼は女性陣が料理。米料理でリゾットが出てきた。仮眠で回復した俺とサンペイは、旺盛な食欲で米料理を胃袋におさめ、食後のコーヒーを楽しむ。
「調子出てきたかしら?」
「ああ、おかげさんでね。すっかり疲れが取れたよ」
「再びカードで勝負ですかな?」
「今度も男女のチーム分けですが、敗者は執事かメイドになるというのはどうでしょう?」
マスターきららの提案だ。俺に依存は無い。
「執事かメイドならば、ドベを決めるのはいかがですかな?」
つまりドベが男なら執事、女ならメイド。明日の朝食の後片付けまで、みんなの下働きとなる。
対戦は総当たり。もちろん男性同士、女性同士の対戦もある。
「メイド服は可愛らしいですけど、お仕事は大変ですからねぇ〜〜……」
「可能ならば避けたいところで御座る」
「だったらみんな、仕事は全員で分担するとしても、メイド服を着てみんなにかしずくだけっていうのはどうかな?」
マスターきららの妙案だ。俺も「ん!」と唸ってしまう。
「それならば、敗者の負担も軽いな」
「イケるんじゃないか、ダンナ」
「男衆の一人が、明日の朝までかしずいてくれるの? ……悪くないわね。地位の高い男であればあるほど、面白味が増すんじゃない?」
「デコ助、さりげに俺を指名するんじゃない」
「それで済むのでしたら、マミさんもフリフリなメイド服、着てみたいですねぇ〜〜……」
「マミ姉のメイド姿、可愛らしいだろうなぁ」
ということで、戦闘開始。さまざまな思惑、願望、欲望が渦巻いているが、欲にまみれた奴から脱落してゆくのがこの世界。
「なんと、拙者がイチ抜けに御座るか?」
「やっぱりイカサマ無しだと、引きの強さや運がモノを言うわね」
サンペイのイチ抜け、マスターきららが二位突破。つまり、残った我々四人は欲にまみれている、ということになる。
「そりゃ、おねえさまのメイド姿は見たいけど……でもあたしの欲は、そんなに深くないわ!」
「う〜〜ん……メイド服を着てみたい欲は、あるんですけどねぇ〜〜……。マスターきららの服、可愛らしいじゃないですか?」
「マミちゃん、今からでも遅くないわ。猟師辞めて鉄砲職人を目指さない? というか手伝って」
「なんでこんな欲たかりな人が、二位通過できたんだ?」
三位通過はピュアボーイのライゾウ。四位は意外に欲深かったマミ。……でも、この娘の来歴を考えたら、欲が深くなるのも当然と言えば当然。
「オイラって意外と欲がなかったんだなぁ?」
「ライゾウ君は、私のメイド姿を見たいだけですからねぇ〜〜……。それは人類として、当然な欲望だとマミ姉さんは思うのですよ」
おい、そこの欲たかり。さりげなく、自分のメイド姿は一級品みたいなこと言ってんじゃねーぞ?
というか、ピュア・ヒューマン選手権みたいなこの場で、なんで俺がドベ争いしてんのよ? オジサンこれは納得いかないなーー。
「カムイさんは自覚も無しに、自分の中で渦巻くものを抱えてるから……」
「ダンナは悪くないと、オイラは思うよ? 悪いのは独身。独身がすべての根源なのさ」
「そうでなければ、拙者をいかがわしい店に、誘ったりしませんからな」
「そこが一番納得いかねーよ! サンペイだって行こう行こうって賛同したじゃん! なんだよ、この差は!」
マミが俺の肩を叩く。訳知り顔なのが、ブッ飛ばしたくなるくらいムカつく。
「……親分、落ちるのは一度だけ。自分に正直になって、落ちてしまえば楽ですよ?」
「落ちねーよ馬鹿。ってか、俺の何に正直になれってんだよ?」
そしてもう一人。
「なんであたしがピュアじゃないのよ!」
不満を口にする者がいた。
「あたしはピュアよ! 汚れなき乙女よ! こんな汚れきった中年と、一緒にしないでちょうだい!」
「まあまあ、フランカどの。乙女の欲望は訳すると、乙女の夢となりまする。夢見がちな乙女は、うっかりここへ落ちるものに御座る」
「カムイ! あんたなんかカードでギャフンと言わせて、あたしの前でかしずかせてやるんだから!」
ドベ決勝直前、デコは俺に宣言した。
「ダンナ知ってる?」
「何をだ?」
「こういうの、フラグって言うんだぜ?」
ドベ決勝、夕方に決着。
我らがデコは、メイド服に袖を通した。




