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狐憑きの時空旅  作者: 翡翠 蛍
序章
7/12

その7 ~再会~

現代編スタートです。この辺りはささっと行く、予定です。

多元宇宙?もう少し分かりやすい言い方をして貰えないか。」

「良いだろう。これはこの世界ではパラレルワールドとも呼ばれている概念なんだ。」

言いながら道一はサイコロを取り出してくる。


「振ってみてくれ。」

言われるがままにカラコロと音を立てサイコロは“5”の目を出した。


「どうだ?」

「どうだ、と言われても・…。サイコロが5の目を出しただけじゃないか。」

道一は満足気な表情を浮かべてサイコロを手にした。


「そう、その通り。朔夜君は今サイコロを振って5の目を出した。ではこう考えてはどうだろう。この世界にいる朔夜君は5の目を出したが、この世界と似た別の世界では6の目を出した朔夜君が居たかもしれない。」

「…?まだ良く分からないな。数字が違うだけじゃないのか?」

「ではこれではどうだ?今回俺達はただ単にサイコロを振っただけだが、別の世界では数字の出目を当てる賭け事をしてたとしたらどうだ?奇数が出た方の勝ち、とでもしていたら今の朔夜君は勝負に勝っていて隣の世界の朔夜君は負けて幾ばくかの金を取られて居たかも知れない。」


「成程…。小さな違いの積み重ねが多数の世界を作ると言いたい訳か。」

「理解力が良くて助かる。これはあくまで一例だが、これを繰り返せば似たような全く違う世界がこの世には無数に存在する事になる。或る世界ではひょっとしたら俺は女かも知れない。或る世界ではお前は俺よりはるかに年上かも知れない。そういった世界が無数にあるという考え方をパラレルワールドと言うんだ。」


「…それが今回の蝕と何の関係が有るんだ。」

「そこだ。」


「安倍清明は蝕を自在に操って人を生き返らせたと言ったな?」

「確かにそうだ。」

「恐らく彼は蝕がパラレルワールドを引き寄せる力である事に気付いたんだ。」


「つまりは、そうして彼は、“死んだ人が蘇ってくる世界”或いは“その人が死んでいなかった世界”を引き寄せる事に成功したんだろう。」


◆ ◆ ◆


「…。」

気付けば茶はすっかり温くなっていた。

「あ、アタシお茶入れ直してきますね。」

陽茉莉が居ても立っても居られないとばかりに席を立つ。


「それで、俺はどうすればいい?」

「そこだ。その点に関しては君自身が決める事だ。」

「俺が?」


「さっきも言っただろう。蝕は起こした本人、この場合は君が望んだ世界を創造する力だと。蝕に呑まれるとき、君がどんな思いを込めたかによってこの世界のありようは変わってきている筈なんだ。」


「…母さんと、朱魅や梔子、母さん達みんなとずっと一緒に遊んでたい。」

それを聞いた道一はニヤリ、と表情をほころばせた。

「それなら恐らく大丈夫だ。」


「君が望んだ通り、この世界には葛の葉さんやほかの使い魔たちも来ている筈だ。」


その言葉に一縷の望みを託し、ほっとした表情を見せる朔夜。

しかしすぐに顔を曇らせる。


「しかしこの広い世界のどこに…。」

不安げな朔夜にまたしても道一は言葉を重ねる。

「それについても心当たりは有る。」


「付いてくると良い。」

道一はそう言うと返事も待たずに歩き始めた。


◆ ◆ ◆


神社の境内に出た3人。

陽茉莉は完全に金魚の糞なのだがすっかりくっついて来ている。

「一体どこに?」と聞いても「来れば分かる」とすげない返事だ。

仕方ないので黙ってついて行く事にした。




神社にはりつくように伸びた森。

その奥には巨大なクスノキが聳え立っている。

それは千枝の楠と呼ばれる信太森神社のご神木だ。

そこまで歩くと道一はくるりと振り向いた。

「ここは葛葉がどうだ?何か感じないか?」


一方の朔夜は…。

「母さん…。」

一人静かに涙を流していた。



「間違いない。ここに母さんは眠っている。」

そう言うとおもむろに木に近付き、手を触れた。

ぽぉっと光る手。

彼はその両手を優しく楠に重ね合わせる。

その光はやがて木全体に広がり、かっと強い光を放ったかと思えば次第におさまり、木の根元には1匹の白髪の狐が横たわっていた。


「全く。200年も眠らせよってからに。すっかり霊力も弱ってしまったじゃないか。取り敢えずしんどいから憑依するぞ。」

葛葉は言うが早いか殆ど朔夜の同意も得ないままに葛葉は取り付いて眠ってしまった。


(母さん、ごめんね。お待たせ。)

『もう少しで消えてしまうとこじゃったわい。』

(母さん程の妖力の持ち主が消える??)

『あーそれはだな。…面倒じゃから説明は周防と虎目に任せる。2人もこの近くに眠っている筈じゃ。』

(2人もこの辺に眠ってるの?)

『遠くには行ってない筈じゃ。この辺りで蝦蟇や鬼の信仰のある場所を探してみい。』


「道一さん、この辺りで蝦蟇や鬼の信仰のある場所ってある?」


「蝦蟇と鬼か。どちらも有るには有るが民間信仰のレベルを超えない小さな物だぞ?」

(母さんどう思う?)

『取り敢えずはそこを当たってみるがよかろう。あまり時間は無いから急げよ。』




朔夜が連れて来られたのは安倍清明十二神将を祀った神社の、その脇にちょこんとそびえる小さな小さな神社だった。

「ここには鬼信仰が有る。十二神将にも鬼信仰は有るが、それよりうんと小さな物なんだろう?」

そこに祀られていた像は2頭身の一見すると剽軽ひょうきんにも見える短い一本角の鬼。立札には“子供たちの守り鬼”と短く書かれている。

その姿を見て朔夜は…。


「間違いない。虎目だ。」

神像に手を触れると霊力を流し込み波動を送り込む。

(虎目、虎目、聞こえるか?)

それに答えるかのように像にヒビが入り、中から眩いばかりの光が迸る。

像がすっかり割れた時には虎目石の如き鋭き瞳を放つ子鬼、虎目が立って居た。


「朔夜様お久し振り~。」

「長らく待たせてしまったな。

「うん、取り敢えずしんどいから憑依するよ~?」

「え?あ!こら!!」

言うが早いか虎目は勝手に憑依してしまった。




「次は蝦蟇だったな。」

「うん。」

「蝦蟇信仰ぐらい庶民的な物になるとこの辺りにも何か所か存在してどれだか分からない。順番に行こうか。」

1つ目、2つ目は外れだった。祀られている像には霊力の欠片も感じられない。

3つ目の像は一応霊力を感じたが、既に抜け殻だった。


そして4か所目。

「当たりだ。」

こうして周防も無事合流する事が出来た。


◆ ◆ ◆


「さて、聞かせて貰おうか。」

「では皆を代表してこの周防がお話しして進ぜましょう。」

「俺がいない間に何があった?ここは随分と妖の気配が薄いようだが…。」

「その通りで御座いまする。現代 - この時代にはもう殆どの妖が残っておりません。」

「何故だ?人に滅ぼされたか?」


「いえ、我々は小さな衝突こそ頻繁に起こりこそすれ基本的には持ちつ持たれつでやって参りました。しかしここ200年ほどの間に世相は随分変わりまして我々の居場所がなくなって参ったのです。」


「…と言うと?」

「人間の間に我々妖怪に対する信仰や存在を信じる心が失われてきたのです。」

「--!!」

「現代 - この時代を支配する信仰は“科学”と呼ばれ、物事の理を誰もに理解可能な法則を解明する事により成り立って居ります。そこには我々《あやかし》のようなあやふやで曖昧な物は立ち入る隙が御座いませぬ。」


「つまりこう言う事でございます。我々妖は誰かに信じられ、信仰され、時には恐れられる事により存在しえた物。それが信じられなくなった為立ち入る場所が無くなり数を減らして行ったので御座います。」


「…そうか。しかし皆は偶然にも無事で良かったよ。」

そこまで口をつぐんで聞いていた道一が口を挟む。

「いや、それは恐らく偶然ではない。」

「…??と言うと??」

「言っただろう。この世界は朔夜君が“蝕”を起こす事により作り出した世界だ。そこで君は『みんなともっと遊びたい』と願った。その願いに応える様にこの世界は作られている。君が願ったからこそここには葛の葉さん、周防君、虎目君の3人が待っていてくれたんだ。」



「そっか。皆心配かけたね。今度こそこの時代で一緒に生きていこう!!」

半年ぶりに書くと流石に大分忘れてますね。設定の矛盾、誤字脱字などに気付かれましたら感想で教えていただければ幸いです。

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