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プライム・レディ  作者: 河野 る宇
◆第4章~プライム・レディ
12/23

*万事休す

「! あれ……?」

 少女は外の風景に眉をひそめた。

「パパの住んでる処って住宅街から遠いの?」

 家が徐々に減っていく。

「この方向だと廃工場だ」

 外を見つめてベリルがつぶやいた。

「え!?」

 次の瞬間、男の1人が2人に銃口を突きつける。

「ど、どういうこと……?」

「そんな事だろうとは思っていたが」

 悠然と足を組んで応えたベリルは怯える少女に小さく笑った。

「心配ない」

 少しも揺らぐことのない彼の声に少女は自然と笑みを返す。


 今は使われていない事が伺える工場の中へ車はゆっくりと進んでいく──そうして少し開けた場所でおもむろに止まった。

 砂利が積まれていて、かつての賑わいも夢のあと。

「出ろ」

 ぶっきらぼうに発せられて、少女は彼の腕にしがみつきながら恐る恐る車から出た。

「!」

 見渡すとスーツを着た男たちがぐるりと取り囲んでいて、その後ろには使われなくなった砂利が3つほどうずたかく積まれていた。

「お目にかかれて光栄だ」

 目の前の男が下品に口の端をつり上げてベリルに言い放つその手にはショットガン。

「傭兵のお前がガードとはね」

「たまには良い」

 ベスを護るように立つ彼に口の端を吊り上げる。

「今更、護った処で何になる」

「お前が決める事ではない」

「大人しくベス嬢を渡せ」

「!?」

 ギュッとベリルの腕にしがみついた少女に男は舌打ちした。

「ベス嬢、無駄ですよ。いくらその男でもこれだけの人数を相手にあなたを護る事など出来やしない。彼が無駄に血を流すより、素直になった方が利口だと思いますがね」

「!」

 血……? 私のためにベリルが沢山血を流すの……? 男の言葉に体を強ばらせた。

「耳を傾けてはならん」

 見つめる少女の目にゆっくり頭を横に振る。

「言っても解らないようですな」

 苛ついた男は、ベリルを睨み付け、ジャコ! と銃身の下にあるチューブを勢いよく引きショットガンを構えた。

「きゃあぁっ!?」

 その大きな音に少女は両耳を塞ぐ。

「……」

 数秒後、少しずつ目を開いた。

「!」

 視線の先にある地面に赤い水滴が落ち、水滴の正体を探ろうと見上げていくその先には──

「きゃあぁっベリル!?」

 左の頭部と左肩から血を流すベリルの姿が目に飛び込んできた。

「これでお解りか?」

「……っ」

 満足そうにニヤつく男にベリルは苦い表情を浮かべながらも鋭い視線を向ける。

「化け物め……」

 その瞳にゾクリとして奥歯を噛んだ。

 刹那──

「どっちがだ~?」

 どこからともなく声がして思わず周りを見回す。

「!?」

 気が付くと武装した男たちに囲まれていた。

「よーし、動くなよ。動いたら躊躇無く撃つぜ。お利口さんだ」

 そのうちの1人が少女の方に近づきながら発してベリルの前に立ち、ニヤリと笑みを浮かべる。

「いいホテルだな」

「VIPだ」

「え……?」

「これが今回の仕事か?」

「慣れない事はするものじゃない」

「?」

 訳がわからない少女は2人の顔を交互に見つめた。

「キョトンとしてるぜ、説明してやれよ」

 苦笑いを浮かべ男をあごで示す。

「カーティスだ」

「あ! あの電話の?」

 初めから彼らを怪しいと感じていたベリルはカーティスに連絡していた。

「しばらく休暇だと聞いていたのでね」

「でもよくここだって……」

「あれは住所じゃないよ、お嬢ちゃん。こいつの携帯のGPS番号さ」

 ベリルを親指で差して続ける。

「こいつが何も無しに会おうなんて言う訳がない。ちゃっかり番号言いやがったから緊迫した状況だってのが解ったんでね。仲間を集めたって訳さ」

「……そうなんだ」

 なんとも無駄のないやりとりに少女はあっけにとられた。

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