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プライム・レディ  作者: 河野 る宇
◆第4章~プライム・レディ
11/23

*到着

 ハンドガンの手入れを始めた彼を少女はジッと見つめる。

「興味があるのか」

「そういう訳じゃないけど……」

 戸惑いの表情にフッと微笑む。

「知ることは己の役に立つ」

「やっぱりそうかな?」

「彼らの助けになる事もあるだろう」

 自然な言葉に身を乗り出し、彼の説明に聞き入る。

「こっちとこっち、形が違うのね」

「こちらはオートマチック、こちらはリボルバーだ。構造がまるで異なる」

「へえ……」

 命を賭けて護ってくれているガードたちの助けに少しでもなるのなら……心地よいベリルの声と言葉は少女の心に深く染み入る。


 そうして、いつものように夕食を終えて個室に戻る──いよいよ明日はパパのいるサンフランシスコに着くと思うと、なかなか寝付けなかった。

「……」

 ふとベリルに視線を向ける。ぴくりとも動かず静かな寝息を立てて寝ている彼の姿に、麻酔を撃たれた時のことを思い出す。

 死なないから麻酔を使われるのかしら……麻酔について詳しいようだった。同時に、寝ている彼にキスをしたことも思い出す。

 あの時の胸の高鳴り……余計に眠れなくなってしまった。


「おはよう」

 いつものように朝の挨拶を交わす。

「おはよぅ~」

 少女はあまり寝ていないせいかまだ目が覚めきらない。

 寝ぼけ眼の少女を一瞥してクスッと笑みをこぼし、彼女の着替えのために外に出る。それを確認したガードの2人がばつの悪そうな表情を浮かべて近づいてきた。


「! 逃げられた?」

「ああ……すまない。ちょっと油断したスキに」

 その報告に彼は眉をひそめた。

「周りに怪しまれないために足の拘束を解いていたのが悪かった」

 ガードの1人が頭を抱える。

「仕方がない。あと少し頼む」

「もちろんだ」

 力強く頷く2人に目で相づちを打ち部屋に戻る。


 数時間後アムトラックが駅に到着した──少女は勢いよく降り立つと深呼吸して空を見上げる。

「ベリル! こっちよ」

 嬉しそうに駅の外へ駆け出す。

「エリザベス嬢ですね」

「え?」

 2人の男が彼女を呼び止めた。

「お父様から、迎えに行くようにと頼まれました」

「え~!? こっちでも1人で大丈夫って言ったのに……パパったら、心配しすぎよ」

 少女は不満気味に発する。

「……」

 怪訝な表情を浮かべるベリルを男は後部座席に促す。2人を後部座席に座らせて1人が少女の隣に腰を落とし、助手席にも1人乗り込み車は静かに発車した。


「ベス、どれくらいこちらにいるのだったかな」

 おもむろに問いかける。

「え? 一週間くらいよ。それがどうしたの?」

「なら友人とでも会っておくかな」

「カリフォルニアに友達がいるの?」

「うむ。ちょっと連絡してみよう」

 言って携帯を取り出し電話をかけた。

「カーティス、今どこだ……近くだな。明日、会わないかね。馴染みのホテルに泊るのだが、住所は──」

 ひと通り喋って通話を切る。

「その人も傭兵?」

「うむ。丁度、休暇中だったようだ」

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