*教え
「お互いに想い合ってるのにどうして会わないんですか!?」
「いま会っても、彼はきっと褒めてくれないわ」
愁いを帯びた微笑みで応える。
「は……?」
男は当惑したが、すぐに切り返した。
「何を言ってるんです、彼は不死だがあなたの時間は限られているんですよ」
「!?」
ピクリと眉をひそめる。
「彼はいま近くにいるんです」
「! 近くに?」
「車も用意してあります。今すぐに行きましょう!」
促すようにエリザベスに近づいた──
「!?」
男は銃口を突きつけられ体を強ばらせる。
「ど、どういう事ですか?」
「確かに私たちは年を取る。それが普通……彼が不死なのが変。それでも会えないの」
解ったなら帰ってちょうだい……彼女はヘンリーに言い放つ。
「……」
男は周りにいる2人のガードを一瞥する。そして彼もまた彼女に銃口を向けた。
「!」
その顔は先ほどの快活な青年のものではなく、何かを企んでいる悪魔の表情だった。
「……っ」
「動くな! 動くとお嬢様を撃つ」
構えたガード2人に声を張り上げ、彼女の向けるハンドガンをさして警戒する事もなく口を開いた。
「銃を下げな。そんな危険なオモチャ、あんたには似合わないぜ」
「……」
差し出された手を一瞥しクスッと笑いかけた。
「あなた、これは虚勢だと思ってる?」
「!」
「生憎、私はあなたと違って本当に彼に色々と教えてもらったの」
「奴と一緒にいたのは一週間くらいだろう。その間に何を教わるっていうんだ」
「色々とよ。多分あなたよりも上手いわよ」
張り詰めた空気が部屋を満たす──
「!」
一瞬、気を逸らせた男に引鉄を引いた。
「ぐっ!?」
みごとに男の右腕に命中し、痛みで銃を落とす。
すかさず2人のガードが男を拘束した。
「くっ……この跳ねっ返りめ」
男の捨て台詞にニコリと笑いかけた。