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鉄砲を「執る」

ドリームな鉄砲の登場です


 チームしおから最大の弱点は、いかに再装填が早くとも、門数が少ないことにある。

 一発撃ったら砲煙で視界は真っ白。いかに二連鉄砲でも、すぐに同じ場所をねらうことはできない。別な場所をねらうか、第二射手が射かけるかしないと、同じ標的を撃つことはできない。

 それと、いかに再装填が早くともロスタイムは存在する。せっかく張った弾幕が薄くなってしまうのだ。

 さらには線攻撃、面攻撃がしにくいところにある。城の弓矢隊などは大勢を線、面に並べ、一度の射撃で大量の矢を放つのだ。当たろうと当たるまいとかまわない。どんどん矢を放ってエリアから敵を追い出すのだ。我々には、こうした真似ができない。

 そして致命的な弱点を補うには、門数が必要になってくる。

 現状二人四門というのは、繰り返し述べている。これは狩猟に適した数ではあるが、戦さには適していない。

 だがもし、デコが復帰しマミが単身とはいえ鉄砲を持てば、間違いなく状況は覆る。

 三人六門、マミは測距という人員で戦さ対応を考えたことがある。迫り来るオークの群れ。まずはマミが距離を測り、一〇〇の間合いでデコがスラッグを一発。方角を変えて、二発目を発射。まだ勢いは止まらない。デコは再装填。距離五〇で俺の射撃。次はライゾウがかまえ、俺が再装填。ライゾウの射撃で群れの勢いが衰え、デコのフォローで群れは止まる。さらに俺。ここで群れを退けたい。そしてライゾウ……。

 そんな妄想をしてみたが一人ずつ撃つことになるので、どうしても弾は一発ずつしか発射できない。つまり、一度に複数の敵を討ち取ることができないのだ。

 群れを相手にするには、これではジリ貧だ。いずれ数に押されて攻め込まれる。

 だがマミが鉄砲を持てば。

 マミとデコのタッグで、一度に複数のオークを倒す場面が、一度発生する。続く俺とライゾウでは、二度発生する。マミは単身、再装填が早い。ここで一発、続くデコが二発。これはオークの前進を止める弾幕だ。そして俺たちが複数のオークを倒す。

 ……こうも上手くいくとは限らないが、流れは悪くない。たった一門でも、数が増えるとこうも勝手が違ってくるのだ。

「さて、それじゃあカムイさんに、新式がどれだけ優れているか、御披露目してあげるわね」

 マスターきららは小窓を開けて、マミに声をかける。

「あ、親分」

 マミはバツの悪そうな顔をした。そりゃそうだ。マミには以前、お前に鉄砲はまだ早い、と言ったんだからな。

「マミちゃん、カムイさんが新式とマミちゃんの性能を見たいんだって」

「は、はぁ……」

 いたずらが露見したガキのように、マミは俺の顔色をうかがっていた。

 別に、怒ったりするつもりは無いんだが。

 いや、ここはにっこり笑って、咎めたりなんかしないよアピールをしなければ。

 ……だめだ、上手く笑顔が作れない。俺なりに一生懸命頑張ってはみるのだが……。笑顔になれない俺が悪いのか、マミはおずおずと店に戻ってきた。

 店舗に戻る。ライゾウが自室から戻ってきた。鉄砲を片付けてきたのだ。デコも店に入ってくる。少し顔色が悪く見えたが、マミが鉄砲を抱えているのを見て、笑顔になる。

「おねえさまの鉄砲ですか?」

「え? ……はい、まぁ」

「マミ姉、身体は大丈夫なのかい?」

「御心配おかけしました。病気じゃないから、大丈夫ですよ」

 笑顔をみせるが、作り笑いだ。

 マスターは鉄砲を受け取り、俺に差し出す。手にした途端、思ったのは「あ、軽い」であった。筒が一本減ると、こんなに違うものなのか?

「驚いた?」

 ニヤニヤ笑う、マスターきらら。

「あぁ、すごいね。こんなに軽く仕上がるものなのか、鉄砲って奴は……」

 マミには丁度良い。そんな重さだ。

「その秘密はこれだな、マスターきらら?」

 銃身(バレル)に目をやる。

 ……細い。大量の粒弾を吐き出す、俺やライゾウの十二番径。いや、デコが使うそれより細身の二十番径でさえ、大砲に見える。

 マミの鉄砲は、それほど細く仕上がっているのだ。

「はじめて見た? 四一〇番、スラッグ専用鉄砲よ」

「こんなに細いバレル、どうやって鍛えたんだ?」

「企業秘密よ」

 ザマミレコノヤロ。ビックリしたか、とでも言いたそうな顔をしている。

 外観を眺める。無駄な装飾、彫刻の類は一切排除していた。ただしMADE IN Kirara の刻印と、帽子のトレードマークは記されている。

 レバーを動かし、くの字に折ってみる。細かいが機関部もしっかりしていて、銃身内腔などは……。

「うっ……なんじゃこりゃ!」

「どうした、ダンナ?」

「何があったのよ?」

 思わず唸ったあとに目を外し、マスターきららを見た。また内腔を覗き込む。

「世紀の新発明よ」

 マスターきららの声がするが、内腔から目が離せない。

 螺旋状のマークが見える。……一体、これは?

「弾を螺旋状に回転させることで、燃焼ガスの圧力を均等に弾のお尻に与えてやるのよ。そうすると飛距離はのびて、まっすぐ飛ぶようになるの」

 言っている意味はわからない。だが、すごい発明だということはわかる。

「俺にも見せてくれよ」

「待ちなさい茶色、あたしが先よ!」

「ちょっと待って、ちょっと待って」

 妖精リンダがしゃしゃり出て、ライゾウとデコを遮った。

「ここはアタシがひとつ……」

 リンダは機関部側から銃身に入る。そしてキリモミしながら銃口側から飛び出してきた。

「やっふ〜〜っ!」

「なにそれ、どうなってんの?」

「待てやデコ、オイラが先だ」

 二人でマミの鉄砲を奪い合い、手にした途端に「軽い!」と口にして、内腔をのぞいては「うっ!」と唸る。

 ……まったく二人とも、俺と同じ反応しやがって。

「それじゃあみんな、試し撃ちにいくわよ!」

 マスターきららがポンポンと手を打った。

「え? 試し撃ち?」

「なによ、この鉄砲の性能、見たくないの?」

「いや、そりゃ見たいですけどね」

 デコの鉄砲は距離一〇〇や一五〇で性能を発揮する。

「マスターきらら、それだけデカい顔して試し撃ちするんですから、デコの鉄砲より距離を取るんでしょ?」

「ふふん、まあね」

 そんな場所、どこにあるんだよ?

「いいから、ついてらっしゃい」

 マミの鉄砲を袋に詰めて、さっさと店を出る。俺たちは後に続いた。きっちり鍵をかけて、マスターきららは歩き出す。

「マミ姉の鉄砲って、そんなにすごいのかい、マスター?」

「馬鹿ねぇ、マスターきららがおねえさまのために鍛えた鉄砲よ? すごくない訳ないじゃない」

「じゃあフランカさん、具体的に言って何がどのようにすごいんでしょうね?」

「……う、わかりません」

「それは見てのお楽しみだろうよ」

 若い三人がさえずりながら先をゆく。だがマミは?

 ポツンと一人、いたたまれないという表情で、立ちすくんでいた。

「どうした、マミ?」

「親分! ごめんなさい!」

「?」

 いきなり頭をさげられても、俺としては訳がわからん。

「実は親分に内緒で、私の鉄砲を作ってもらってました! お前にゃまだ早いって言われる前から! ……本当に、申し訳ありません!」

 お前にゃまだ早い?

 あぁ、妖精に肩入れして、オークに復習しようとした時か。……なるほどねぇ、確かに自分専用の高性能鉄砲があれば、妖精リンダの敵討ちって発想をするよな。マミらしくないとは思ったが、マスターきららが背後にいたのか。

 まあ今この場は、マミを許したようなことを言ってやらないとな。

「なんだ、マスターきららとそんなビックリを仕込んでたのか」

 下げた頭を軽くポンポン。それから撫で撫で。

「お前が猟師になりたい、生きる術を身につけたいってのは、真剣な気持ちだって知ってるよ。あの時は、マスターきららとツルんでるって知らなかったからさ、あんな物言いになっただけだよ」

 マミはこっそり、俺の顔色をうかがうように、視線をあげた。

「お前が鉄砲を持ってくれると、大変に助かる。……よく決心してくれたな、マミ」

 胸の前で両手を合わせて、花がほころぶように笑顔を見せる。ホッとした、しあわせです。そんな意味合いのあたたかな顔。

 生き物を殺す職業に就くのに、その顔は無いだろうと感じる方もいるかもしれない。

 しかしマミは肉親を、飢えと寒さで失っているのだ。誰からも必要とされない孤独を知っている。

 マミは生きるため食べてゆくため、今日ここで鉄砲を執る。


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