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狐憑きの時空旅  作者: 翡翠 蛍
序章
3/12

その3 ~《実体化》~

少し日が空きました。小さく更新するのと、ある程度まとめ書きして連続更新するのとどちらが良いでしょうか?今のところ大体1話2000~3000文字ぐらいを目安にかいてるのですが。

朔夜に取憑いた後、感覚の共有が出来るようになった葛の葉は彼に自活のスキルを叩き込み始めた。

天性の霊力コントロールを持つ朔夜であるが、万一身の危険が迫った時等に感情に任せて暴走させる事が有れば所有する霊力の桁が違う事もありどの様な惨事に至るか分からない。


結論から言えば朔夜は優秀すぎる生徒であった。

一教えれば十を理解し更に三の質問が返ってくる、と言ったレベルであった。

直感で理解出来ている技術に後付けで理論を乗せていくと言う教育方法だったが、「今日はこれをやってみようか」と話した時には既にやり方が分かっている、と言う始末。

葛の葉が驚いていると「お母さんが考えている事はお腹の中から何となく伝わってくる」のだそうだ。

実際に式を発動させた後、少しのアドバイスをしてやれば1時間ほど経った時には大抵のスキルはマスター出来てしまった。


中でも格別の才を発揮したのが式神の扱いであった。

強大な霊力を保持している為、その気になれば彼は大抵の(あやかし)を実力で使役する事が出来る。

通常は使役者の霊力を餌として与える代わりに必要な時に命令出来るように契約を交わすのだが、朔夜はより純粋に妖と直接コミュニケーションを取る事により信頼関係を築き、自然と協力を取り付けていた。

葛の葉が契約の方法について教えた時、特に仲の良かった4体の妖と式神契約を交わしたのだが、契約内容が「ずっと友達で居ようね!」の一言であり、また妖も満場一致で同意したのを見て葛の葉は軽い頭痛を覚えたものである。


◆ ◆ ◆


順調に成長を遂げる朔夜は、6歳の時にある試みに挑んだ。

「葛の葉を九尾で《実体化》させる」と言う事である。

これまで葛の葉は朔夜と自分の食糧を採取する時や子供の体では追い払えない外敵などが現れた時、八尾の姿で体から抜け出て対処してきた。

八尾のままでも十分に強力な存在であったので大抵の事はそれで対処出来たのだが、何分八尾は燃費が悪い。

不完全な姿で頻繁に顕現するのは葛の葉にとって余りにも負担が大きく、毎日の事となると体力面・精神面ともに疲弊を避けられない作業であった。


朔夜の成長により彼自身の霊力で短時間であれば尾一本分を賄えると判断出来たので、一時的に朔夜の魂から尾の霊力を分離・葛の葉に再統合して憑依を解く。

彼女はこれで全力を振るえるし、長時間の活動も可能である。


(準備は良いかい?)

「うん。お母さんと離れちゃうみたいでちょっと怖いけど・・・」

彼にしては珍しく、いや初めて弱気な事を言う。


(心配は要らないよ。最初は遠くに行かないし5分ぐらいで戻って来るつもりだから。)

「ほんと??)

(もう魂の根っこのレベルであたしと朔夜は融合しているから長時間離れてると魂の形が歪んでしまう。特に朔夜が怖いと思ってると落ち着いて霊力の流れを安定させる事が出来ないから余計危ないしね)


(まあでも朔夜は十分すぎるぐらいに優秀だよ。あたしの尾一本分の霊力と言えばそこいらの人間で言えばどんなに少なく見積もっても数十人分はある。6つやそこらでそれだけの霊力を持っているとは将来が逆に不安なぐらいだよ。今は取り敢えず、信太の森に葛の葉ありと言われた偉大なる九尾のお母様の言う事を信じておきなさい)

「うー、お母さんはいつもそればっかりだ。やり方は何となく分かるんだけど今までのと違ってお母さんと僕の体をぶっつけでいじるから不安なんだよね・・・。」


自分の体よりも先にさりげなく葛の葉の身を案じた辺り、フェミニストと言っていいのかマザコンと言っていいのか。


(さささささささっさとやるよっ!いつまでも考えててもしょうがない!)

“ツン”と“デレ”の入り交じった声で言い放ち、彼女は彼の中から抜け出る準備を始める。


朔夜もいよいよ覚悟を決めた。

目を閉じ、肩幅に足を開き、瞑想をする。

普段、式を組む時もここまで神経を尖らせない彼にしては珍しいほどの集中力だ。

まずは葛の葉が出た後にバランスを崩さないように静かに霊力を練り、葛の葉から離れたところに集めておく。

そして自分の魂と同化している尾の霊力を元の尾の形に戻すイメージで分離させていく。


「お母さん、長い間お借りしました。短い間で悪いけどお返しします」

(可愛げがないくらい完璧な式だよ。朔夜を救う時にあたしが書いた式をソックリ真似たみたいだ)


葛の葉に尾が同化する時、朔夜は今までに感じた事の無いほどの喪失感を感じた。

見えない手で内臓をつかまれ引き抜かれていく様な感触。

声こそ上げなかったがぬるりと体から何かが抜けていく感触の後、気付けば朔夜は地面に横たわっていた。



「・・・や、・・・く・・や、・・・・さくや!!」

目を開けると眩い光を纏った女性が傍らに座っていた。

上質な衣を纏い、抜けるような雪肌。


「・・・お母さん?」

「ふぅ、まさか朔夜が気を失うとはね。流石に負担が大きかったか。肝を冷やしたよ。どこか変なところは無いかい?」

「うん、自分がすごく弱くなった感じがするけど、多分これが普通なんだよね。・・・っていうかお母さんだよね?」

「あぁ、人間(こっち)の姿で会うのは初めてだったかな?八尾で人化するのは体力的に大分きついからね。お母さんがあんまりにも美人だから吃驚したろ??」

「・・・ん、見た目もだけど|中身(霊力)もキラキラで凄いよ。んー、両方揃ってるから余計に綺麗なのかな?」

「!!ッ

大人をからかうんじゃありません!!」


からかったつもりが真面目にカウンターを喰らい今度こそ本気でツンデレた。

展開が遅いですね。。少しは書き溜めているのですがまだまだ異世界に行くところまで辿り着きません。構想はあるので気長にお待ち頂ければと思います。

評価・感想、厳しくても良いので何か反応が有ると励みになります。

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