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狐憑きの時空旅  作者: 翡翠 蛍
序章
9/12

その9 ~再び蝕~

現代編の最後です。

更に時は流れ…。

2年の月日が流れた。

朔夜は15歳、陽茉莉は13歳、道一は17歳になっていた。


皆一流と言って差し支えない陰陽師になっており、それぞれ得意とする術も磨かれていた。

朔夜は式神遣いとして一流の才を発揮していた。

朱魅、梔子達を扱わせれば右に出るものは居なく、とりわけ彼等との憑依合体を行っての式の展開は達人クラスであった。


陽茉莉は式紙遣いとしての才能を発揮した。

式紙とは己の血液を混ぜた墨で紙や布、髪などに術を施し使鬼しきとして操る方である。

とりわけ髪の毛を用いた式は達人クラスであった。


道一は格闘術に才能を発揮した。

己の召喚する“水神の鉾”と言う式を用いての格闘術。

棒術や剣術なども交えたオリジナルの格闘術は3人の中でも最高の実力であり、他の追随を許さなかった。




「何か最近飽きて来たなぁ。」

朔夜がひとちる。

朔夜はこの2年で急速に身長が伸び、引き締まった体とうっすら青色の髪の毛が哀愁を漂わせ、最近ではかなり女にモテるようになった。そこで他の女になびかないのは葛の葉を始めとして朱魅や梔子、それに陽茉莉と言う超絶美女・美少女が傍に居る為である。


「飽きたって何に?」

朔夜の独り言の様な呟きに陽茉莉が答える。こちらも少女が殻を破って女になる直前の危うい美貌でクラスの男たちを惹きつけて止まない。


「何か最近俺達としか組手やってないじゃん?何かマンネリって言うか飽きて来たっていうか。」

「しょうがないじゃない。他にやる相手いないんだし。」


「この時代にも少ないとは言え妖怪たちは残っている筈だぞ。それを探してみるのはどうだ?」

道一の言う通り、妖怪の減った現代でも居ない訳ではない。

誰かが「居る」と信じていればそこにいる、それが妖怪と言う存在である。

その信望が薄らいだため数こそ減らしているがコアなマニアが信じている妖怪達はこの時代でも存在はするのだ。


「いや、そう言うのって探すのも面倒じゃん?もっとこうお手軽にいっぱいいればいいのになぁ、と思ってさ。」

とは言え、それは現代では叶わぬ願いである。そしてそれが分かっているからこそ朔夜もぶーたれているのである。


◆ ◆ ◆


その日、いつもの河原は緊張に包まれていた。

「朱魅、梔子、周防、虎目、準備は良いか?」

「はい。」

「いつでも。」

「緊張しますなぁ。」

「合体合体~~!!」


遂に朔夜が式神4体と同時に憑依合体をするのだ。

「我、汝らとともに歩まんとせん者也。我が名は葛野朔夜。」

「我、汝とともに歩まんとせん者也。我が名は朱魅。紅狐の朱魅。」

「我、汝とともに歩まんとせん者也。我が名は梔子。黄狐の梔子。」

「我、汝とともに歩まんとせん者也。我が名は周防。蝦蟇の周防。」

「我、汝とともに歩まんとせん者也。我が名は虎目。万力の虎目。」



「憑依…。」

「「「「「合体!!!」」」」」


びかぁっ!と空間を焼き尽くさん勢いで光が迸る。

それが止んだ時、そこに立って居たのは2本の尻尾に2組の狐耳、短い角に水掻きの付いた掌の朔夜であった。


「こ、これは…。」

「凄まじいね。」

陽茉莉と道一も言葉が無い。

それ程までに4体同時憑依合体を行った朔夜の霊力は凄まじかった。


「私の全力にどうやら追いついたみたいだねぇ。」

葛の葉がくるりとトンボを切って狐の姿に戻る。


「良いだろう。掛かっておいで、愛しい我が子よ。お前の暇を埋める相手をしてやろうじゃないか。」


にやり


笑みを浮かべたのは朔夜か葛の葉か。

凄まじい勢いで距離を詰め、拳を交わす。


ずばしゅうぅぅっ!

2人の間に発生した衝撃波のみで弾き飛ばされる陽茉莉と道一。


「こ、これが…。」

「本気の葛の葉さんの力…。」


あははははははっっっ!!!


高らかな笑い声を上げて飛び回る朔夜と葛の葉。

陽茉莉たちは完全に傍観者となるしかなかった。


◆ ◆ ◆


「木生火!【樹海よ降誕せよ】【樹海より放たれし矢】よ、【木の葉】を纏いて突き進め!【炎竜】よ、【灼熱の碧き炎】を纏いて【焔火】を放て!」

「水剋火!【雨乞い】【水神の怒り】」

嘗て朔夜を“蝕”へと導いた葛の葉の式であるが、実力が伯仲している今、その勢いに呑まれることは無い。

「土剋水!【土割竜】よ、水を飲み込み進め!」

「木剋土!【木葉乱舞】」


幾合も術の応酬が続くが決着が付かない。

先に焦れたのはやはりと言うべきか朔夜の方だった。

「これで決める!金生水!【黄金の刃】を纏いし【矢の嵐】よ、【水龍刃】を巻き込み天より降り注げ!」

後半に来ての4式同時展開。

既に体力も霊力もお互い限界に近い。

これで勝負が決まらなければ勝負は引き分けに終わる。


「来るか!受け止めてやるよ。土剋水!【土の壁】よ、水をき止めろ!」


どがしゃあああぁぁっ!!


凄まじい勢いで土壁に水が押し寄せる!

「くっ!これはギリギリってとこだね!!」


1分ほども水と土のせめぎ合いは続いたかに思われた。

お互い、霊力も限界に近い。


しかしそこは地力の差か。

次第に土の壁が水を押し返し始める。

「どうやら勝負あった様だね。」

葛の葉が安堵の声を上げた時…。


「--!?朔夜!?」

朔夜は霊力を使い果たし膝を折り、息を荒くしている。

「不味い!このままだと土に飲み込まれてしまう!」


葛の葉の声に陽茉莉と道一は朔夜の傍へと飛び出した。


「【樹海の降誕】」

「【木遁華樹乱れ咲き】」

2人は同時に木属性の式を展開する。


どがしゃあああぁぁっ!!


再び凄まじい勢いで式と式がぶつかり合う。




と…。




ぐにゃり




「--!?」

いつか見た風景。

強大な式に応じるかのように空間が歪み始める。


「まさかまた“蝕”!?」



「待て待て待て待て!!!今度こそ逃がしやしないよ!!」

葛の葉は精一杯手を伸ばす。

陽茉莉、道一もそれぞれ朔夜の手を掴んでいる。


(これなら引っ張り出せるか??)

葛の葉がそう思った時であった。




ぐにゃり




「--!?」

蝕は更に大きく膨らみ4人を丸ごと飲み込んで閉じた。

1人でも読者がいる限り書き続けます。

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