8.秘密の始まった日
────最初は⋯⋯自分と同世代の人間に世話をされるなんて、どんな気分なんだろう。自分だったら抵抗感がある。「不憫で気の毒な可哀想な人」という色眼鏡。それが鳴実の根底には存在していた。
しかし、その対象者・修一郎は、出会った当初から物腰は柔らかく常に笑顔で、嫌な言葉や罵声を浴びせてきたりも決してしない。そればかりか訪問する度に、とても喜んでくれる。
バイト自体も時間が遅いだけで、前の職場に比べたら仕事内容は随分と楽だった。連続の勤務も苦にならない。修一郎の緩さ加減もあって、妙な緊張感や失敗を恐れたりなどもなく、変に気負わず自然体でいられた。
一緒に食事をする機会が増えて、介助に関すること以外の会話も多くなり、頼まれてもいないのに自ら本を持っていくようになる。
あの日 清拭中に顔が少し近づいて
たまたま ぶつかって触れたのかと最初は思ってた
けど そうじゃなかった
外へ出られないストレスからの暇つぶし イタズラ
自由にしている同世代への軽い嫌がらせ なんて勘繰りもした
拒絶は特にしなかった
それが何度か続いて
段々と濃密に甘くなっていって
⋯⋯そうなること に あまり時間もかからなかった
哀れみも多少あったかもしれない
こんな軟禁状態で 寂しくて人肌恋しくもなるんだろう
もちろん驚いたけど
華奢で綺麗な人だし 遊びでも 性別も
嫌だという感情は 特に湧かなくて悪くもない
心の拠り所 捌け口として 俺は役に立ててる
別に それでもいいんじゃないか って⋯⋯




