*それは力
それからさらに月日が経ち、エリザベスは30歳となる──めきめきと頭角を現し、副社長にまで上り詰めた。
社長である彼女の父も、ここまで早く成長するとは思っていなかっただろう。娘の成長に喜ぶ反面、異性と付き合おうとしない彼女にその表情を曇らせる。
父は彼女の心の中に同じ男性が居座っている事を知っている……しかしそれをどうする事も出来ない。
時折、何かを見て涙を流している彼女に気づいてもかけてやれる言葉が無い。それが歯がゆかった。
「頼むよ」
ピエールは携帯に切実に発する。
「少しでいいんだ。ベス嬢に会ってやってくれ」
<だめだ>
「! どうして……っ」
相手の言葉にカッとなった。
「なんで会えないんだよ! お前は死なないからいいかもしれない。だがなっベス嬢は年を取っていくんだぞ……お前だけが年を取らないんだぞ!?」
<……>
しばらく沈黙していたがおもむろに発する。
<彼女はなんと言っている>
「え?」
<納得のいく顔をしているか>
「!?」
喉を詰まらせたピエールの反応で答えがわかる。
<ならばまだ会う事は出来ない>
「! どうしてだ!?」
<あの約束が彼女の原動力になっているのだとすれば……>
私は会うべきではない。
「!」
静かなベリルの声にハッとした。そうか、ベリルに会うために今の彼女があるのだとするならば──
<ピエール。彼女を護ってやれ>
「……」
ベリルの言う通りなら俺には何も言えない……通信の切れた電話を見つめた。
言う資格などありはしない。じゃあ、彼女の目標とはなんなんだ? ベリルに会えると思う彼女が納得のいく目標とは? 本人さえそれは解らないのかもしれない。
ただひたすらに、ひたすらに……
ベスの顔は活き活きとして誰の目から見ても輝いていた。今の彼女の地位は『ベリル』という存在のうえに成り立っている。
それが痛いほど解り宙を見つめて口をつぐんだ。