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狐憑きの時空旅  作者: 翡翠 蛍
序章
8/12

その8 ~5年後~

1人でも読者がいる限り書き続けます。

時は流れ…。

朔夜は13歳になっていた。

この5年で急速に背が伸び、引き締まった体には激しい鍛錬の為か、細かな傷が無数についている。しかし全ての傷は誰かに付けられたものではなく、全て自らの鍛錬の中で付けた物である。

髪はやや青味がかった黒色。

やんちゃ坊主の色が抜け、青年への階段を急速に駆け上っている、そんな印象を受ける。


「朔夜兄ちゃん!葛の葉姉ちゃん!」

朔夜が振り向いた先には日本人形の様な少女がキラキラとした瞳でこちらを見つめていた。

この少女 - 陽茉莉は今年で11歳。腰まであるカラスの濡れ羽の如き黒髪を首の付け根辺りで一つに束ね、さらりと下ろしている。

まだ少女の域を出ないが、あと数年もすれば美しく花開く事であろう。


「陽茉莉、道一には会わなかったのか?」

「いつもの河原で先に待ってるって。人払いの式を施しておくから早く来いって言ってたよ。」

「そっか。じゃぁ行こっか。」


2人は連れだって歩き出した。




2人が何時もの河原の近くに来たら急に急用を思い出して帰らなければならない気分になってきた。

が、本当にそんな事態が有る訳では無く、これが人払いの結界である。

「「僕らはいつも仲良し。」」

合言葉を2人が唱和すると空間に裂け目が出来る様に道が出来、2人はそこを進んでいった。


「お待たせ。」

「ああ。」


ぶっきらぼうな返事だが決して機嫌が悪い訳では無い。愛想が悪いだけなのだ。

朔夜も陽茉莉もそれを解っているから何も言わない。

道一は朔夜よりも2歳年上の15歳、今年受験生なのだが、圧倒的優秀な成績により受験勉強などどこ吹く風である。


「じゃぁ始めようか。」


◆ ◆ ◆


朔夜:「【金気を纏いて刃と成せ】」

道一:「【水神の鉾よ刃に宿れ】」

陽茉莉:「【踊れ炎よ刃に宿れ】」


3人が次々に武器を召喚する。

朔夜は元より、この数年間で陽茉莉も道一も式の扱いを覚えた。

朔夜は金、道一は水、陽茉莉は火の属性に偏った性質を持つ。

それぞれ得意な属性を武器に纏わせオリジナルの武器を作り出した。

朔夜の武器は脇差より一回り長いくらいの刀で、ユラユラと黄金色のオーラが立ち上っている。

道一が作り出したのは三つ叉槍であり、青白いオーラが立ち上っている。

陽茉莉の武器は二刀流の小剣であり、紅いオーラが立ち上っている。

それぞれ、金、水、火の属性の武器だ。

「行くよ?」

「「Go!!」


掛け声とともに3人は自由組手を始めた。

「始まったの。」

葛の葉は“可視化”して朔夜から抜け出ている。取り憑いたままでは霊力が高すぎて勝負にならないし、かと言って“実体化”すると弱すぎて勝負にならないからだ。

「今日は誰が勝つに賭ける~?」

暢気な声は子鬼の虎目である。

「「勿論!朔夜様ですわ。」」

朱魅、梔子の姉妹は俄然朔夜びいきである。

「ふむ、この属性だと相性は三竦み、難しいところですのぅ。」

周防は冷静に分析をする。


結局虎目:道一、姉妹:朔夜、周防:陽茉莉となった。

賭けの対象は昼飯である。


「土剋水、土気を以て水気を剋す!【土割竜】」

最初に仕掛けたのは朔夜であった。

地面を割り現れたのは竜の頭。

それが陽茉莉を飲み込まんばかりの勢いで顎を開き襲い掛かる!


「させるもんですか!木剋土、木気を以て土気を剋す!【樹海の降誕】」

陽茉莉を飲み込まんとしていた土の竜が突如現れた木々に阻まれ、その根によりガタガタに引き裂かれる。


2人は相対し、にやりと笑みを交わした。


と、その隙に…。

「木生火、木気を以て火気を生す!【焔火】」

「「げっ!」」

【樹海の降誕】を飲み込んで強大化した【焔火】が朔夜と陽茉莉に襲い来る!!


「「ふんぎゃああぁぁっ!!」」


敢え無く2人はリングアウトとなった。


「敵は2人居る事を忘れてはいかんぞ、2人ともな。」

漁夫の利的な勝利だが、目の前の相手に夢中になり過ぎた2人の敗因であった。


「何の!今度は式無しで勝負だ!!」

ゴロゴロと転がされた朔夜は起き上がると道一に向き直った。


各々の作り出した刃を揮い、三つ巴の乱戦を繰り広げる。


その後も模擬戦は続いた。

一進一退、3人の実力は伯仲しており、結局優劣付かないままにバトルは終了した。


◆ ◆ ◆


「しかし、皆強くなられましたのぅ。」

「アタシ達じゃ1対1ではそろそろ負けちゃうかもね。」

「まだまだだよ。俺、もっと強くなりたいんだ。」

「朔夜、お主は随分と強さに拘るが何か目標でもあるのかえ?」

「俺の目標?それは…。」


「それは??」


「いつか母さんに勝つ事!」


◆ ◆ ◆


「私に勝つ事が目標とはのぉ。九尾の私にはそうそうの事では勝てんぞよ?」

「分かってるよ。まずは朱魅達全員と合体出来るまでのキャパシティを蓄える事が目標なんだ。」


今の朔夜では式神3人が良いところだろう。それ以上になると容れ物である朔夜の体が容量オーバーで弾け飛んでしまうだろう。


「4人と一緒なら母さんともきっといい勝負出来ると思うんだ。そんでそうなったら…。」

「??」

「母さんに尻尾を返して母さんも自由に生きられるだろう?」


この子は…。

強くなりたい理由が私の為とはの。


「…楽しみにしとるでの。」

「うん!任せて!!」

次回で異世界編に行く予定です。

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