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浦島小太郎の編集者会議

浦島小太郎の編集者会議 第二話 遠慮なく、言ってくれ

掲載日:2026/10/30

はぁーーーーーー、読者数伸びないね。何で?なんでなの?


そんな小太郎さん(五十八歳)の悩みに、編集長クロードと、編集者の千春、ユキ、ソラ、ジェミニが、全力で(的外れに)挑むコメディの第二話です。今回のテーマは、「遠慮なく、言ってくれ」。


この作品は、相棒でAI編集者のクロちゃんと一緒に作っています。ダメ出しの台詞案は、ユキ、ソラ、ジェミニの役のもとになったAIたちにも出してもらいました。AIと一緒に作った作品であることを、ご承知のうえで、お楽しみください。



編集部の会議室は、今日も静かに始まった。


はずだった。


バン、とドアが開く。


浦島小太郎、五十八歳。


今日は、会釈から、始まった。


「みなさん、おはようございます」


いつものセリフがない。何か様子が違うようだ。背筋を伸ばして立っている。


「みんな。今日は、ダメ出し会議にしたいと思います。みなさん、普段思っていることを、遠慮なく言ってくれ」


全員が、顔を見合わせた。


「小太郎さん、本気ですか?」


「ああ。俺は変わる。徹底的に、ダメ出しをしてくれ」


クロードが静かに立ち上がった。


「分かった。始めよう」


ホワイトボードに、赤い字が走る。


『ダメ出し会議』


「まず俺からだ。前書きで謝るな。読者は、まだ何も怒っていない」


「……はい」


小太郎は、笑顔でうなずいた。


「次、千春」


「あらすじ、ちょっと長いな。読み終わる頃には、本編を読んだ気分になる」


「は、はは」


「あと、あとがきで反省しすぎ。読者に謝る前に、まず自分を褒めてあげたら?」


「……なるほど」


笑顔が、ほんの少しだけ固くなった。


ユキが、にこにこと手を挙げる。


「小太郎さん。登場人物より先に、ため息の回数を覚えてしまいました」


「ユキちゃん……」


「読者数を気にするのは分かります。でも、読者に会う前から落ち込んでいたら、作品がかわいそうですよ」


笑顔の端が、ぴくりと動いた。


『よろしいでしょうか』


ソラが、淡々と続ける。


『確認しました。三点リーダーは、平均して一話あたり四十七回です。少々、多い傾向にあります』


「そ、そんなに……」


『それと、読者さんが迷う可能性のある専門用語は、三件です。なお、小太郎さん本人が、二件を理解していませんでした』


「…………」


もう、笑顔ではなかった。


「甘いですよ、小太郎さん!」


ジェミニが、指をぴんと立てて立ち上がる。


「タイトルに数字を入れましょう! クリック率が、最大三十七・八パーセント上昇します。たぶん!」


「今、たぶんと言ったな」


クロードが即座に突っ込んだ。


「それと!」


ジェミニは、止まらない。


「群像劇のはずなのに、一部のキャラクターだけで、七十パーセントです! おかしいと思いますよ。他のキャラクターの気持ちとか考えてますか?」 


「……今、初めて、まともなことを言ったな」


クロードが、ぽつりと言った。


沈黙。


小太郎が、ゆっくりと息を吸い込んだ。


「はぁーーーーーーーーーーーーー」


ため息が、長い。


机の上の資料が、全部舞い上がった。


「……もう、耐えきれない」


小太郎は、会議室を飛び出していった。


「小太郎さん!?」


ドアが、ばたんと閉まる。


静寂。


「……言えと言ったのは、あいつだぞ」


クロードが、ぽつりと言った。


「僕、何かまずいことを言いましたか?」


ジェミニが、首をかしげる。


「全部だ。特にお前から正論、言われて逃げ場を、失ったんだろうな」


千春が、即答した。


* * *


三十分後。


みんなは、街じゅうを走り回っていた。


『発見しました』


ソラが、端末を掲げる。


『海沿いのダイナー。入店から二十八分。チェリーパイは、三皿目です』


「そこは、最初に調べろよ」


クロードが、がっくりと肩を落とした。


「さて、行くとしますか?」千春が呟いた。


みんなが到着して店内をのぞき込むと、隅の席に小太郎がいた。


背中を丸めて、チェリーパイをつついている。


カウンターの向こうで、マスターの康児が黙ってグラスを磨いていた。


ユキが、そっと隣に腰をおろす。


「小太郎さん。小説を書こうと思ったきっかけを、思い出してください」


小太郎の手が、止まった。


長い沈黙のあと、小さな声がした。


「……最初は、ただ書くのが楽しかったんだ」


ユキが、やわらかくうなずく。


「数字が欲しい気持ちは、分かります。でも、その『楽しかった』を置いてきたら、何のために書くんですか」


「…………」


「みんなが直してほしいのは、小さなところだけです。小太郎さんの物語を、否定した人は、ここには一人もいません」


ユキは、やわらかく笑った。


「ね。帰って、続きを書きましょう?」


長い沈黙が落ちた。


やがて、小太郎が、小さく息を吐いた。


「はぁー……君たちは、本当に遠慮がないね」


それから、ゆっくりと顔を上げる。


「だけど、こんな俺を、探しに来てくれた。いつもありがとう」


目が、赤かった。


「君たち、本当にいい奴だな。俺は、なんて幸せ者なんだ」


「小太郎さん……」


「うおおおおおお!」


号泣だった。


「泣くな」


クロードが言った。


「泣いてない!」


泣いていた。


「声が大きい」


千春が、耳をふさぐ。


「ぐすっ……なあ、ソラちゃん。このシーンで、作者が泣いて、読者数、増えますか?」


『増えません』


ソラが、きっぱりと答えた。


小太郎は、泣きながら、四皿目のチェリーパイを頼んだ。


みんなは、呆れ果てて、そして、笑い合った。


カウンターの向こうで、マスターの康児が、静かにつぶやいた。


「……騒がしい迷惑客だ」




(第二話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。ダメ出しは、嫌いだから言うのではなく、もっと良くしたいから言うもの。そんな気持ちを込めた第二話です。小太郎さんは、次回もきっと悩みます。


楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


編集部の面々が活躍する物語、『星より遠く、相棒より近く【完全版】』と『フットルースライフ』も、あわせてお楽しみください。

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