*到着
ハンドガンの手入れを始めた彼を少女はジッと見つめる。
「興味があるのか」
「そういう訳じゃないけど……」
戸惑いの表情にフッと微笑む。
「知ることは己の役に立つ」
「やっぱりそうかな?」
「彼らの助けになる事もあるだろう」
自然な言葉に身を乗り出し、彼の説明に聞き入る。
「こっちとこっち、形が違うのね」
「こちらはオートマチック、こちらはリボルバーだ。構造がまるで異なる」
「へえ……」
命を賭けて護ってくれているガードたちの助けに少しでもなるのなら……心地よいベリルの声と言葉は少女の心に深く染み入る。
そうして、いつものように夕食を終えて個室に戻る──いよいよ明日はパパのいるサンフランシスコに着くと思うと、なかなか寝付けなかった。
「……」
ふとベリルに視線を向ける。ぴくりとも動かず静かな寝息を立てて寝ている彼の姿に、麻酔を撃たれた時のことを思い出す。
死なないから麻酔を使われるのかしら……麻酔について詳しいようだった。同時に、寝ている彼にキスをしたことも思い出す。
あの時の胸の高鳴り……余計に眠れなくなってしまった。
「おはよう」
いつものように朝の挨拶を交わす。
「おはよぅ~」
少女はあまり寝ていないせいかまだ目が覚めきらない。
寝ぼけ眼の少女を一瞥してクスッと笑みをこぼし、彼女の着替えのために外に出る。それを確認したガードの2人がばつの悪そうな表情を浮かべて近づいてきた。
「! 逃げられた?」
「ああ……すまない。ちょっと油断したスキに」
その報告に彼は眉をひそめた。
「周りに怪しまれないために足の拘束を解いていたのが悪かった」
ガードの1人が頭を抱える。
「仕方がない。あと少し頼む」
「もちろんだ」
力強く頷く2人に目で相づちを打ち部屋に戻る。
数時間後アムトラックが駅に到着した──少女は勢いよく降り立つと深呼吸して空を見上げる。
「ベリル! こっちよ」
嬉しそうに駅の外へ駆け出す。
「エリザベス嬢ですね」
「え?」
2人の男が彼女を呼び止めた。
「お父様から、迎えに行くようにと頼まれました」
「え~!? こっちでも1人で大丈夫って言ったのに……パパったら、心配しすぎよ」
少女は不満気味に発する。
「……」
怪訝な表情を浮かべるベリルを男は後部座席に促す。2人を後部座席に座らせて1人が少女の隣に腰を落とし、助手席にも1人乗り込み車は静かに発車した。
「ベス、どれくらいこちらにいるのだったかな」
おもむろに問いかける。
「え? 一週間くらいよ。それがどうしたの?」
「なら友人とでも会っておくかな」
「カリフォルニアに友達がいるの?」
「うむ。ちょっと連絡してみよう」
言って携帯を取り出し電話をかけた。
「カーティス、今どこだ……近くだな。明日、会わないかね。馴染みのホテルに泊るのだが、住所は──」
ひと通り喋って通話を切る。
「その人も傭兵?」
「うむ。丁度、休暇中だったようだ」