*侵入者
個室に入り腰を落ち着けた。
「あ~疲れた! なんなのよもうっ」
少女の怒った表情に苦笑いしながら荷物を横のシートに乗せる。そのバッグが気になったのか少女はジッと見つめた。
「……それ。何が入ってるの?」
「知らない方がいい」
言われてドキリとする。やっぱり銃とかかな。すごく重たかったもん……バッグを見つめながら乗車時の事を思い起こした。
駅員が彼の身分証を見た瞬間、驚きの表情を見せてすぐに平静を装った。
やっぱり傭兵って特別なんだ……そう思うと自然と笑みがこぼれた。
「! どこ行くの?」
立ち上がった彼を見上げる。
「食事の予約をね」
「1人にするつもり……?」
「いいや」
彼の薄く笑った顔を一瞥し部屋から出る背中を付いていく。受付をしている男に予約を申し込むと番号を伝えられ個室に戻る。
「! ……」
ドアを開けようとした彼の手が止まった。
「どうしたの?」
「シッ」
問いかけた少女に人差し指を唇に当てて制止する。
「何があっても大声は出さないように」
「え……」
言われた事より、吐息が耳にかかった事にベスは心臓が高鳴った。
「……」
タイミングを計るように息を吐き、勢いよくドアを開いて中にいた男に飛びかかる。
「!?」
驚いた男は為す術もなく腕を後ろに回されて狭い床に転がされた。
「で、狙いは?」
「……」
シートに三角座りの状態で手足を縛られた男に問いかける。当然、何も答えない。
回答を待つつもりもなく、男の体を物色し始める。そしてサイフを取り出した彼の行動にあっけにとられた。
「……」
お金取った……
彼女のその表情を見て察した彼が薄く笑う。
「迷惑料だ」
言って、残ったサイフをポイと窓から投げ捨てた。
「あっ……」
な、なんだろう……この人のやる事が解らないよ……頭が混乱した。
「さて、どうしたものか」
「……なにが?」
「彼を連れての鉄道の旅は楽しいかね」
「楽しくないに決まってるでしょ」
とても嫌な顔をした少女に口の端を吊り上げて立ち上がり、ドアを開けて顔を出す。
「!」
通路で立っていたスーツ姿の男たちに目配せするとその男たちが近づいてきた。それを確認してバッグからスタンガンを取り出す。
「! そんなの持ってるの?」
「護身用にね」
言いながら笑みを浮かべ電源を入れるとすぐに男の体に押しつける。
「がふっ!?」
ショックで気絶した男の拘束を解いて縛り直す。引きずって通路にいる男たちに引き渡した。
「今の人たちは……?」
「鉄道員だよ」
「ふうん」
もちろん嘘で彼女の親が雇っているガードたちである。
「……」
彼らがどうにかするだろう……ドアを閉めて少し眉をひそめた。
持っているものから見て狙いはベスだ。鍵をかけて出たハズなのに開けられていた。相手はピッキングも得意らしい。
そろそろ夕食の時間にさしかかる──番号が放送され2人はレストランのある車両へ移動した。テーブルに着いて料理が運ばれてくるのを待つ。
家族とはよく旅行しているベスだが、こんな風に1人で鉄道に乗ったのは初めてだ。
そして目の前には心惹かれる魅力的な男性。それは彼女だけのガード……開放感と優越感が少女の心を支配した。