フランカ・フランキ
お友達に新作案を出されたため、明日以降更新が短くなる可能性があります。何卒御容赦を。
三日吹く風、初夜。
駿馬の駆け出しも及ばぬ早さで泥酔状態に突入した我々だが、誰からともなくカードで遊ぼうという話になった。ただ勝ち負けを決めるのではつまらない。明日の朝食をどちらが作るか、男女のチーム分けで対戦しよう。と、話の流れができた。
先鋒、サンペイ対マスターきらら。
「お手柔らかに頼みますぞ、マスターきらら」
「こちらこそ、拙いものをお見せしてしまいますが、どうぞよろしく」
ちなみにこのバトル、所詮は素人のお遊び。イカサマは無しということで話がついている。もっともその瞬間、マスターきららは「ちっ」と舌打ちしたのだが……。
そして一戦の開幕。
スリーカード、フラッシュ、ストレートと、マ三本先取したスターきららの圧勝。
「……おそるべし、鉄砲職人」
「お粗末でした」
思い出した、そういえばマスターきらら、カードは狂気のレベルで強かったのだ。
しかし敵はすでに、主力を使い果たしている。残るは酔っぱらいのマミと、ケツの青いデコ。ライゾウの野生が目覚めれば、勝ち越しも可能だ。
ということで、中堅戦。ライゾウとデコの対戦。
「なによこれっ! なんであたしのフラッシュが負けるのよっ!」
「だってオイラ、フォーカードだからね。仕方ないさ」
ライゾウの、野生爆発。完膚なきまでにデコを叩きのめし、一方的な勝利。
つまり、明日の朝食は俺とマミの対戦で決する。
まずはワンペアで俺が先取。しかし次の一戦では、マミもワンペアを完成。勝負をタイに持ち込む。お互いに低い手役ではあったが、渋い駆け引きで二対二の同点。残る一戦にすべてが持ち越された。
「ダンナ、負けたらオイラたち、明日は早起きだぞ……ウイッ」
「勝負は気合い! 気持ちで負けてはなりませんぞ! ……ヒック」
応援に深刻さが無い奴らだ。っていうか飲み過ぎだろ、バカタレ。
「さあ、マミちゃん! オーラスよオーラス! ドカンと一発、大きな役を上がってやりなさい!」
「おねえさま、あんなスケベな独身男に負けてはなりませんわ! 隙あらば夜の町を出歩こうとする浮気者、とっちめて下さいまし!」
こいつらもこいつらで、ロクでもない応援をしてやがる。酔っぱらいボイスの、ウイッとかヒックとかは入ってないが、すでに顔は酒で真っ赤。立派な泥酔者である。特にデコなど耳はおろか、広々とした額が赤色発光してそうな塩梅だ。
さあ、オーラス勝負……どん!
せこいワンペアでマミが勝利をもぎ取っていった。
「やったーーっ! 明日は朝寝決定よっ! さすがマミちゃん、頼りになるわっ!」
「ほっほっほっ! ザマァないわね、独身! せいぜいこのフランカさまのために、美味しい朝食をこしらえることね!」
「……ふっふっふっ……ライゾウ君? ふっふっふっ、これがお姉ちゃんの実力ですよ♪」
「マミ勝ったの? おめでとう!」
髪の中から妖精まで出て来て、女性陣は大騒ぎ。
だが俺のアルコール漬けの脳みそは、割りとどうでもいいことに気がついた。
「なあ、デコ」
「な、なによ!」
「独身男というならウチの男性陣は、すべて独身なのだが。どうして俺の代名詞みたいになってるんだ?」
何故かは知らないが、デコの顔がボンという勢いで湯立った。まるでサルの顔かサルの尻、よくそれで生きていられると思うような赤ら顔だ。
「ななな何よっ! あたしがアンタのことばっかし見てるってのっ!」
「いや、そうは言ってない。というかお前、俺のことばかり見てたのか?」
「誰が言ったのよっ、そんなこと!」
「いやお前が、今さっき」
「知らないわよっ! そんなことっ!」
ポンと俺の肩を叩く者がいた。サンペイだ。何故か訳知りがおで、うんうんとうなずいている。
「わかりますわかります、隊長どの。ですが乙女を責める朴念仁ほど、罪作りな生き物は居りませぬぞ?」
「俺は人参じゃないぞ?」
「ボク人参では御座らぬ」
「しかしな、忘れてはならないことがある」
「なんでしょうかな?」
安酒のボトルを開けた。デコのグラスにドブリと注ぐ。
「酒がある。まずはグッといってみようじゃないか!」
「カムイ、あんたも飲みなさいよ?」
「ならば酌をしてくれ。美人の酌は酒を美味くする」
「誰がアンタなんかにっ!」
舌を出してアッカンベー。ツンとそっぽを向いた後、腕を組んだままチラリと俺を見る。
「でもまあ、おねえさまやマスターきららの手を、煩わせる訳にはいかないわね。貸しなさい!」
酒瓶をひっ掴んで、そこまで注ぐ? という位、なみなみと注いでくれた。
「ほら、あたしのお酌よ! ありがたく飲みなさい!」
「……うむ、やはりひと味違うな」
「そんなことあるわけないじゃない! バッカじゃないの!」
楽しい百面相だ。見ていて飽きない。だが、男の約束は男の約束だ。
「酌をしてくれた礼の意味も込めて、明日の朝は旨いもの食わせてやるからな」
「ホントに? 絶対よね!」
テーブルに手をついて、身を乗り出して。お前どんだけ食い意地張ってんのよ?
「コッテリしたもの食わせてやる。胃袋の調子、整えておけよ」
「わかったわ、期待してるからね!」
と、俺のグラスをあおった。
元々酔っている。そこにストレートのウイスキー投入だ。
……クラリ……ぼて。
「あらあら、フランカちゃん。飲み過ぎたみたいね」
「お水、持ってきますね〜〜……」
立ち上がったマミの足元も、かなりあやしい。ライゾウがすぐに付き添った。
「とりあえずカムイさん」
「なんですかな、マスターきらら?」
「フランカちゃんを床に寝かせておく訳にはいきません」
「風邪をひきますからな」
床の気温は、室温の中でもっとも低い。
「とりあえず抱き上げて、膝の上で眠らせてあげて下さい」
「ちょっと重たいですなグヒ……」
マスターきららの足刀蹴りが、俺の頬骨にヒット。
「やるのかしら、やらないのかしら、カムイさん?」
「慎んで、やらせていただきます」
デコに水を飲ませては吐かせて、を繰り返す。青ざめていた顔色はアルコールが薄まったせいか、少しずつ生気を取り戻してゆく。
「体調が心配だわ。カムイさん、明日の朝まで介抱してあげて」
「仕方ありませんな」
悪態吐かれても態度が悪くても、こんなデコでもウチのメンバー。立派なポイントマンだ。デコの不調はチームの成績にかかわる。
「それじゃあ今夜はお開きね」
「オイラも眠くなってきたな」
「隊長、夜中まで暖炉番をお願いできますかな? 交代しますので」
女性陣はデコを置いて、自室に戻ってゆく。サンペイとライゾウは、布団にくるまってソファで高いびき。
残されたのは、暖炉のたき火と俺とデコ。そしてグラスの酒。
窓の外は雪と風。煙突から吹き込む風が、時折暖炉の炎を揺らす。
「……むに」
妙な寝言、デコは俺にしがみついてきた。
「……カムイ」
「なんだ?」
「……………………」
そのまま寝息を立てる。やはり寝言だ。
三日吹く風、初夜の出来事だった。




