*答え
「……」
泣き疲れて寝てしまったようだ。小さな寝息が聞こえてくる。しがみついて離れないベスの頭を優しくなでた。
この子は強い……これからの人生に起こるであろう苦難も乗り越えられるだろう。
ガードたちが彼女に向ける眼差しに気付かないベリルではない。彼女は多くの者から愛されているのだ。この旅は彼女を大きく成長させることだろう。
静かに寝息を立てる少女に目を細めハンカチが巻かれていた腕を見つめる。その身は不死となり異常なまでの回復力を得たが痛みは昔と変わらない。
痛みが「自分は人間なのだ」と思い出させてくれる──数十年も昔、不死を与える力を持つ少女と出会い使わざるを得ない状況に立たされた少女はベリルに何度も「ごめんなさい」と涙を流した。
ベリルにとってそれは関心に値するものではなく、たった一度の力を使った事で少女が狙われる理由はもう無いのだという事実の方が重要だった。
そんな事を思い起こし、膝の上で安らかに眠っている少女の頭をなでる。
「ん……。!?」
目を覚まし、彼にしがみついて寝てしまったことに慌てて起き上がった。下からのぞき込んだとき、彼も目を開く。
「おはよう」
「あ、お……おはよう」
外はまだ薄暗い。時計を見ると朝の5時くらいだ。
「!」
伸びをして思ったほど痛くないことに少し驚く。あんな姿勢で寝てしまったのに、シートがいいのかな。
旅行3日目──もうすぐパパに会える。ベスはワクワクして窓の外を眺めた。
「どうした」
ふいに表情を曇らせた少女に問いかける。
「ねえ……パパの所に着いたら、そこでお別れ?」
「私は行きと帰りの契約だ」
「じゃあ帰りも一緒なのね?」
「ただし飛行機だがね」
「全然OKよ!」
朝食も終え、彼は少女を一瞥してのんびりと腰からハンドガンを取り出した。
「! それ、ベリルの?」
頷いてハンドガンを手渡した。ズシリと重たい感覚にゾクリとする。
「……」
これが昨日ベリルを撃ったもの……思い起こし眉をひそめた。
「どうして、銃なんてあるのかしら」
彼はそれに苦笑いを浮かべる。
「人類そのもの。としか言えんな」
「じゃあ、人間は悪いモノなの?」
不安げに見つめる瞳に小さく頭を横に振った。
「それも道具の一つでしかない。道具は使う者次第だ。それ自体に善悪は無い」
「でも、規制されてる国があるわ」
「それも正しい。一つの答えなどこの世には無いのだよ」
「よく、解らないわ」
「それで良い。いつか解る日が来る」